第16話〜大人の虫取りは戦争だ...〜

————タルタロスから東に車で30分ほどの距離にあるムシムシ村。その村の近くにある森林に、昆虫採集.....いや、迷宮の魔物を探しに来たオブライエンとマハトマー。案内役のアミアミと共に魔物を捕まえに来たのはいいが...


 オブライエンたちの目の前に現れたのは、体長10m以上はある“キングアカトンボン”。


 「エ!?オブくん!あれイラナイ?」


 アミアミは、オブライエンが“キングアカトンボン”をいらないというものだから驚いている。


 「いや、あんな大きさだと迷宮に入らないですよ!!」


 「それを早くイッテヨ!!もっと小さいヤツネ!」


 アミアミは、木の枝に止まっている“キングアカトンボン”を放置して、違う方向へと進んでいく。


 オブライエンとマハトマーは、アミアミに無言でついて行く。どんどん進んでいく

 

 すると一本の大樹に辿り着いた。高さは、20m以上はある。下から木のてっぺんは、見ることができない。


 「2人とも、ちょっと待っててネ!」


 アミアミは、背負った大きなリュックの中から大きな木槌を取り出すと、大樹の下まで行き、オブライエンたちを手招きしている。


 「私がこの木を叩くと、魔物がたくさん降ってくるカラ!“虫取りアーミー”でバンバン取ってクダサイ!」


 「は、はい!わかりました...」


 (もしかして、木を叩いて魔物を落とす気なのかな.....)


 すると、アミアミは息を大きく吸う。オブライエンは気付かなかったが、アミアミが腕を捲るとそれは逞しい腕が現れた。


 力いっぱいに木を木槌で叩くアミアミ。綺麗に幹の中央に木槌が当たると、大樹がざわざわと衝撃で震える。

 そのあとにガサガサガサガサッと大量の昆虫型の魔物がウジャウジャと降ってきた。


 確かに1匹1匹の大きさは、先ほどの“キングアカトンボン”に比べれば、蟻のようだが、それでもオブライエンと同じぐらいの大きさであろう。


 昆虫型魔物の雨。


 それを指差し、オブライエンとマハトマーは、はしゃぎ始める。


 「おい!オブ君見てくれ!“デーモンビートル”に“オオジャワーム”、それに“オオチャクワガタ”もいるぞ!」


 「すごいですね!!色んな魔物がこんないるなんて!」


 「2人ともー!早く“虫取りアーミー”打たないと逃げマスヨ!」


 アミアミがオブライエンたちを急かすようにジェスチャーしながら、声を張り上げる。


 「えっと、あの“ダンプムシ”がいいな!これを抜けて、これを押せばいいんだよね..」


 ダンプムシという巨大なダンゴムシのような魔物に照準を合わせて、オブライエンは側面に付いたボタンを押した。


 「パンッ!!!!」


 軽い音が周りに響くと、“虫取りアーミー”から大きな網がダンプムシを囲うように広がりながら飛んでいく。


 ダンプムシは、網に絡まり動けなくなった。


 「そしたら、このカゴに入れてクダサイ!」


 アミアミは、畳まれた布のような物を近くに投げる。地面に着くと同時に布が広がり、大きなテントのような物が現れた。


 入口のチャックをアミアミは開けると、その中にオブライエンが今、捕獲したダンプムシを入れた。


 「なるほどね!これは便利だな!」


 マハトマーが、“虫取りアーミー”に感心している。そのあともオブライエンは、良さそうな大きさの魔物を見つけては、マハトマーに指示を出し、魔物を捕獲し続けた。


 約30分経ち、およそ30もの昆虫型魔物を捕獲した。


 アミアミは、今日はもう終わりにしようと提案して、捕獲した魔物でパンパンになったテントを小型トラックの後ろに括り付ける。


 テントの下は、滑りやすく丈夫な、潜龍スクリューの鱗で出来ているようで、小型のトラックでも簡単に村まで運ぶ事ができた。


 (とりあえず、今回の迷宮の広さなら50は欲しいってノーマンさん言ってたな。あと1日で行けそうだ!)


 その夜は、ムシムシ村で一晩を過ごした。藁などで作られた寝床ではあったが、ディナーに出てきた芋虫よりはマシであった。


 ——— 翌朝、目覚めて身支度をすると、村の入口ですでに待つアミアミ。オブライエンとマハトマーは、アミアミに連れられて昨日同様に、森林の中へと入っていく。


 今日は、昨日とは違った場所へと向かうとの事だった。10分ほど過ぎると枯れ木が多くなってきた。


 「着いたヨー!降りてクダサイ!」


 今日は、“虫取りアーミー”だけでなく、一冊の本を渡された。本には“キノコ図鑑”と書かれている。


 「もしかして今日はキノコ型の魔物を捕獲するんですか?」


 「そうですヨー!ここはたくさんのキノコが獲れるんデス!出たら、図鑑を読んで毒キノコか区別してクダサイ!毒キノコは、触らないように気をつけてクダサイネ!」


 アミアミからの話を簡単に聞くとオブライエンは、周りを見ながら歩き回る。


 朽ちた枯れ木が地面に倒れているのを見つけた。キノコ型の魔物は、枯れ木などの付近に多く生息しているようだ。


 (あれとか居そうだな...)


 一本の枯れ木を見つけ、恐る恐る近寄ると急にポンッという軽い音と同時に、キノコ型の魔物が出てきた。


 大きさは、小学生ぐらいの体長から大人ぐらい大きなものと様々。キノコの傘も色々な色合いと模様があるようだ。


 とりあえず、オブライエンは、出てきたキノコ型の魔物に“虫取りアーミー”をぶっ放す。

もう虫取りではないのだが...


 キノコ型の魔物は、網に絡まり簡単に捕まえる事ができた。


 30分程で目標の20匹は、捕獲する事ができた。

30匹の昆虫型の魔物と20匹の魔物を確保して、マハトマーとタルタロスへと帰る。帰り際にアミアミが、オブライエンとマハトマーに“虫取りアーミー”を一つずつプレゼントしてくれた。


 実際、この“虫取りアーミー”は凄いアイテムでは?とオブライエンは思った。


 (もし、クリア報酬とか無くなったらこれにしようかな!)


そして1日振りにタルタロスへと戻ったオブライエンであった。



——— オブライエンたちの二つ目の迷宮は、もうすぐだ...


















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