4話〜骸骨は意外と簡単に捕まえられる?〜

———— 深夜2時。タルタロス共同墓地にオブライエンは、ガンジンの息子のマハトマーと二人、骸骨採集に来ている。


 満月の光が、怪しく墓地内を照らす。

何千もの墓地が並んでいる。もしかしたら万を超えているかもしれない。


 「さて、オブ君。これを持ちたまえ!」


 マハトマーは、麻でできた大きな袋をオブライエンに手渡した。


 「これはなんです?」


 「捕まえた骸骨を入れる袋だよ!今から一体捕まえるからしっかり見とくんだ!」


 袋の中を覗くと仕切りがいくつかある。


 マハトマーが乗ってきたトラックの荷台には、同じ麻袋が大量に積まれていた。


 「まずは右足のすねからだ!

ほら、あそこ!骸骨が出てくるぞ!」


 マハトマーが指差す部分のお墓の地面が膨らんできた。


 次の瞬間、白骨の手がバサッと地面から出てくる。そして、骸骨が地上へと這い出てきた。


 「骸骨が出てきた。生まれたての骸骨スケルトン初めて見た!」


 いつの間にか、オブライエンの恐怖心は薄れて、好奇心が強くなっていた。


 「いいかい?行くよ!」


 するとマハトマーは、走って骸骨の近くまで行くと右足の脛を蹴る。そして、素早い手際で蹴って外れた足の骨を回収する。先程の麻袋に入れると次は、左足。

 

 すると、骸骨は地面に這いつくばる体勢になる。


 マハトマーは、馬乗りになり、骸骨の腕、肋骨と順々に骨を取り、麻袋に入れる。最後に頭蓋骨を入れて、終了だ。


 「オブ君、こんな感じだ!簡単だろ?やってみよぅ!」


 「えっ?簡単でしたか?てかそれ袋動いてますけど大丈夫です?」


 「ああ!大丈夫だ!骸骨型の魔物は、この麻袋に入れれば、再生しないからな!さて、どんどん出てくるぞ!オブ君もやってみたまえ!」


 オブライエンは、マハトマーの指差す方向へと恐る恐る向かう。


 地面から勢いよく手が出てくる。


 「いいかい!地面に出たらすかさず、足を回収だ!」


 「はい!」


 骸骨が産声を上げるように地上へと這い出てくる。


 「やあ!」


 なんともみっともない蹴りを繰り出し、オブライエンは、骸骨の右足の骨を蹴り上げる。


 すぐに骨を拾い、袋へと入れる。


 「やった!」


 「オブ君!急いで!一個取って満足してはいけないよ!」


 「は、はい!」


 オブライエンは、すぐに骸骨の左足を蹴り、地面に這いつくばる骸骨に馬乗りになる。


 先程、マハトマーがやったように。


 頭蓋骨まで袋に入れ終わると、袋の口を閉める。


 ガサガサと袋は動き続けている。


 「いいぞ!オブ君!じゃあ、ここに入れて!さあ、次だ次!」


 トラックの荷台に乗っている木箱の中に、その袋を入れ、マハトマーさんが、指差す方へと急ぐ。


 まるで虫を採る子供のようにマハトマーは、次々に骸骨を指差し、自分でもどんどん捕まえていく。


 10体ほど捕まえただろうか。そんな時、オブライエンは、墓の上に赤黒い光が漂っているのを見つける。


 「マハトマーさん!!“レッドゴースト”がいますよ!!」


 赤黒い光は、ガス状の幽霊型魔物に分類される“レッドゴースト”である。


 名前の通り、赤く光るモヤモヤが空中を漂い、ガスの真ん中には、目と口が確認できる。


 「おー!オブ君ちょっと待ってくれ!」


 そう言うとマハトマーは、急いでトラックに戻り、掃除機のような機械を持ってきた。


 「オブ君!これで吸い込みなさい!レッドゴーストは、レアだからね!!良い客寄せになるぞ!!」


 相変わらずの無邪気さを顔に張り付け、掃除機”幽霊捕獲機“を手渡す。


 スイッチを押すと”ブオーーーーン“と音を立てて、幽霊捕獲機が動き出す。


 先端のノズルをレッドゴーストに近づいて向けると、レッドゴーストは、ノズルに吸い込まれていく。


 「レッドゴーストってこんな簡単に捕獲できるの......」


 その後も二人は、骸骨を捕獲していき、2時間ほど経つと20体もの骸骨。そして、レッドゴーストを1匹捕獲した。


 「いやー大量だったね!!グッジョブだよ!」


 マハトマーは、そう言うとトラックを走らせ、塔へと向かった。


 塔に着くと、入口にノーマンが待っていた。

早朝のためか、眠そうな目を擦りながらノーマンがこちらに気づく。

 

「ノーマンさーん!捕まえてきましたよー!」


 骸骨たちが入った木箱と瓶のような容器に入ったレッドゴーストを荷台から下ろして、迷宮へと運ぶ。マハトマーも手伝ってくれて、一往復で終わった。


 「マハトマーさん、今日はありがとうございました!!」


 「どういたしまして!また何かあれば遠慮なく言ってくれ!」


 オブライエンとノーマンは、もう一度頭を下げ、マハトマーは、トラックで去っていった。


 「さて、モンスターを早速放つか。」


 ノーマンとオブライエンは、迷宮へと向かった。


 迷宮につき、通路の真ん中で木箱を開封する。


 木箱の中には、麻の袋が大量に詰め込まれており、それぞれの袋が蠢いている。


 「じゃあ、開けますね!」


 オブライエンが、ハサミで袋の口を切り、逆さにして骸骨たちの骨を床へ出す。


 すると骨が次々と合体していき、骸骨スケルトンになった。


 次々にその工程を繰り返し、20体ほどの骸骨たちは、洞窟型の通路に散らばっていった。


 その様子は、陽が入らない、暗く冷たい洞窟型迷宮を気に入った様子であった。


 オブライエンは、最後にレッドゴーストの入った瓶を開けようとすると、


 「オブ。そいつは、こっちで開けよう。」


 そう言うノーマンは、奥へと歩いていく。

オブライエンは、レッドゴーストを持ち、ノーマンの後についていった。


 歩いてる最中、8割方罠などは、完成しているようで、前回、オブが見た時と、だいぶ様変わりしていた。


 「ここだ。この部屋にそいつは配置しよう。」


 そこは、小部屋のようで岩を積み上げた壁に宝箱が置かれている。


 「まだ、宝箱には、何も入ってないぞ。とりあえず、この部屋は、秘密の部屋みたいな役割にしようと思ってな。」


 ノーマンは、そう言うと、からくり扉を部屋に付けると説明した。


 レッドゴーストを部屋に放すと宝箱の上でゆらゆらと浮遊している。


 どんどんと出来上がる迷宮にオブライエンもノーマンも嬉しそうに微笑む。


 「あとは、アイテムとボスだな。」


 「ですね!ボスの方は、狙いは付けているんですが、アイテムがなー....」


 悩むオブライエンを見て、ノーマンが肩をポンッと叩く。


 「オブ。明日一緒に街の中古店でも回るか。」


 「はい!頑張りましょー!」


——— 二人は、がっしりと握手をし、ノーマンは、迷宮の罠の最終点検に。オブライエンは、街へ駆け出して行く。

 オブライエンとノーマンの初めての迷宮の完成も間近かもしれない。











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