第12話〜恐怖!?迷宮監査官!〜

———迷宮の真新しさ対策として、イベントを開いた迷宮会社”ドリームラビリンス“の3人。イベントは、大成功。打ち上げに帰ろうと思っていた時、チャイムが鳴り、そこには迷宮監査官の姿があった。



 迷宮監査官とは、迷宮の評価を決めるため、迷宮を調査する者で“タルタロス塔迷宮管理協会“から定期的に派遣されてくる。


 しかし、迷宮の評価を決めるのみでなく、その迷宮がちゃんと運営に適切なのか、申請通りなのかなども調査するため、迷宮会社にとっては、恐怖の存在なのだ。


 ちなみに、ノーマンは迷宮職人として働いていた際、もし監査の結果が悪いとそれを作成した迷宮建築会社にもとばっちりがくるため、その恐怖を間接的に知っていた。


 これは、オブライエンも例外でなく、派遣した魔人が種類が違うなどがあろうものなら、会社へと損害請求が来るほどである。


 「ど、どうぞ...」


 「遅いでザマス。チャイムが壊れているのでザマスか!?」


 「す、すみません。」


 (あのノーマンさんが、たじたじになっている!?)


 威圧感を放つ監査官は、逆三角形の眼鏡をくいくい、中指で上げている。


 「では、入口から見るザマス。責任者は、あなたザマスか?」


 「はい。そうです。」


 監査官は、強引にノーマンを入口へと連れて行く。ちなみに、ノーマンは、成人男性の中でも身長や体格は大きい方である。


 オブライエンとゴンゾーは、恐る恐るノーマンたちの後をついていった。


 入口は、パスしたのか通路に入って行く2人。


 「骸骨スケルトンが、1、2、3、4、5.....」


 成り立て勇者が、最初全く進めなかった通路。

監査官は、すごいスピードで骸骨スケルトンを指で数えていく。


 「申請では、20体ザマス!あと7体は、どこにいるザマスか?」


 「あ、はい。秘密の部屋にいます。」


 ノーマンは、緊張しているのか体の動きが固かった。

 すると、監査官は、何やら小さな検査装置みたいなものを取り出す。


 「湿度が40%ザマス!もう少しひんやりと恐怖を感じさせるためにもう20%は上げるザマス!」


 「あと、通路が綺麗でザマス!!もう少し汚すザマス!これでは、勇者にとって簡単になってしまうザマス!!」


 通路を指でなぞって監査官は、怒鳴るように言った。


 「ゴンゾーさん、汚れてると勇者にとってクリアが難しくなるんですか?」


 「.....いや、知らん。」


 その後、監査官は奥へと進む。途中、足で地面を踏むと槍が飛び出てくる罠をチェックしていると...


 「なんザマス?この罠は!?速度が足りないザマス。あと、もう少し長くするザマス!これでは、避けられるザマス!あと返しをつけて、一度刺さったら抜けないようにするザマス!」」


 (監査官は、勇者が嫌いなのだろうか......)


 オブライエンとゴンゾーは、そんな事より、罠にダメ出しを受けてノーマンが怒らないかの方が心配であった。


 他にも毒ガスが噴射する罠では、毒の成分がなにかや、致死率が低いだの言われていた。


 そしてボス部屋につく監査官とノーマン。


 「申請によるとボスは、龍人ドラゴノイドザマスね。そこのあなたザマスか?」


 後ろからついて来ていたゴンゾーを指差す監査官。


 「あ、はいっ!私がボスでザマ....いえ、ボスであります!」


 (絶対、ザマスって言おうとしたなゴンゾーさん...)


 ゴンゾーの身体を触ったり、見回したりしている監査官。


 「あなたちゃんと休憩は取れてるザマスか?」


 「はい。毎日75分休憩を頂いております。」


 「勇者たちからのパワハラやモラハラは、大丈夫ザマスか?」


 「え?ああ。切られたり、魔法をぶつけたりはよくされますが、パワハラやモラハラを感じた事はありませんね....」


 「そうザマスか。それならいいザマス。」


 (えっ....迷宮のボスがパワハラとかあるの?)


 そのあとも従業員部屋やら監視モニターやら魔物にちゃんと休日は与えているかなどを散々聞かれた3人。結局、監査は10時間にも及んだ。


 「結果は、後日郵送するでザマス!これからも健全な迷宮運営に着手するでザマス!」


 そう言い残すと、監査官は迷宮から姿を消した。


 後日、迷宮監査局から通知が届き、迷宮の評価は、“C”であった。


 通知を覗き込む3人。オブライエンは、ノーマンへと尋ねる。


 「迷宮評価”C”ってどうなんですか?」


 「迷宮評価は、5段階あるんだ。”S,A,B,C,D”の五段階だ。

“D”だと営業一時停止で、再度“塔管”に迷宮改善案を提出しないといけない....」


 「じゃあ、つまり合格は合格だけど、ギリギリだったって事ですね.....」


 「ああ....」


 「まあ、いいじゃねえか!営業はできるんだしよぉ!さあて、仕事仕事!」


 すると、通知を端まで読んだノーマンが少し嬉しそうな顔をして口を開く。


 「でも、実績が出来たことで、第10階層以上20階層未満で迷宮を運営できる許可が下りたみたいだ。」


 「え!?本当ですか!やったじゃないですか!」


 「まじか!?第10階層以上なら入場料も高く取れるし、広い迷宮スペースも確保できるんじゃねぇか?給料も上げてくれよ??さあ、Meikyu Tubeの動画作成とボスの仕事頑張るかっ!!」


 上機嫌に従業員部屋から出て行くゴンゾー。


 ノーマンとオブライエンは、互いに微笑みあった。


 ちなみに、運営実績や監査評価などで10階層ずつ上に迷宮運営の許可が下りる仕組みなのだ。


 こうして、とりあえず3人の初迷宮は、迷宮監査員の目をパスする事は、できたのだった。


——— 3人の理想の迷宮作りまでは、一歩一歩近づいているが、まだまだでありそうザマス。









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