第7話〜塔管は、恐ろしい....〜
——— タルタロスの塔を管理、監視する機関”タルタロス塔迷宮管理協会、略して、塔管。
管理、監視だけではなく、迷宮のスペースを迷宮運営会社への売買や賃貸も行なっているこの街最大の機関である。
塔の横に、塔に比べれば見劣りするが、立派な建物がある。
それが、“塔管”の本部であり、ノーマンとオブライエンは、その中にいた。
塔管のエントランスは、とても広く、高い天井、色々な課の受付カウンターがエントランスに並んでいる。
そして、迷宮を運営する者、塔で働く者、塔管で働く社員などでごった返している。
オブライエンもノーマンも以前仕事などで年に数回は、足を運んでいる経験はあるが、いつになっても慣れない。
総合案内へと向かい、どこに行けばいいのかを尋ねる。
「すみません!迷宮運営申請書を出しに来たんですが、どこに———」
オブライエンが言い切る前に、受付の女性は、オブライエンに言葉を放つ。受付の女性は、忙しいのか凄い早口で、オブライエンもノーマンも少し萎縮した様子である。
「迷宮運営申請書は、運営認定課にお進み下さい。もし、契約の更新であれば、迷宮課にお進み下さい。」
「あ、はい.....」
「ノーマンさん、とりあえず、運営認定課.....だそうです。」
「お....おう...」
運営認定課を探すと、数名が既に並んでいる。
他の課よりかは、行列は短いが、それでもどこの課も長い行列ができている。
20分ほど待つと、やっとオブライエンたちの番になり、持ってきた申請書を受付に出す。
「ノーマン・ホソタ様ですね。この度は、新規の迷宮運営という事でおめでとうございます。」
頭を下げる二人。萎縮していたせいか、とても動きがぎこちない。
「では、迷宮の住所は、第一階層の3-D-13ですね。モンスターは、20〜30体。魔人は、1名ですね。入場料が3000タロスという事で相場よりも少し少ないのですが、こちらは、お間違いないでしょうか?」
「あ、はいっ。3000タロスで合ってます。」
「かしこまりました。それでは、こちらの番号札を持って、2階“モンスター労働局の前でお待ちくださいませ。」
「わかりました。」
もらった番号札には、”10“と書かれており、それを持って二人は2階へと向かう。
「やっぱり、入場料安いんですね。メリエンダも言ってましたもんね。」
「ああ、でも成り立て勇者たちがターゲットだからなー。そんなに高く設定してもなぁ」
第一階層の迷宮入場料は、相場”5000タロス〜1万タロスぐらいらしく、オブライエンたちが、設定した3000タロスは、とても安いのだ。
昨日、居酒屋でメリエンダに“やりすぎ”と怒鳴られた事を二人は、思い出した。
二人はその後、働くモンスターたちの雇用保険がどうとか、迷宮の営業時間はどうとか、災害時の時の対策ができているのかとか。
合計5時間超、塔管の中の色々な課を移動し、色々な事を聞かれ、ヘトヘトになっていた。
今は、最後の運営許可証を受け取るために、エントランスのロビーで待っていた。
「でも、ノーマンさんが色々知っていて助かりました。」
「迷宮職人は、災害時の対策とかも仕事に入っているからな。
オブも労働関係は、助かったよ。俺だけじゃ、分からなかった。ありがとうな。まあ、なんとか終わって良かったよ。」
オブライエンは、魔人派遣会社をやっていたおかげで、労働基準法や雇用関係の知識はあったが、迷宮の災害対策や建築基準などは、さっぱりであった。
「“10”番の番号札をお持ちの方は、2番の窓口までお越し下さい。」
アナウンスが入り、オブライエンたちが2番の窓口を見ると、手を挙げている女性社員が二人を待っていた。
女性へと番号札を渡す。
「では、ノーマン・ホソタ様、お座り下さい。
無事、迷宮の運営許可がおりましたので、こちらの情報をお間違いがないか確認の上、サインをこちらにお願いいたします。」
そこには、今から二人が始める迷宮の情報がびっしりと書かれていた。
ざっくりと読んで、サインをするノーマン。
その様子を見つめるオブライエン。
サインをし終わると、女性が笑顔で言う。
「ノーマン・ホソタ様、おめでとうございます。こちらで迷宮申請は、完了でございます。
健全な迷宮運営を願っております。」
そう言って、女性は頭を下げると白いカードをノーマンに渡した。
『ノーマン・ホソタ:ドリームラビリンス迷宮会社—所有迷宮:【1】ランク:【 D 】』
とカードには、記載されている。
それを見て顔から疲労感が無くなる二人。
女性に頭を下げて、塔管から出て行く。
「ついにやりましたね!ノーマンさん!これから頑張りましょう!!」
「ああ。これでスタートに立てたって事だ。オブ!ありがとうな。」
「何を言ってるんですか!お礼を言うのは僕の方です!何はともあれ、忙しくなるのは、明日からですね!」
そう言うと、微笑みながら、握手をし合う二人。
これで、迷宮を営業開始がいつでもできるのだ。
二人は、明日からの事を頭に描きながら、塔へと向かった。
迷宮に入ると、ゴンゾーと手伝いに来てくれたメリエンダが、迷宮内を確認、掃除していた。
「二人ともおかえりなー。こっちは、もう準備万端だぜ!」
「遅かったわね!許可証はちゃんと、もらえたんでしょうね?」
「うん!勿論だよ!!明日から営業開始できる!」
オブライエンは、嬉しそうに声を張り上げる。
「ついにか!!やったなー!オブ!ノーマンさん!俺も明日から気合い入れて、勇者をボコすぜぇーーー!」
ゴンゾーとオブライエンは、嬉しそうにはしゃぎ回っている。
「おめでとう!まあ、頑張りなさい!私も暇な時に様子見に来るわ!」
「メリエンダもありがとうな。」
ノーマンは、そう言うと、はしゃいでいるオブライエンとゴンゾーを見ながら、明日からの営業に胸を躍らせていた。
「まあ、まだあんたたちの理想の迷宮には程遠いけどね!!お金できたら良い魔物を売ってやってもいいから!じゃあね!」
メリエンダは、そう言うと手を振って迷宮から出ていく。
オブライエンとゴンゾーもメリエンダにお礼を言い、見送った。
そしてドリームラビリンスの最初の迷宮“成り立て勇者用の迷宮”が開店するのだった。
——— 迷宮オープンしてから半日。
「おい。オブ.....この迷宮ってそんな難しいか.....」
「.........む、難しくは....ないと思うよ。」
ボス部屋で椅子に座りながら勇者を待つゴンゾーが無線で言う。
「難しいとかじゃなく、人が来ないだけだな......」
ノーマンは、監視カメラを見て言う。
「俺、まだ1回も戦ってねーぞぉーーーーーーーーー!!」
————オープンから半日、最初は、数パーティーの成り立て勇者が来たものの、それから誰も来ない。
無事、迷宮をオープンできた三人だったが、まだ問題が山積みであるようだ。
まだまだ理想の迷宮までは、程遠い.....ようである。
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