第7話 裏
俺は1人だった。
閉ざされた空白の一室。
ガラスの奥から見える白衣の大人達
何が世界のためだ。
結局は利権、金。そんなもんのためじゃないか
今日もまた、腕に長い針の痛みが響くのだろう
そんな時だった。時間が動いたのは。ガラスの割れる音。飛び散ったガラスの破片は、足音と共に鳴り響く。
???「君を助けにきた」
そう言い、手を差しのべる1人の女性。
その特徴的な背格好。エンブレム。
忘れはしない。
シンタ「あなたは……誰ですか……?」
光で上手く顔が見えない。
だけど笑顔で俺に言ってくれた。
???「私の……名前は……な……っ……」
自分の才能を使うと、いつも走馬灯のようなものを見る。
光が自分を包み込み、過去を、今を、まるで自由に行き来しているかのように。
桜花「一体……どうゆう事……なんだ……」
❮9番隊 隊長:喜多 桜花(21)レート790❯
桜花は驚きのあまり、少しのけぞる。
無論、無理も無い。こんなのは前代未聞だからだ。
だが、桜花のその驚きの意味は周りとは違った意味なのかもしれないが。
シンタ「俺ね……覚えているんですよ……」
❮9番隊 隊員:泉 シンタ(17)レート???❯
その再生していく姿は、人間では無い。
その言葉を喋る姿は人喰いでも無い。
桜花「お前……」
言葉が詰まる桜花をシンタはジッと見つめている。
シンタ「やっぱ……あの時……あの瞬間……」
シンタがその先の言葉を投げかようとした間際だった。
咲「桜花さんッ!」
1人の女性の叫びが、耳元のマイクの声に届く。
咲「すぐ近く人喰いがっ!」
❮9番隊 オペレーター:三月咲(20)❯
その言葉は、桜花にとってもはや一刻の猶予も与えないであろう。
戦闘態勢に入るまでに攻撃を入れられてしまえば、いくら隊長と言えども、重症をおってしまう。
桜花「レートはッ!!」
近くにシンタもいる。自分の間合いでは気付かなかった程の人喰い。
敵のレート次第では、死戦になる可能性もある。
咲は、敵のレートを確認し、唖然としていた。
ゆっくりと口を開く。
咲「レート……760……自然災害級……」
咲「でもこれって……」
咲は目を疑った。
そこにはしっかりと
【レート700越 適正クラス 自然災害級
HHA隊長クラス】
人間と人喰い。両方の表記がされていた。
そして、そんな時だった。
???「こんにちは」
シンタの間後ろに1人の少女が現れた。
隊長の桜花さえも気付かなかった程
顔面以外の全身黒装束。顔には口元以外を隠したピエロのようなお面。
「はじめましてシンタ」
嘲笑うかのように開くその口は不気味で、恐怖すら感じる。
桜花は、下手に動くとシンタを巻き込むと判断しただ立っているしかなかった。
シンタは後ろを振り向かず真っ直ぐ前を向いたまま、言葉を返す。
シンタ「お前……誰……」
「ボク?ボクは……んっ~そうですね」
その少女は、顔を少しかしげる。
ピエロ「この仮面にちなんで、ピエロとでも名乗っておきましょうかね~」
❮???:ピエロ(??)レート760❯
シンタ「俺に、何か……用かよ……」
シンタも恐怖を感じていた。
手には滴り落ちる程の手汗。
ピエロ「えぇ。あなたに用があって来ました~」
顔の見えないその仮面の奥の表情は、分からないが薄気味悪い。
ピエロ「詳しい事は知ってると思うので要件だけ伝えますね」
そう言い、その怪しげな顔を耳元まで近付ける。
ピエロ「私達、”エデン”はいつでも、あなたが”戻る”のを待っていますので。」
優しく投げたその言葉の意味。
ピエロは笑みを浮かべながら、気付けばどこにもいなくなっていた。
シンタ「うっ……」
ピエロが居なくなったのと同時にその場に座り込む。
大量の汗が止まらないシンタは、その場から動くと事すら出来なかった。
桜花「おいっつ!大丈夫か!?」
心配そうに駆け寄る桜花。
アイツの言っていた。戻る。という言葉の意味。
桜花はどこか、覚悟を決めたような表情をしていた。
--商店街
大きな炎と巨大な氷が降り注ぐその場はまさに戦場だった。
神谷「おぉ~!頑張れお前ら~!」
❮3番隊 副隊長:神谷 満彦(19)レート660❯
1人を除いては。
チッ。という言葉と共に、1人の少年が声をあらげる
龍二「てめぇもやれやッ!くそ神谷っ!」
❮1番隊 隊員:喜多 龍二(17)レート405❯
忙しそうに、手を動かすその様子は、荒々しいがどこか戦い慣れをしているようだった。
龍二「炎上っ!」
その言葉と共に龍二は右手を怪物の方へと向ける。
腕から先が炎に包まれ、火炎放射のように炎が噴射される。
「あぁぁあぁああっっぉ!!お」
そんな叫び声と共に人喰いが苦しそうに燃え上がる。
神谷 「龍二~!やりすぎて、周りの店まで火が燃え移ってんぞ~」
余裕そうに龍二をおちょくるその副隊員は楽しげな様子だ。
龍二「ああぁぁぁあ!腹立つアイツ!!」
横から1人の少女が手をかざす。
雛「凍結晶」
無数の氷の美しい結晶が空に広がる。
雪のように降り注ぐ結晶は辺りをどんどんと氷の世界へと変えていく。
周りの炎は鎮火を始め。人喰いは、炎と氷の両方の攻撃に耐えきれず徐々に黒い煙が表れ始め、ポロポロと皮膚が落ちていっていた。
神谷「おおっ!流石はうちの隊の隊員だっ!褒めてやろうっ!」
そう言い女の子の頭を撫でる。
女の子は顔を赤面させて下を向く。
❮3番隊 隊員:榊原 雛(17)レート415❯
「おかぁぁ……あさぁぁん……」
そんな切ない言葉を人喰いは言葉にする。
ポロポロと落ちいく皮膚と共に、滴さえも。
「食べたく……無かった……」
「一緒……に…居たかった……」
龍二はその光景を見て、1つの炎を人喰いに投げた。人喰い黒色に焦げ始め、何も叫ばずにただただ消えていった。
女の子が泣きながら反省をしている様子を炎で燃やした。
その光景に神谷は怒りを露にする。
神谷「おい龍二!お前は人の心がないのか!?」
龍二「はぁ?何がだよ。」
龍二「あんなん最後まで見れるくらい俺は強くねぇよ」
龍二から出たその弱気な言葉には強い意志が見えたのを、わざと怒った神谷は悟っていた。
神谷「まぁいいや……とりあえず帰ろうか……」
そのしんみりとした空気に神谷の一言で雛、龍二共々商店街を後にしようとする。
神谷「はぁ……」
ため息をして肩を落とす神谷。
後にする商店街の方を向く。
神谷「めんどくさい奴が関わってそうだな……」
そう言い残し、その場を後にする3人。
商店街には、人の面影が無くなった。
それを見計らってか、人喰いの死骸の横には1人の男の影が突如として現れる。
神谷は気付いていた。あえて攻撃に参加していなかった。
その男の正体。能力。女の子が人喰いになった理由。全てを知った上で観察をしていた。
???「HHA……偽善者の塊が……」
???「潰さなければならない……」
???「我々、”解放軍”の手で……」
その不気味な男の服装はどこか見たことのあるジャケットを着ていた--
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