第8話 三大勢力
橘 総一朗「今回、二件の人喰いが現れた。対応した部隊からそれぞれ報告を頼む。」
❮HHA会長:橘 総一朗(72)レート???❯
真っ暗な部屋にライトが少し灯されている。
円形の長机には左右に4つずつ、前後に1つずつの計10の椅子が並んである。
橘 総一朗「3番隊。報告せい。」
3番の席に座っていたのは、いつものあの女隊長ではなく、パーマをかけた茶髪の男だった。
神谷「えっ~と。うちの隊長が大怪我を追ってしまい、治療中なので。」
神谷「代わりに副隊長の俺が参加させてもらいま~す」
❮3番隊 副隊長:神谷 満彦レート660❯
その場で椅子を引き、立つ。
机に置いていた報告書を両手で掴み、上から読み進めていく。
神谷「報告します。」
神谷「今回の人喰いはレート660。首都壊滅級。」
神谷「一般隊員2人。班長1人。隊長1人の計4人でこれを阻止。」
神谷「なお、人喰いになったと思われる女の子は住所、本名、理由の特定がつかず。」
神谷「これは極めて異例だと思われ、引き続き調査を進め、原因を解明していく所存。以上、3番隊からです。」
神谷はひとしきりの報告を終えたあと、報告書を机に置き、深刻そうに自分の考えを述べる。
神谷「んでこっからは俺の考えなんですけど」
神谷「今回の件は”解放軍”が一枚絡んでると思ってます。」
以上。という言葉を残し、椅子に再び座る。
一般的に、HHAの会議は全ての報告を終えてから質問や話し合いを始める。
1つ1つの報告に質問や話し合いをしていれば時間がかかるため、最後に気になったことをまとめて質問したりする。
橘 総一朗「続いて、9番隊。報告せい。」
桜花は、その場でサッと立ち上がる。
普通なら報告書を作りそれを元に報告書していくのだが、桜花は紙を1枚すら持っていなかった。桜花らしいといえばらしい。
桜花「今回のレート400の人喰い、よりも、最悪でくそダルい連中が接触してきました。」
桜花「組織の名前は”エデン”。」
組織を伝えた瞬間。静かだった会議室にプレッシャーが走る。
桜花は、以上です。と言い椅子に座る。
橘 総一朗「最悪だな……。よもや、HHA史上最悪の三大事件のうちの2つが同時にとは……」
会長はそう言い、頭を抱える。
無理も無い。
HHA三大事件。HHAの歴史を揺るがすほどの大事件。
尾田川「確か、三大事件って、百鬼夜行。2番離反。楽園事件。だったよね」
1人の中年男性が口を開く。
❮4番隊 隊長:尾田川 淳(47)レート844❯
橘 総一朗「あぁ……。今一度おさらいしておこう……。」
そう言い、深いため息の後。その概要を説明しだした。
百鬼夜行-東京で起きた13人連続殺人事件。殺害された被害者の遺族。現場に居合わせた人。その現状に耐えきれずにいた全ての人間が一斉に人喰いとなり、町を襲った。次々と喰われていくなか、それをきっかけにまた人喰いになる人間。結果、重軽傷者。120人。死亡者17人。人喰い21人。の大惨事となった。
2番隊離反-元2番隊 隊長の神島レイナは突如としてHHAから部隊ごと離反。出ていったメンバーで解放軍を結成。HHAのやり方。評価稼ぎ。利権。金。”元々の人を助ける”というHHAの方針が変化していったと感じたため、HHAの壊滅を目論んでいると思われる。
楽園事件-エデン。人工的に人喰いを作り、生物兵器として海外へと売買していた犯罪組織。
自分達の研究施設を楽園と称し子供達を洗脳。
可能性のある子供に薬を打たせ、人喰いにしていた。
「質問いいですかね?」
1人の好青年が手を挙げ恐る恐る質問を行う。
大宮 「楽園事件って、桜花ちゃんが解決したんじゃないんですか?」
❮5番隊 隊長:大宮 連斗(22)レート800❯
桜花「その話はあんまりしたくない。」
珍しく桜花が弱気になった。
桜花「切る寸前で逃げられた。それだけだ」
桜花は少しの握り拳を作る。
老人が机を叩き立ち上がり、口を開く。
橘 総一朗「皆、状況は分かったか?」
橘 総一朗「では命を下す」
橘総一朗「3番隊と1番隊で、”解放軍”の調査、及び壊滅を。」
橘総一朗「エデンについては4番隊と5番隊……」
その言葉を遮るかのように、勢いよく怒号を上げる。
桜花「ちょっと待ってくれ!!」
勢い良く立ち上がったためか、椅子は後ろへと転がっていた。
桜花「エデンの件は私がやる……!」
橘 総一朗「ならん」
桜花「私ならできッ!!」
橘 総一朗「ならんと言っとるッ!!」
両者が声をあらげた。
橘 総一朗「また同じ失敗を繰り返すぞ。そうやって前みたい、単身で乗り込んで。部下を無くすのか?」
桜花もたまらず黙る。昔あった桜花の事件は楽園での出来事だったゆえに、簡単に他人に譲りたくない桜花の気持ちも分かる……だが……
橘 総一朗「それに、班長や副隊長が1人もいない部隊が組織1つを壊滅出来るとでも思ってるのか?」
会長の言葉はごもっともだ。正論ゆえに返す言葉も無い。
桜花「なら、シンタを班長にする」
桜花「それで隊員も増やす。」
桜花「そうすれば”エデン”は私に任せてくれるのか?」
桜花には引き下がれない理由があった。
どんな難題でもいい。必ず自分の手で終わらせたかったのだ。
橘 総一朗「そんな事、急に出来るとでも?」
桜花「あぁ。出来るさ。私なら。シンタなら」
そんな自信は本当は無い。けど挑戦してみないと分からない。
無理だと分かっている提案だった。
会長は一息の沈黙の後に言葉を吐き出す。
橘 総一朗「2ヶ月だ」
橘 総一朗「次の班長試験までに、泉シンタのレートの400越え。そして、最低4人以上の隊員の確保。」
橘 総一朗「それで無理なら諦めろ。」
何故、条件を飲んでくれたかは分からない。だけどその可能性にかけるしかなかった。
桜花「ありがとう……ござい……ます」
桜花は過去に無いほどのお辞儀をした。
橘 総一朗「ではこれにて、緊急会議を終わりとする。」
その言葉を最後に会議は終了した。
この会議で桜花は自分の目標というものをより明確に。
HHAとしてはより動きやすくなった。
明確な”敵”という物が、どれだけチームを団結させるか。力とはそこから出てくるものだ。
誰も居なくなった会議室でポツリと呟く老人
橘 総一朗「これでいいのだな?瑠々。」
椅子の影から現れた最強の男はニヤリと笑みを浮かべていた。
瑠々「無理言ってごめんね!じーさん」
❮1番隊 隊長:宮代 瑠々(20)レート996❯
小さな水槽を眺めながらくつろぐ大男。
顔には大きな裂傷根。腕には黄金の腕時計。
暗い廊下を歩いてくる1人の女の子。
ピエロ「やっほ~ただいまぁぁ~」
❮エデン:ピエロ(??)レート760❯
???「どうだった?俺達の子供は」
ピエロ「中々面白そうな子だったよぉ?」
ピエロ「楽しみになってきたなぁ」
女の子はニヤリと笑みを浮かべる。
???「そうだな……。早く合いてぇな」
そう言い手を広げる。
赤岩「この”楽園”。”エデン”で」
❮エデン:赤岩 修一(??)レート???❯
ボロボロでどこもかしこも崩れかかっている薄暗い古い建物。
ガタガタの椅子に座る1人の女性。
美しいスタイルに金色の長髪。
色白。フードを被っていてあまり顔はよく見えない。
そこに音もなく現れる1人の男。
???「今戻った。」
???「そろそろ動くべきだろう。レイナ。」
その言葉に答えるその金髪の女。
レイナ「そうだな……。そうさせてもらおう……。」
❮解放軍:神島 レイナ(??)レート???❯
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