第13話〜新しい迷宮作成〜

——— 一ヶ月前、迷宮監査局からの通知で第10階層以上での迷宮運営の許可をもらった迷宮会社“ドリームラビリンス”。

 

 「今日も疲れたなー!最近、俺ん所まで来るやつが多くて疲れが取れねぇーよ。」


 ゴンゾーがそう言いながら従業員部屋へと戻ってきた。


 「お疲れ様です!ゴンゾーさん!今日も30パーティーぐらいは来ましたからね!」


 「二人とも、ちょっと話があるから居酒屋にでも行かないか?」


 「おおー!いいですね!行きましょ!」


 「社長の奢りか?奢りだな!さて行こうか!」


 ノリノリでオブライエンたち3人は、居酒屋へ向かった。途中、メリエンダも誘ったが、今日は忙しくて来れないみたいだった。


 「さて、二人とも。話ってのは、新しい迷宮を持とうかと思ってな。第10階層に良さそうなスペースがあったから今週の休みの日、みんなで見に行かないか?」


 オブライエンとゴンゾーは、嬉しそうに声を上げる!


 「ノーマンさん!とうとうですね!!新しい迷宮をまた作れるなんて!楽しみです!ぜひいきましょう!」


 「でも、お金は大丈夫なのか?10階層以上だと結構高いだろぉ?」


 第10階層以上は、第1階層の倍以上は高いというのが相場であった。その分、スペースは広いし、フィールドが付いている迷宮スペースが多い。


 ちなみにフィールドとというのは、迷宮内にある森や平原などのエリアの呼称で、よくそこに中ボスや宝を置くのが今の主流だそうだ。


 「いや、二人がずっと頑張ってくれたおかげで借金も大分返せたし、お金もだいぶ貯まったからな。」


 (それでもそこまでの大金はないがな... )


 「でも、今の迷宮は、同時に運営するんですよね?」


 「ああ、しばらくはな。だからその間は、ゴンゾーにボスは続けて欲しい。ゴンゾー目当ての勇者もいるからな。」


 「ま、まあな!新しい迷宮に行けねぇのは、残念だが....でもまあ、ファンのためにしばらくは、今の所で続けてやるよぉ!」


 ゴンゾーは、照れ臭そうにしている。実は、Meikyu Tubeの方が調子良いそうで、最近チャンネル登録者が5万人を超えたそうだ。それを見た勇者たちが、押しかけて来る日もあった。


 「なるほど!どちらにしても、もう一人ボスを用意しないといけませんね!」


 「ああ。とりあえず、休みの日にスペース見てから決めよう。」


 「ですね!楽しみだな!なんの魔物を入れようかな!」



 そして、休日になり3人は、塔の入口に集まった。上の階層へは、中央にあるエレベーターに乗る。


 ノーマンは、手に鍵と地図を持っていた。これから見る迷宮は、森のフィールドが付いているようで、初迷宮は、“長さ3kmの1G4Rの間取りであった。


しかし、今回はなんと長さが7kmの1G1F7Rと倍以上の広さである。

 ちなみにゴールの部屋1つ、フィールドが1つ、部屋が7つという意味である。


 「す、凄い広いですねえ.....これだとどれだけ魔物用意しないといけないんだ....」


 オブライエンは、頭の中でどんな魔物を選ぶかを考えていた。


 「それにしても、やる事山ほどあるな!!罠を付けないとだし、今度は、クリア報酬が”アイテムの詰め合わせ“ってわけにはいかないぜ?」

 

 (確かになー。前回もあんなに宝物を探すの大変だったし....)


 「そうだな。まあ、そっちはおいおい決めるさ。」


 三人は、10階層に到着し、迷宮へと向かった。


 「ここだな。」


 第1階層の迷宮とは違い、入口が大きい。

中に入ると壁は、しっかりとレンガで作られている。床も舗装されており、城内型ダンジョンと呼ばれるものであった。


 「すごい綺麗ですね!!通路も広いし、魔物を配置しやすいです!」


 壁などを触りながらオブライエンは、顔が喜んでいた。


 数十分ほど、迷路のようになっている通路を歩いていくと、装飾が施された扉が現れた。


 「お!これがボス部屋か??」


 ゴンゾーは、躊躇わずに扉を開ける。すると、とても広い空間。天井は、20mはあろうかという高さ。


 そして、迷宮内とは思えない。木々などが生い茂っており、自然の森林に来ているかのように錯覚する。


 「これがフィールドですね!!すごい!ここは、昆虫型の魔物で決まりですね!」


 「すげーな!こんな空間があるのか!?てか第10階層でこのレベルなら100とか行くとどんな事になるんだ??」


 フィールドの中を散策気分で歩く3人。意外と出口までは、そこまで時間が掛からずについた。


 フィールドを抜けると、また先程と同じ造りの通路を歩いていく。途中に何個か部屋があったが、とりあえずボスの部屋まで行く事にした。


 ボス部屋の扉は、これまた豪華であった。

現在の第1階層の迷宮に比べてではあるが....


 ボス部屋は、コンビニぐらいの広さだろう。奥には、立派な椅子が設置されている。


 「広いな!!俺も早くここに来たいぜ!」


 ゴンゾーは、今の狭いボス部屋を思い出し、心底こちらの迷宮に来たいと思った。


 「こっちが従業員部屋だ。」

ボス部屋の奥に分かり辛い扉があり、そこを開けると従業員部屋があった。


 勿論、従業員部屋も広く、第1階層の迷宮の物と比べたら居心地も良さそうだった。


 「ノーマンさん!監視モニターがすでについてますよ!」


 「ああ。前の人が付けたままらしい。そのまま貰っていいそうだ。」


 「マジっすか!?これはありがたいですね!なんだかんだお金掛かりますし。それにこのモニター高画質のやつですよ!Blu-rayも付いてる!」


 はしゃぐオブライエン。ノーマンも少し満足そうであった。ゴンゾーは少し残念そうである。多分、しばらく第一階層のボスをやらないといけないからだろう....


 「ノーマンさん!!ここにしましょ!ここで決定で!絶対ここで!」


 「実はな.....もうほとんど決まってるんだ。というより、他のスペースは、金が高くてな....」


 ノーマンは、申し訳なさそうな表情であったが、対照的にオブライエンは、歓喜の表情であった.....


——— こうして、新しい迷宮スペースも決まり、心機一転迷宮運営を頑張ろうと誓う“ドリームラビリンス”の3人ではあったが、問題は沢山である。

この迷宮を開店するまでは、もう少し時間が掛かりそうだ。

 














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