第18話 巡り巡り行く思惑
九鬼 「そこをどけ。エデン。」
❮解放軍:九鬼 弥一(19)レート770❯
黒いローブに身を包んみ赤い目をしたその男は、目の前の少女に右手をかざし、忠告をする。
ピエロ「やぁーだ。どかないよー?」
❮エデン:ピエロ(??)レート760❯
目元を隠した不気味な仮面を被った萌え袖の全身黒装束の少女は目の前の強敵を嘲笑い、挑発をする。
九鬼「何故止める。お前達にメリットでも?」
ピエロ「いやね?流石にシンタくん、解放軍に取られたまずいじゃん?」
ピエロ「そこで正義のヒーローであるボクの登場だよっ。」
彼女はその場でクルクルと回り、踊り出した。
その余裕は目の前に強敵がいるにも関わらずに変わりない。
九鬼「ならば……殺す……。」
静かに放ったその言葉と共に振り上げた右手をピエロに向ける
九鬼「真空間」
右手で上に、操作するようにピエロもまた上に宙へ浮く。彼女は歯を食い縛り喉を抑えもがきだした。
九鬼「空気は重さ。だが重力とは違う。」
右手を徐々に閉じていくと共に、ピエロもどんどんと苦しみが増す。
九鬼「終わりだ。」
手をギュッと握る。
ピエロの姿は握られた拳と共に水分が蒸発し、完全なミイラ体となって宙に浮いていた。
九鬼はそれを見届け翔弥達の後を追おうと歩きだした瞬間だった。
高速で顔面を狙った右ストレートを首をかしげ交わす。
ピエロ「なーんちゃって。」
交わされた右の拳を引き、ハッと驚いた表情をする九鬼の額に手を置く。
ピエロ「交差する悪夢」
目の前が地平線となり辺りが真っ赤に染まる。体が動かない。足元から無数の手が生い茂っては自分を徐々に飲み込んでいく。
九鬼は自分が飲み込まれていく様子を伺いながらポツリと呟く。
九鬼「幻か」
ピエロ「あれ?」
目の前がガラスのように割れ元の世界へと戻った。
幻覚から覚めた九鬼はその勢いで目の前にいるピエロの頭を掴み、空気の圧力を至近距離で与える。
ピエロ「うげげげげ」
握り力が強くなると共に体中の水分は蒸発し、干物のように薄く延びていく。
途端、握っていた頭と共に体が砂のように消える。
ピエロ「それも幻だったりして?」
後ろから右手を近づけるピエロに一瞬で気づき空気の塊をピエロに向けようとする。
ようやく2人の動きが止まった。
互いを互いに、牽制し合うように攻撃の一手を向ける。
ピエロ「……今はやめておこうか」
そう言い笑みを浮かべる不気味な仮面をした少女はかざした右手をスッとおろす。
ピエロ「ボクは大人だからね。楽しかったよ~!じゃあね~!」
その余裕そうな笑みと共に手を降りながら、砂のようにサラサラと風に流されて消えた。
その様子を見届けた九鬼もようやく空気の塊を解放させる。
九鬼「……。先手を取られた……か……。」
小声で放ったその言葉は何かを察している様子だった。
九鬼もまた、大きな煙と共に姿をその場から消した。
※※※※※
翔弥「はぁ…はぁ…はぁ…」
❮居間 翔弥(15)❯
息を切らしながらも懸命にシンタを背負いながら走る翔弥
背負られているシンタはまだ意識が戻っていないのかグッタリとしている
❮9番隊 隊員:泉シンタ(17)レート120❯
ドームの外で待っている桜花は小さく耳元のマイクに呟く。
桜花「咲。ドーム解いて」
❮9番隊 隊長:喜多 桜花(21)レート790❯
咲「ドーム解除しますね」
❮9番隊 オペレーター:三月 咲(19)❯
緑色の円形のドームがその場からポロポロと外壁が落ちるように消えていく。
ドームが解除された後、桜花は少し早歩きで翔弥の方へと向かう。
桜花「翔弥!シンタ!」
シンタを抱えながら立て膝を着く翔弥。
桜花「おいっ!大丈夫か!?」
翔弥「はぁ……。マジで疲れましたよ……。」
息切れを起こす翔弥が落ち着くのを待ち、話を再開する。
桜花「それで?何があったんだ?」
翔弥「はい……。それがですね……。」
翔弥はさっき起きた事を事細かく説明した。
シンタが人喰いに苦戦していた所から、自分を無理矢理喰わせて人喰いを討伐した事、解放軍が何故かシンタを狙っていた事。それを止めるエデンのピエロの事。
桜花「それで……。シンタは大丈夫なのか?」
翔弥はシンタの心臓に耳を当て、鼓動を聴く。鼓動は正常。息もしている。
翔弥「多分、疲れて倒れて気絶してるだけです。大丈夫だと思います。」
桜花「そうか……。とりあえず帰ろう……。」
シンタを心配そうにしながらも車に乗り込もうとする桜花。
翔弥「あっ……。はい……。」
翔弥はそんな小さく元気のない返事をした。
その中身はエデンにシンタを連れていけなかったという後悔なのだろうか?
桜花「ほらっ。行くぞ?後ろ椅子倒すし、シンタそこに寝転がさせて。」
翔弥「分かりました……。」
元気が無い翔弥を見て桜花は、引っ掛かっていた。
桜花(チッ……。ややこしいな……。)
※※※※※
九鬼「すまん。失敗した。」
ボロボロの廃墟にまた姿を表した九鬼。
地べたに置かれたソファに座る大柄な男。
「やっぱり俺が行った方がよかったんじゃねぇの!?」
その男はソファから立ち上がり自分の力を豪語し、自慢を始めた。
立ち上がったその身長はゆうに2メートルは越えているであろう。
九鬼「黙れウクライナの犯罪者。」
ロロ「”最強”の犯罪者な」
❮解放軍:ベンジャトフ ロロ(35)レート??❯
※※※※※
暗い木陰に身を寄せる不気味な仮面を被った少女。
ピエロ「それと次やる事は……。」
ピエロ「ふふふ……。ふふふふ…。」
ピエロ「楽しくなってきたよね」
薄気味悪い笑みを浮かべるその仮面は一体何を考えているのか、、、
これから起こる災厄は彼女が始まりだった─
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