第2話 あ~しゅ~ら~

通常は1歳になるまでに外科手術を施し、

その後は成長に合わせて修正手術を行う。

最終的には鼻の高さや形を整える為に

美容整形を望む人も多い。


だが明は放って置かれた。


母親は精神病院に入っている。

母方の祖父母、兄弟の家を転々と廻された。

部屋の中に閉じ込められ、食事も家族とは別。


当然、外に出ることは許されない。

だってみっともないじゃないか。


さて、日本は法治国家である。

戦後は社会福祉も徐々にではあるが整えられて行った。


4歳ともなると、そろそろ幼稚園へ通う年齢になる。

その先には小学校が在る。

義務教育だから通わせなければならない。


さぁ~困った!


今まで放置していた事が世間にばれたら、

一族全員が薄情者のそしりを受ける。


慌てて役所に駆け込み相談する。

どうしたら宜しいでしょうか?

と。


家庭訪問に来た福祉課の職員は驚いた。


取って付けた様なサイズの合わない服を着せられて、

さっき切りました!

と言わんばかりの散切ざんぎり頭の子供が

ニコニコとこっちを見ている。


こう言うケースの場合は大抵が虐待されている。

子供は怯えた目で大人を見るものだ。

なのにこの子はなんだ?


キラキラと目を輝かせて私の言葉を

待っているかの様だ。


「ボク、お名前は?」

あ~しゅ~ら~シュ~シュ~シュ~


しゃべる度に息がシュ~シュ~と漏れる。

周りの大人たちは、しかめっ面を隠そうともしない。


「直ぐに治療を受けさせて下さい。

言語学習もしなければ学校で辛い思いをしますよ。」


「どんくらい金かかるべかな?」


「お金の問題じゃありませんよ!

貴方達は保護者ですよ!

ちゃんとしなければ警察沙汰になりますよ!」


”警察”と言う単語に恐れをなした彼らは

役所の指示に従う事を了承した。

大学病院での治療が始まった。


これで一安心!


とは行かなかった。

彼らは明の保護者を続ける気は、さらさら無かったのだ。


「どうするべ?毎週毎週、大学まで通うなんて、

やってらんねぇべ!」

修二しゅうじんとこにやるか?」

「あいつまだチョンガーだべ?」


「かまうもんかい!車欲しがってたろう?

買ってやるから面倒見れって言えばいいじゃん。」


「でもよぉ、あいつは・・・」

「なぁに、かえって喜ぶんじゃねぇか?」

「それもそうだな~はっはっはっは!」


一族の鼻つまみ者。

田舎に居られずに都会へ逃げた男。

近所の子供にいたずらをして

袋叩きにされた男。


高橋 修二。


当時の若者が憧れた国産スポーツカー。

その新車が買える金額と、

毎月の養育費を振り込む条件で、

明を引き取る事に同意した。


貧相な顔つきの性格破綻者。

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