第22話〜勇者たちも大変な件3(前半)〜

———— この世界では、10歳の時に受ける適正試験『BON』により、かに分かれる。勇者に選ばれた者たちは、そこから勇者稼業をスタートさせていくのがこの世界の通例であった。


 勇者を始めて約1年半以上が経つ勇者3人組。年齢は、まだ11歳か12歳。年齢通りの見た目の3人組は、ランク“10”になったばかり。


 今日から第10階層へと挑戦しようと塔のエントランスでどこに挑戦するかを選んでいた。


 「フォイマル。今日は、第10階層に行くんだろ?どこの迷宮にするんだい?」


 「ふんっ。まあ、俺らなら何処でも大丈夫だろーが、最初は小手調べに難しいと噂の迷宮にでも行くかな!」


 「俺たちは、フォイマルの決めた場所なら何処でもいいよ。」


 フォイマルと呼ばれる男子は、金髪の髪をオールバックに決めて、両脇の体格の大きい男子を引き連れていた。


 「おい。ビンセント、コイル。この“森の迷宮”って所にするぞ。」


 フォイマルは、SNSを見ながら貼り紙を指差す。


 「ここは、まだクリアした勇者が2、3パーティーしかいないそうだ。俺らは、勇者の中でも特に選ばれた人間さ。まあ、余裕だろうな!」


 エントランスにいる他の勇者パーティーを見下すように、フォイマルは自信満々で言葉を放つ。


 「それにしても、の貼り紙だな!“ドリームラビリンス”?知らねえ名前だ。とりあえず、ここを軽くクリアして、格の違いを見せつけてやろうぜ。行くぞ!ビンセント、コイル!」


 肩を揺らしながら、上の階層に行くエレベーターへと向かうフォイマルたち。


 すると、エレベーターからフォイマルたちと同じぐらいの年齢の勇者パーティーが降りてきた。


 「はあ。やっぱり第5階層は難しいな。」


 「元気出しなさいよ、ロン!第1階層の時に比べたら、だいぶマシになったわ。」


 「そうだぜ!また次頑張ろうぜ!」


 肩を落とすロンをエマとハリオが励ましながら、歩いてきた。


 「これは、これは、一年間もランク“1”から抜け出せなかった落ちこぼれ勇者のハリオさん達じゃないですか!」


 「フォ、フォイマル!お前たちいちいち揶揄うなよ!」


 「ハリオ、無視よ、無視!」


 フォイマルたちとハリオたちは、勇者になる前は、同じ学校に通っていた同級生である。かたや、優秀なスピードでランク“10”。一方は、一年ほど第1階層から上がれず、ようやくランク“5”に達した。


 「ふんっ!まあ、せいぜい勇者として恥ずかしくないように頑張れや!」


 フォイマルは、ハリオたちにそう吐き捨てる。後ろでは、ビンセントとコイルが大きな腹を抱えて笑っていた。


 「くっ、あいつら!!」


 「まあまあ、フォイマルたちは、もうランク“10”なのか...僕らも頑張らないと....はあ...」


 ロンは、特にフォイマルの挑発を気にした様子なく、今日の迷宮失敗について落ち込んでいる様子だった。


 「でも、あいつら今日第10階層行く気かしら?“ドリームラビリンス”の迷宮にでも行ってくれたら助かるわ!確かあったわよね?第10階層に?」


 「ん?ああ。“ドリラビ”さんの迷宮確か、第10階層にもあったはずだぜ!あの汚い字の貼り紙が、第10階層のスペースに貼ってあったし。」



 フォイマルたちは、第10階層の迷宮会社“ドリームラビリンス”運営の『森の迷宮』の前へと訪れていた。


 ここは、オープンから約半年以上が経つも、クリアした勇者が、2、3パーティーのみである。

週刊『ダンジョン』では、数回に渡り、第10階層の迷宮で1、2を争う難易度と掲載されていた。


 「ここだな!じゃあ、ちょろっとクリアして俺らの名を刻もうぜ!」


 フォイマルは、意気揚々と迷宮へと足を踏み入れた。


 迷宮内に入ると薄暗い洋城の廊下が奥へと続いている。


 「はは!本当に第10階層の迷宮なのか!弱い弱い!」


 最初の廊下には、スライムや蝙蝠の魔物など低級の魔物が出てきたが、フォイマルたち3人は、軽々とこれらの魔物を葬っていく。


 「弱い魔物しかいないね。本当に僕らなら余裕でクリアできそうだよ。」


 3人は、出てくる魔物を馬鹿にしたように笑い合いながら、進んでいく。


迷宮を進んで15分ほどすると、大きな扉が現れた。


 「まさかここがボスの部屋なわけないよなぁ!魔物も低級!罠も大した事ないし、つまんねえなー。」


 フォイマルは、呆れ笑いを浮かべ、他の2人に共感を求めている。扉を開けると、そこは、迷宮内とは思えない木々や草が生い茂ったフィールドであった。


 「なんだボス部屋じゃねーのか!」


 するとブンブンと羽音が聞こえてくる。その音の発生元を確認し、すぐに草むらへとしゃがむフォイマル。


 「おい!お前らしゃがめ!!」


 「う、うん。」


 「おい。あれは、“オニヤンマンマ”だ。あそこの木にも“デーモンビートル”がいる。お前ら静かに進んでいくぞ!」


 先程までの威勢は無く、声を潜めてコイルとビンセントへ声を掛ける。


 オニヤンマンマは、とても獰猛な魔物である。一体一体は、そこまでの強さではないが、群れる習性があり、フォイマルはその事を知っていた。


 (え?あんなにいるのかよ!!)


 フォイマルは、周りを見渡すと木の枝にオニヤンマンマが、たくさん止まっている。他の昆虫型の魔物の姿も確認できる。


 フォイマルたち3人の第10階層の迷宮『森の迷宮』への挑戦は、一筋縄ではいかないようだ。



——— 後半に続く......







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迷宮職人と魔物好きの迷宮構想 KOYASHIN @KOYASHIN

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