第11話・えげつない技術ありまくりなんで。最高の快楽を味わわせてやるっすよ

「次期閻魔大王決定戦が始まったんすよ。条件はただ一つ、宇宙人よりも強いこと。んなわけで、こんな下界にわざわざ来てやったっす」

 おしゃべりをする元気があるなら教室に戻りなさいと教諭にごもっとな事を言われ、屋上へ移動した私と外崎。

 もちろん屋上はきちんと施錠されていたのだが、か細い外崎の手は強引にドアノブをいともたやすく捻り壊し解錠。

 それを見せつけられた私は直感した。こいつはリジュタイプだ。知能と倫理と能力がアンバランスな――危険なやつだ。

「パパパっと宇宙人女の弱点教えてもらっていいっすか? なんかお願いあったら叶えてやるっすよ?」

 外崎は柵に背を預け、明らかにリジュを意識した上で問う。

「……なんだお前、そんな風貌で閻魔大王なんかになりたいのか?」

「はいっす」

 さも当然だというように答えられた。

 というか、そんな決定戦で決定していいような代物なのか閻魔大王。というかその前に前任どうなった? あのまんま? リジュに消し飛ばされてそのまんま?

「つーかウチとして、力ある者が上に立つべきだと思うんすよ。慣例とか伝統とかくそ食らえって感じっす」

 そう言ってポケットからタバコを取り出し、慣れた手つきで火を点けた外崎。……いや、まじかよ。めっちゃアウトローじゃんこいつ……。

「その……いろいろツッコミたいんだけど……」

「えー、やっぱそっち方面のお願いしちゃいます? 若いっすねぇ~」

「そのツッコむじゃないから!」

「別にいいっすよ。弱点教えてくれんなら一発くらいヤらせてあげても」

「…………は?」

 予想外の返答にこちらの返答を失う。なんだろう、まともに受け答えしてたらダメな気がしてきた。

「こう見えてもウチ、えげつない技術ありまくりなんで。最高の快楽を味わわせてやるっすよ」

 タバコを咥える唇がやたらセクシーに見えた。いや、そう見えただけだ。私どちらかというと嫌煙家だし。歩きタバコとかしてる奴が前にいたらわざと咳き込んで走りながら抜かす程だし!!

「いや、お前、そんな、急に、なんだ、なんだお前、痴女か?」

「あはは、純朴には刺激が強すぎっすかね? シラフじゃきついってんなら美味い酒も用意するっす。酔った勢いでかます一夜もまたいいもんっすよ~」

 こいつ……未成年(の風貌)での喫煙、飲酒、ビッチだと……とんでもないキャラが現れやがった。

「つーか、これは久慈川氏にとって非常に有益だと思うんすけどね~?」

「…………聞こうか」

 いや、セクシーで下品な美少女にそこはかとなく魅力を感じたとかそんなことはない。確かに今までえっちな本でしかこんなやつみたことなかったけど! ちょっとくらいは興味あるけど!!

「初エッチのとき下手踏むと、のちの性生活に多大なる影響を与えるんすよ?」

「なん…………だと」

「あの狐女神が大事なんすよね? 結婚するんすよね?? これからエッチなことた~くさんするんすよね???」

 こいつ……浮世のことまで、浮世と私の関係まで知ってるのか。

「スタートダッシュ大事っすよ~。入れる穴がわからない~とかマジ悲惨っすよ。えぐいくらい引かれるっすからね。可愛い! 私がリードしてあげたい! なんて絶対思われないっすよ、エロ漫画じゃあるまいし。なんやかんやしてる間に萎えるなんてことになったらもう…………百年の恋も冷めるっすよ~~~」

「くっ……確かに私は知識だけの人間だ。実技に自信は……無い」

 揺らぐ。違うよ? 別に据え膳食わぬは女の恥的な理由じゃないよ? ただやっぱりその、浮世とそういうことになったとき、そういう感じになっちゃうのはダメじゃん?

 的な事を考えればさ? 嫁としてさ? 予習はしておくべきなんじゃないかな的な?

「もー、登校初日だっていうのに」

 一歩、外崎に近づいた、その時。

「何をしてるのかな、トーコちゃんは」

 殺気。

 ただの気配なんかじゃない。実際ついさっきまでのどかに囀(さえず)っていた鳩が三羽死んだ。

 その存在が屋上に足を踏み入れた瞬間に絶命し地面に落下した。

 そのレベルの――殺気。

「浮世さんとならギリギリ仕方ないと思えるけど……ダメでしょう? 他の生命物体と情報を共有したら」

 リジュが、来た。

「生きる次元はどうしようもなくても……見る景色、吸う空気、聞く声音はどうだってできるよね?」

 状態はたった一つしか変わっていないはずなのに、なんでだろう、二秒後には世界が終わる気がする。

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