第16話・脳筋ってその他のことには頭使えないの?


 開会式が始まる前に、予め各チームには準備体操やストレッチなどをしてもらっている。怪我などしないように体を解してもらっていたのだ。

 大公さまの開式の挨拶の後、まずは綱引きから始まった。初めはモンタギュー家チームと、キャピュレット家チームでしてもらい、そこで勝ったチームと青い鳥騎士団が行うことになる。

 そして負けたチーム同士で最終的に行って、勝敗を決めることになっていた。


 モンタギュー家と、キャピュレット家、両家の者達が大縄の横に並ぶ。その背後ではキャーキャー、モンタギュー家のロミオ狙いの黄色い声や、モンタギュー家チームの応援をするジュリエットの声に並んで、野太い声援が上がっていた。


「用意!」


 大公家の執事さんが両チームに声をかけると、両チームとも縄を持ち上げ睨み合った。執事さんが胸元の笛を空高くピーッと鳴らすと、「ヨイショッ、ヨイショッ」「ドコイショー、ドッコイショー」のかけ声で縄が引かれ始めた。


「ねぇ、ベル」

「どうした? ロザリー」

「綱引きのかけ声ってオーエスじゃないの?」

「いやあ、特に決まっていないと思うよ。現にモンタギュー家はヨイショッと言っているし、モンタギュー家はドッコイショーと言っているみたいだしな」


 わたしは父やベルが青い鳥騎士団に所属しているのもあり、彼らの練習風景も見てきた。彼らが「オーエス」と言って綱引きのかけ声をかけていたので、てっきり綱引きの掛け声は「オーエス」なのだと、思い込んでいた。


「すぐに決着つきそうだな。僕もちょっと行ってくる」

「行ってらっしゃい。ベル」

「応援よろしく!」


 両家の綱引きの結果、キャピュレット家チームが勝利した。「ヤッターッ」と、キャピュレット家チームは喜び、モンタギュー家チームはがっかりしていた。

 次は勝者のキャピュレット家チームと、青い鳥騎士団チームとの対戦となる。その為、騎士団メンバーとして参加するベルサザは、運営席を飛び出して行った。


 ベルを見送ると、対戦相手のキャピュレット家のティボルトが目に入った。彼の側にジュリエットが走り寄り何か話しかけている。二人の仲の良さは分かっているし、先ほど決別したせいか、二人が寄り添う姿を見ても何も感じなかった。


 もしも、彼と仲が進展していたなら今頃、許婚として彼の活躍を応援していたのかも知れないけど、今のわたしにはそんな気すら起きなかった。

 二人から目を離して青い騎士団に目をやると、父とベルサザが仲良く二人で仲間に加わっている。

 綱引きが始まり、わたしは父やベルを応援し続けた。そしてその結果、キャピュレット家チームが勝利して1位となり、2位はモンタギュー家チーム、3位は青い鳥騎士団チームとなった。


 その次の種目は玉入れ。競技前に玉を人にあててはならないと説明があったにも関わらず、キャピュレット家チームの一部の者が、モンタギュー家チームの者に目がけて投げつけ、玉入れを妨害した為、最下位になった。その為、1位は青い騎士団チーム、2位はモンタギュー家チームで、3位はキャピュレット家チームとなった。

 それには見ていたわたしは唸りたくなった。


「あいつら馬鹿なの? 何の為の説明なの? 脳筋ってその他のことには頭使えないの?」

「機嫌直してよ。ロザリー。次は騎馬戦だよ。楽しみにしていただろう?」

「うん」

「行ってくるね」


 ベルサザは、幼い子に言い聞かせるように、わたしの頭をポンポンと撫でて行ってしまった。それが子供扱いされているようで、ちょっと恥ずかしく思えた。

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