第14話・ヴァローナ祭

 そして翌日。ヴァローナ祭が始まった。幸い天気にも恵まれ、公国のあちらこちらから人々が集まってきた。

 仮設舞台では先ほど、花娘のジュリエットと、花騎士のロミオが並び立ち開会式が行われた後で、今年初の試みである競技大会のご案内をしてもらっていた。


「宮殿前広場にて本日、競技大会が行われます。競技大会では、キャピュレット家チームと、モンタギュー家チーム。そして青い鳥騎士団チームの3チームに分かれて競い合います」

「競技大会の内容は綱引きや、チーム対抗リレー、徒競走、玉入れを行います」

「どのチームが優勝を飾るか。興味がある方はどうぞ宮殿前広場までお集まり下さい」


 ご案内を聞いた人々は、さっそく反応を示したようだ。


「おい、競技大会だってよ」

「モンタギュー家と、キャピュレット家か。因縁の対決だな」

「それに我が国の誇る青い鳥騎士団も加わるのか? どのチームが勝つか楽しみだな」

「これは見逃す手はないだろう。見に行くか?」

「モンタギュー家のロミオさまも参加されるのかしら?」

「気になるわね。言ってみる?」

「もし、参加されるなら応援しなくちゃ」

「そうね、言ってみましょう」


 人々は聞き慣れない「競技大会」と、言う言葉に首を傾げながらも、何が始まるのかと思いながら宮殿前広場へとぞろぞろと足を進め出した。人々の誘導には、街の警備団が立って案内していた。

 ジュリエットは淡々と役割をこなしていた。遠目に視線を感じることはあったが、こちらに近づいてくることはなかった。彼女も色々と考えるところがあったのだろう。少しは反省して欲しかった。


 もしかしたら昨日のことは、彼女にとってほんの悪ふざけのつもりだったのかも知れない。でも、もう子供だからと見逃されてきた日々は終わってしまったのだ。


 成人したのだから、自分の言動には責任が伴うことを学んで欲しいと思う。天使のように愛らしかった彼女は、周囲に甘やかされて、過保護に育てられたせいか、傲慢になってしまったようだ。

あの出会ったばかりの頃の彼女は、他人の悪意に影響などされず、わたしのことを純粋に慕ってくれていた。あの頃が懐かしい。もう返らない日々だけど。


 わたしは人々の列に紛れ込み、反応を窺いながら、宮殿前広場で待っていたベルサザと合流した。ベルサザは腕組みしたまま聞いてきた。


「ロザリー、今までどこに行っていたんだ?」

「街の大広場を見てきたの。初めての競技大会に皆がどう思うのか気になって。でも、反響は良かったわ。今のところ、競技大会と聞いて文句を言う人は出てないみたい」

「皆の反応が知りたいくらいなら、僕が見てきたのに。勝手にいなくなるから心配した」

「ごめんなさい。わたしが言い出したことだから、直接、皆がどのような反応を示すか見て見たかったの」


 ベルサザはため息を漏らす。彼としてはわたしが一人で大勢の人の中に様子を見に行くのを、良く思わなかったようだ。彼はわたしに関して結構、過保護な方だ。わたしが一人で出歩くことを良しとしない部分があって、必ずわたしが出かける時には、彼が護衛兼、荷物持ちとして着いてきていた。


 だからわたしが急に会場からいなくなって、慌てたのだろう。一言、言っていけば良かったと思いながらも、そうなったなら必ず、「僕も着いていくよ」と、言いかねなかったような気もする。

 とにかく、わたしがこの場に戻って来たことで、ベルサザは安堵した様子を見せた。

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