第4話・でもでもでも、これっていわゆるあれなのかな、ひと……一目惚れ……?
お堂に戻ると、リジュはここにある
「……そっか……そうだったんだね」
先程の怯え、嘆き、悲しんでいた表情とは一変、どこか嬉しげに、穏やかに笑っているリジュに……違和感を覚える。
「なにかわかったのか?」
「うん……いろいろわかった」
外国人が漫画で日本語を学ぶなんてことが多々あるようだが、リジュはそれと同様に、漫画で地球人を学んだらしい。
「そういうこと、だったんだね……あなた、名前は?」
「
「そっか。トーコちゃんが私に優しくしてくれたのは、私のことが……好きだったからなんだね」
「……は?」
ここら辺りで、今現在のリジュにだいぶ近づく。優しい口調を台無しにするような、暴走する勘違いフィーバー娘の誕生だった。
「だってここにある
「えと、いやリジュ、そういう場合もあるだろうけど、私は」
「えへへ、そっか。そっかそっか、これが優しさ、これが好意、これが……愛情なんだね」
浮世以上のチョロインっぷりに戦慄した私は、隣に佇む狐女神様に助けを求めた。
「やばい、なんかおかしな方向に向かってる。助けてくれ浮世」
「うーぬ。これはこれで悪くないんじゃないかのぅ」
「いやいや悪いって。……あのねリジュ」
助力を期待できないと知り、少し強い口調で正そうとして。
「大丈夫、安心して」
それよりも強い口調で返されて。
「わ、私もその、トーコちゃんの事……嫌いじゃ、ないから……」
吐息が桃色に変わっていくリジュ。
「むしろ、えと、そうなのかな。トーコちゃんの目を見ると胸がドキドキして、その狐さんと隣り合ってるところを見ると胸がヒリヒリするっていうことは、もしかして、これ、私も……トーコちゃんのことが……す……好……」
まずい――と。
このままでは確実に面倒なことになると脊髄が判断を下し、即座に自己防衛本能から私の舌が急速回転を始めた。
「落ち着けリジュ。それは「でも本当にそうなのかな」インプリンティング現象と言ってだな。おそらく「早合点? でもこんな気持ち初めて……」初めて接した地球人が私で、かつ友好的な態度を「でもでも出会ったばっかりだし」とられたから『無害で安全な保護者』という認識がすり込まれたと推測できる。つまり「でもでもでも、これっていわゆるあれなのかな、ひと……一目惚れ……?」だな、それは決して漫画で描かれているような「そっか、そうなんだ」恋心ではなく「好き、私、トーコちゃんのこと、好き」
「あーもう全然聞いてくれない」
努力もむなしく――結局そう結論付けられた。
いや、まぁここまでは特に問題なかったんだけどね。明るくて優しくて献身的な幼馴染って感じで。病的なまでに愛情を向けてきたのは最近だし。
ともかく。
そんなこんなでリジュが廃神社に住み始めたことにより、私はますます家には帰らなくなった。一緒にいないと不安だったし、浮世に会いたいというのもあったし。
それが理由かどうかはもう知る術もないが、しばらくして母はいなくなった。荷物がごっそり無くなったとかいうわけではなく、少しの私物と一緒にひっそり消えたらしい。
『自由に使ってください』とちゃぶ台に置かれた封筒は薄く、これから先、私が生きていく上であまりに少額なのは、小学生の私からみても明らかだった。
と、未来の苦労は目に見えていたものの、厄介な同居人が立ち去り我が家には人一人分のスペースができたことになる。
つまりどういうことかといえば、小学校を卒業した年、遂にリジュと同居をすることになった。
宇宙人がホームレス状態のままでは何かと不便な事もあるだろうと、浮世が背を押してくれたことが要因として大きい。
「苦労だらけの
「浮世さん……お邪魔しました。今まで本当にありがとうございました」
「なぁに
「大丈夫です。婚前交渉は御法度ですから、もし何かされるようであればトーコちゃんには反省するまでの間、直腸と食道を繋いで一人ムカデ人間のまま過ごしてもらいますしっ」
「ほ、ほどほどにの。ほどほどに」
自分からネタを振っておいて苛烈な返事をされたら慌てて
これってまさかもう私復活しちゃう感じ? 回想終わり? まだまだ大事なところ振り返ってないんだけど! つうか待てよ、私の体どんくらい再生してるんだ? 大丈夫だよね。ショック死してもう一回
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