エピローグ


 ギルティアは腐っても勇者だ。

 そして俺は初級ダンジョンのボスモンスター【メタモルスライム】だ。

 だから、ここで待っていれば必ず、ギルティアはやってくる。

 もちろん俺は、ただでやられてやるつもりはない。


 ちょうどいい復讐の機会じゃないか……。

 ダンジョンにやってきて、そこのボスが俺だと知ったらアイツ……どんな顔をするだろうなぁ?

 ギルティアは俺を殺したと思っているから、化けて出たと思うかも。

 まあ、憑依もお化けも似たようなものか。


 だがここは所詮、初級のダンジョン。

 設備やモンスターはぜんぜん整っていないし、俺自身、ザコモンスターだ。

 でも俺にはゲームの知識がある。

 それに、ギルティアたちに関する知識もあるのだ。


 どういうことか? 説明しよう。

 ゲームで負けた時、俺は相手のことを分析するようにしていた。

 相手の武器や防具、それからスキルなどを知れば、それに合わせてダンジョンをつくれる。

 効率よくDPを使用すれば、簡単に格上の相手に勝つことが出来るのだ。

 飽きてきたころ、縛りプレイなんかもして遊んだっけ……。


「つまりまあ、俺は確実にギルティアに勝てる自信があるってわけだ」


「すごいです! さすがはマスターです! 勇者を倒せば、魔王様もとってもお喜びになると思います!」


 イストワーリアが俺をひざに乗せ、撫でながら言う。

 俺はすっかりぬいぐるみスライムとして定着していた。

 俺もまあ、こういう扱いは嫌ではない。

 可愛い子の膝の上は居心地がいいからな。


「ということで、明日から本格的にダンジョンを改造していくぞ! そろそろ魔石でDPも潤ってきたところだ」


「はいマスター! 勇者をコテンパンにやっつけてしまいましょう!」


「はっはっは! 最強のダンジョンを作り上げ、俺は待つ!」


 今からギルティアたちの苦戦する姿が楽しみでならない。

 俺は必ず、みんなを護る!

 妹ユキハを、コハネを、アンジェを、イストワーリアを!


 そして、このふざけた運命に、世界に――復讐するんだ!

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