第15話〜二つ目の迷宮準備も大変だった〜
——— タルタロスの中心に
迷宮会社“ドリームラビリンス“は、第10階層に会社2つ目の迷宮に向けて、日々準備に励んでいた。
スペースが決まり、すでに一ヶ月が経過していたが、第1階層の迷宮の時とは違い広い...
ノーマンが一人で罠や整備までやるのは、とても大変であった。そこで、唯一の建築会社時代の友人とも呼べるコルドーさんにアルバイトとしてお願いし、二人で作成に勤しんでいた。
「コルドーさん。ありがとう。とても助かるよ。」
「そんな水くさい事言いなさんなって。俺も久々に建築業に携われて嬉しいんだから。」
コルドーも建築業界の荒波に飲まれ、自分の理想と違うことで建築会社を引退し、今や、裏路地でアイテム屋を細々と営んでいた。
コルドーがバイトとして仲間に入った事は、ドリームラビリンスにとって、とても大きな事であった。
まず、“ノーマンのサポート”。これ言うまでもない。そして、2つ目がアイテムや宝を仕入れ元から直で仕入れられる事にある。
この街では、アイテム屋をやるにしても商業登録証という物を取らないといけないのだが、これが結構難しく、手間が掛かるのだ。
ちなみに前回あれだけ苦戦した迷宮のクリア報酬だが、コルドーさんが九龍の宝玉というアイテムを5個も破格で卸してくれた。
アイテムとしては、第10階層の迷宮のクリア報酬としては、かなり上物である。ノーマンは、これを全面に出して、オープンを今度こそは、成功させようと考えていた。
「ノーマンさん。これはどちらに置いたら良いですかしら?」
「ああ、クモ子さん。それは、そちらの壁際に。」
この女性は、
「ここに置いときますね。あと、通路うに蜘蛛の巣を張っときますわ。」
「クモ子さん、ありがとう。助かるよ。」
クモ子さんも元々、オブライエンの魔人派遣会社で派遣スタッフとして働いていたが、出産し子供の保育園が見つからず、時間帯が合う仕事を探していたのだ。そこにオブライエンが、誘いをかけ今回のボス仕事に就いたのだった。
ちなみに子供の送迎は、オブライエンがやるそうだ...
クモ子の参入もオブライエンたちにとっては、とても心強い物であった。
——— その頃、タルタロスの城門にオブライエンは、佇んでいた。
「おう!!オブ君!!久々だね!では、昆虫採集に出発しようか!!」
快活な表情に無駄に明るい口調でマハトマーが、城門で待っているオブライエンへと手を振って近づいてくる。
「マハトマーさん!お久しぶりです!今日は、宜しくお願いします!」
「ああ!宜しく!さて、今回は、昆虫型の魔物を捕まえたいという事だったよね!とりあえず、車でムシムシ村に行こう!向こうで虫取り名人に会う予定だから!」
「虫取り名人!!楽しみですね!!宜しくお願いします!」
「おう!!」
オブライエンは、マハトマーの大型トラックに乗り込む。荷台には、大きな虫かご?の様な物が乗っている。
新しい魔物採集に胸を躍らせ、タルタロスの東にあるムシムシ村へと2人は、向かうのだった。
タルタロスから車で30分ほど、道を進んでいくと小さな村が現れた。横には、深い緑色をした広大な森林が広がっている。
ムシムシ村は、人口100人ほどの小さな村。村の周りを木で作られた柵で囲われている。
村の前に1人の体格の良い青年が手を振って、立っていた。
「今日は、ありがとうございます!!こちらが今回昆虫型の魔物を採集したいオブ君です!オブ君!こちらが今回、案内してくれる虫取り名人のアミアミさんだ!」
「どーも!オブ君ヨロシク!アミアミとモウシマス!今日はヨロシク!」
「いえいえ!わざわざ、案内していただけるなんて!こちらこそ宜しくお願いします!!」
ガッチリと2人で握手を交わすと、話し数分で早速、森へと昆虫採集に向かうとの事でオブライエンとマハトマーは、アミアミの小型のトラックに乗って、森へと入っていった。
激しい上下の振動を感じながら、小型のトラックは、木と木の間を通って、森林の奥へと進んでいく。
少し開けた場所に出ると、小型トラックをアミアミが停める。
「さあ、2人とも降りてクダサイ。」
2人がトラックから降りると、アミアミは荷台から筒状のバズーカのような物を2つ取り出す。
「ハイ!2人ともこれを持ってクダサイネ!」
手渡されたバスーカのような物は、見た目ほどの重量感はない。
「な、なんですか?これ?」
「これは、私が開発した“虫取りアーミー”という物デス!」
自慢気な顔を浮かべて、アミアミは、そのバズーカ....いや“虫取りアーミー”を肩に担ぐ。
「ここにボタンがアリマス!これを押すとバーーンッと網が発射されて、虫を捕獲シマス!」
アミアミは、嬉しそうな表情で“虫取りアーミー”をオブライエンとマハトマーに説明する。
「すごい!網が発射されるんですね!」
「確かにこれはすごいな!!」
オブライエンとマハトマーは、説明を聞き、使いたくてウズウズしている様子である。
「でも、打つ時の反動がすごーい来るカラ!気をつけてクダサイネ!」
すると、アミアミは開けた場所の地面に突き立っている一本の木の枝を指差す。
「あそこの木の上に魔物がそろそろ来マスカラ。あの木の枝に止まったら、“虫取りアーミー”でよく狙ッテクダサイ!」
「あの木の枝に来るんですね!マハトマーさん!どんな魔物が来るのか楽しみですね!」
オブライエンは、期待に胸を膨らませている。すると、急にもの凄い音がどこからか聞こえて来る。
「ブンブンブンブンブンブン」
(えっ?なにこの音.....)
空を指差し、アミアミが何かを叫んでいるが音が大きすぎて、なにも聞こえない。
音は、まるでヘリコプターのようなモーター音を響かせて、こちらに段々と近づいて来るようにも思える。オブライエンとマハトマーは、音がうるさく、耳を塞いでいる。相変わらず、アミアミは、空を指差し、何かを叫んでいる。
(え!?え!?これ魔物の音....なの?)
音だけでなく、風も強くなってきた。アミアミが指差す方向の木々が強風でバサバサと揺れている。
(な...なにあれ.....)
木々の上から大きなトンボのような魔物が、羽を高速でグルグルと回しながら飛んでいる。
オブライエンたちが乗ってきた小型トラックより大きい。大きな目に真っ赤に染まった体。羽は、更に大きく、グルグルとそれこそ、ヘリコプターのように回っている。
徐々に羽の速度が遅くなるにつれ、音も小さくなり、そのトンボは、アミアミが先程言っていた地面に刺さった木の枝の先へと着陸した。
(......)
流石のマハトマーもこのトンボの魔物には、開いた口が塞がらなかった。
「2人とも、何シテルンデスカッ!虫取りアーミー!ウッテクダサイ!」
「えっと、アミアミさん...あの魔物はなんですか?」
オブライエンは、その巨大なトンボを指差す。
すると、急に血相を変えて、オブライエンの指へ飛びつくアミアミ。
「わーっ!ちょ、ちょっとアミアミさん何するんですか!」
地面に転げるオブライエンとアミアミ。
「オブ君、自殺したいのデスカ!?“キングアカトンボン”に指差すナンテ!!指に止まったら死にマスヨ!!!」
(えっ....あれ指に止まるの?)
「ほぉ!!あれが、キングアカトンボンですか!!あんな大きいのは見たことないな!!」
マハトマーは、最初は驚いていたが、途中から興味津々であった。
実は、オブライエンも“キングアカトンボン”の存在自体は知っていたが、あんなに大きい魔物だとは、知らなかった。というより、あそこまで大きい“ キングアカトンボン”は、そうは居ないらしい。
「あれ取ったら、迷宮凄い繁盛シマスヨ!!!」
「オブ君!あれは、勇者がたくさん来るぞ!!」
興奮気にマハトマーとアミアミは、“キングアカトンボ”の周りを飛び跳ねている。
「すみません!あれは...いらないです!」
「えっ!?」
「えっ!?」
(いや、第10階層じゃ、入らないよ....)
こうして、オブライエンのモンスター探しは、も少し時間が掛かりそうな気配である。
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