第11話 謎

桜花「は?どうゆう意味?」

❮9番隊 隊長:喜多 桜花(21)レート790❯

その言葉は困惑のどうゆう意味?ではなく、怒りのこもったどうゆう意味?といった感じだった。


古井出「そのままの意味ですよ。僕はこの”人間もどき”を殺すつもりで来たんです。」

❮8番隊 副隊長:古井出 貴章(19)レート660❯

そのクールな顔に写る目は笑っていなかった。


おい。という桜花の低い声と共に、古井出の額に人差し指を突き刺す。

桜花「私の前でそんな事よく言えたな」


古井出「人喰いなら殺さなきゃ駄目でしょ」

冷静に言っているようでその奥からはとてつもない程の怒りが垣間見えた。


桜花「あぁ。なるほど、お前は確か」

その目をみた途端、ある事を思い出す。

桜花「親が人喰いになって妹が喰われたんだっけか」


古井出「もう昔の事ですけどね。」


古井出 貴章。

幼少期は両親と2つ下の妹の4人家族で過ごす。

転機があったのは10の時。父親の会社が倒産。その後、職場を転々とするが続かず徐々に貯金を切り崩すようになる。

夫婦間での金銭トラブルが次第に増えていき、ストレスが爆発し精神異常を起こした父親が子供達の目の前で母親を惨殺。

その後人喰いとなり目の前で妹が喰われる。

自分が喰われる直前でHHAの隊員に救われる。


水谷「古井出先輩って何があったんですか?」

❮1番隊 水谷班 班長:水谷 香織(18)レート510❯

心配そうに見つめる2人の隊員。


金子「かくかくしかじか……」

❮4番隊 金子班 班長:金子 航也(19)レート580❯


水谷「えっ……。そんな事が……。」

驚愕するのも無理はない。

HHAには何人も過酷な過去や生き方をしてきた隊員が多く在籍しているが彼の生きざまはHHAの隊員の中でもかなりの過酷なもの持っている。


桜花と古井出が睨み合う……その時だった。


HHAの緊急アラームが鳴り響く。

緊急--緊急--


水谷「あっ。緊急アラームだ……」

鳴り響く音に耳をかたむける。


都内にて人喰いが発生--

人喰い対象者は神奈川在住の大島 睦子さん(26)

尚、人喰い化の原因は不明。

対象レートは460。

大都市被害級。至急、副隊長以上の隊員で出撃を要請する--

繰り返す……--


緊急アラームが鳴り響く中、古井出のスーツから着信音が鳴る。

ポケットからスマホを取り出し耳元に当てる。

古井出「はい。古井出です。」


篠宮 「今どこ?8番隊に出撃要請来てるからさっさと戻ってきて」

❮8番隊 オペレーター:篠宮 歌(19)❯

モニターの前でパソコンを触るそのオペレーターはとてもクールな声でそう伝える。


古井出「分かった。今戻る。」

愛想のないその二言で返事を返し、着信を切る。

スマホをポケットに突っ込み、桜花に一言。

古井出「8番隊に出撃要請が来ました。今から行ってきます。」

さっきまでの殺伐とした雰囲気から一転してそのクールな顔と表情をして言い放つ。


桜花「続きは帰ってからじっくり聞いてやるよ」


古井出「そうですね。そうしましょう。」

古井出「こうちゃん。行こう」

そう言い金子を呼び掛ける。


金子「あ?あぁ……。」

戸惑いながらも立ち去ろうとする古井出に着いていく。

水谷や桜花、シンタに手をふりながらその場を後にする金子と全く振り向かない古井出。


シンタ「あの人は……一体……」

そううろたえるシンタ。

その一瞬の出来事はシンタの心に少し傷を負わせた。

自分はなりたくてなった訳じゃない。だか、普通の人間と比べられたら異質だ。嫌悪感を持つのも無理はない。


桜花「お前が強くなるまでは誰にも手を出させねぇよ」

そう力強く言った桜花の言葉が頼もしく聞こえた反面、自分が情けなくなった。


水谷「大丈夫っスか?」

心配そうに覗き込む水谷。

より一層”強くならないと”その思いが強くなった。


HHAの廊下を歩く2人の男--

金子「それにしてもタイミングよすぎねぇーか?」

手を頭の後ろで組みそう問いかける。


古井出「何が?」


金子「いや、丁度あの新入隊員と揉める寸前でお前の隊が召集されてしかも副隊長以上の対応が必要な人喰いだぜ?」


古井出「もしかしたらあの”写真をくれた人”が面白がってやってるかも知れませんね」


金子「それ誰がくれたの?」


古井出「それは言えない。契約上。」

ただ……。そう言い、金子にヒントを渡す。

古井出「このHHAに居る人。」


2人の会話はここで丁度途切れた。古井出が8番隊 隊員室に着いたためその場で別れる2人。

金子はある疑問が浮かんでいた。

上を向いて少し呟く金子

金子「って事は……。そのHHAの居る人が……。」


その疑問は後々とんでもない事を引き起こす事になることをまだ分からなかった。


--9番隊 隊員室--

シンタは少し自分に着いて考えていた。

昔の事は思い出したくないが、振り返らないといけない事もある。


桜花「ほら、コーヒーでも飲むか?」

ソファにぐったりとするシンタを見て少し声をかける桜花。

桜花にとって部下はシンタのみ。しかも目の前

でお前を殺す。そう言われたのは結構心にくる


シンタ「俺ってやっぱり……。異質なんですかね」

不安そうに問いかける。


ガラスのテーブルにコーヒを置き、地べたに胡座をかく桜花。

桜花「ん?まぁ、そうだな。」

ゆっくりとコーヒーを飲み出して一息つく。

桜花「でもそれがお前の”特徴”ってことじゃん?」

桜花「いろんな”才能”があるんだ。そんな才能があっても不思議じゃないだろ」


シンタ「桜花さんって……。優しいですね」

桜花がくれた言葉に反応してポロリと溢れる本音。

この”才能”を肯定してくれた人間はほとんどいなかった。

そんな中、人喰いを駆除するための組織の中で受け入れてくれる場所があるとは思わなかった。

この人になら、”過去を話しても……”

そう思った。


シンタ「少し聞いて欲しい事があるんですよ」


桜花「ん?相談か?聞いてやるよ」


シンタ「俺……。昔、、……」

そう言おうとした瞬間だった。

上の部屋の一室が勢いよく開く。

そこはオペレーター室だった。

咲「桜花さぁぁぁん!!1人応募が来てます!!!」

❮9番隊 オペレーター:三月咲(18)❯


桜花「嘘っ!?マジで!?よっしゃ!!」

桜花「行くぞ!!今すぐ!!」

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