第3話・貴女のことが世界で一番信頼できてこの世で一番好き。
「ここ……どこ……?」
「私の別荘。雨風も
「…………」
当然小学生の私が別荘など持ち合わせているわけもなく、両親もそんな財力はなく、リジュに紹介した場所はただの廃神社だった。
森、というか山の中腹になり、人目につきづらい場所に位置している。(だから廃神社になったんだろうが。)そのため、ここでのんびりしている時に誰かと出くわすこともなく、かなりお気に入りのスポット。人に教えるのも初めてだった。
「なぁにが、
布団や百合漫画(R18)、ラジオ、小型ガスコンロにやかん等、えらく生活感が出てきたお堂の中に入ると、そこには一人の美女、もとい――
「ここは
――一匹の狐がいた。彼女の名は
「浮世、おはよー」
「挨拶が出来るのは関心じゃがのぅ。妾は徳の高い神じゃと何遍言えばわかるのじゃ。様をつけい様を」
狐の耳、ふくよかな胸部、狐の尻尾、ふくよかな乳房、白い肌と切れ長の紅い瞳、ふくよかなバスト、そして麗しく端正な顔立ちであり、その口角が一ミリでも上がれば胸がドギマギしてしまう程に美しい。背丈でいえばアウト中アウトのロリだが。
「して……その妙な気を持つ
「こいつリジュ。家出したんだってさ。しばらくここに置いてやってよ」
「ほう、家出とな……」
母は、私に寂しい思いをさせないようにと体に鞭を打ってパート三昧の日々を過ごしている……のではなく、外見も中身も父とそっくりらしい(失礼至極)私をかなり嫌っている。
そのため実家と言えど私が家にいることは少なく、多くはこの廃神社で過ごした。
私にとっては歴史的価値の高い知的画像集も、母に見つかれば没収のち発狂が目に見えたためここに隠している。
「む? この不健全な空間に女子を住まわすじゃと? 汝の狂気も過ぎるな……」
「どこが不健全なんだ? それより浮世こそエキノコックス移してやるなよ」
「ぬっ! それ狐に一番言っちゃいけないやつじゃと教えたじゃろう! いっちばん傷つくからのぅ! 汝は最低じゃ!」
「はいはいごめんごめん」
「妾は清い身じゃ!」
「知ってる知ってる。つーことでしばらく面倒見てやってね」
「……汝の面倒を見るのも十分面倒なんじゃがのぅ……頼まれては仕方あるまい」
浮世はなんだかんだ言いつつ面倒見はいい。絶対折れてくれると信じていた。『ちょろいな~この狐女神ちゃん』とかは断じて思っていない。
「ほれリジュとやら、ここに住まうなら妾に挨拶をせんか」
「…………」
別段、無視をしているわけではない。リジュは私が持参した百合漫画(R18ではないけどきわどいシーンがたくさんあるやつ)を食い入るように眺め、ぐんぐんとページを捲る。
あっけにとられそれを見つめることしか出来ない私達。一巻目を読み終わったらしいリジュは落ちていた二巻目に手を伸ばした。
(あれは全二十巻。読み終わるまでは少し時間があるな)
まずは一度お堂から出て、浮世にことの経緯を伝えた。
「そうか。相変わらず大胆な事をする小娘じゃのぅ」
「もうちょっと……いい手段があったかな……」
「かもしれんな。じゃがこれからの行動を、この選択が最善だったと思えるようにすればいいだけじゃ。ひとまずは、よくやったのぅ」
頭を撫でられる。母親からそんなことをされたことはなく、父親からされても気色悪いだけで――大好きな浮世からされるこの好意には、ただただ、嬉しさしかなかった。
「……あんがと」
「ふふっ、小娘が照れるな。素直に喜べばいいのじゃ」
「……エ、エキノコックス移されないか心配なだけだっつの!」
「じゃーからソレはやめいと言うとるのに!!」
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