第5話 戦い方

激しいバイクの音が風と共に響き渡る。

交通量が多い中、これだけスピードを出してすり抜けをしていれば捕まるのも時間の問題だがHHAの特権により緊急車両として認められている。


桜花 「おい!シンタ!」

❮9番隊隊長:喜多 桜花 レート 790❯

シンタ「は、はい?何ですか?」

❮9番隊隊員:泉シンタ レート 120❯


風の音が邪魔をし聞き取りにくいが、自分を呼んでいるというのは分かる。

桜花「お前、武器は何使える?」

シンタ「HHAからの支給武器は基本的に」


才能といっても、人それぞれ色んな才能がある。そのためHHAは、攻撃向けの才能の持ち主でなくても攻撃に参加出来るように、

小刀。刀。斧。槍。銃。

といった一般的な武器をそれぞれの番隊に支給している。

また、武器に才能を混ぜて使う事も出来る。


桜花「どれがやりやすい?」

シンタ「じゃあ……刀で」

桜花「おっけ。後で咲に言っとくわ」

桜花「今日は見学でいいからな」

シンタ「あっ…はい…」

桜花「隊長の強さを見せてやるよ」

そう言い、にこやかに笑う。


何故か、才能の事を聞いてこない。そこにシンタは引っ掛かっていた。

もしかしたら気づかれているかも。そんな不安がよぎる。

シンタの才能は、人間には程遠い。

”人ならざる者”

それがシンタの才能の名前だ。


--同時刻 商店街

瑠亜柰「今……時の……人喰いは……喋るんだな……」

❮3番隊隊長:橘 瑠亜柰 レート 720❯


力無く放った言葉。それも無理はない。腹部を貫通されている状態で喋れるだけでも奇跡というものだ。


「お母さん。おいちかったよぉぉお??」

女の子の不気味な笑みの裏には数十の手が見えた。

一言言える事は、もはや人間ではない。


私のレートは720。普通に戦えば勝てるハズだ。

不覚だった--

まず怪しむべきだった。女の子1人を置いていくハズが無い。もし置いていかれていたら既に喰われているだろう……。

クソッ。判断を誤ったか……。


瑠亜柰「本当に……私らしくないな……」

そんな言葉が滴り落ちる血共にこぼれる。

「お姉ちゃんも美味しそう!」

「食べででてでもいいぃのぉぉお?」


瑠亜柰「あぁ、やれるものならな」

そう言い、右手を腰にやる。いつもなら左腰に刀を納めているハズだったが……

瑠亜柰「なっ!?」

あるハズの刀がなかった。

こんな時に限って……!

そんな後悔をしている時間も無く、大きな口が自分に迫る、そんな時だった--


バンッ!という銃声が辺りに響いた。

銃弾は女の子の右足を撃ち抜いていた。

「アヴッ」

女の子は、右足に穴が開いたことによりバランスを崩しその場にたおれる。


「大丈夫っすか!!」

1人の女の声が奥から聞こえてくる。

その時、とっさに瑠亜柰は数十メートルの距離を取る

どんどんと、声の主が近づいてくる。

その主は、緑色のおさげの髪をした女だった。

HHAのジャケットには銅色のエンブレム。


瑠亜柰「君は……確か……」

「うっす!私!」

その場で足を揃え敬意をむけ、敬礼を行う。

「1番隊。染谷副隊長直属。水谷班。班長の水谷香織っす!」

❮1番隊 水谷班班長:水谷 香織 レート510❯


彼女は慌てた用に走って来ていた為息切れをおこしていたが、それでも振り切り自分を知ってもらうとし自己紹介を行った。真面目だ。

水谷「凄い怪我……」


驚きの表情を隠せない様子だった。

水谷「早く治療しないと……!」

瑠亜柰「これくらい……たいしたことない……」

そう言い、立て膝をついていた足を踏ん張り、立ち上がる。

後輩にカッコ悪い姿を見せるわけにはいかない。

彼女もまた、別角度の真面目だった。


水谷 「あ!あとコレ!」

そう言い、腰に巻いていた1本の刀を渡す。

瑠亜柰「これは……」

両手に取った刀を数十秒間静止しているかのように見る。

それは、瑠亜柰愛用の刀。わざわざ、HHAからの支給ではなく自分で職人を探し、半年以上をかけて打ってもらった刀。名は月。

三日月模様の刀。その切れ味は、鉄をも豆腐のように切れるのだとか。


瑠亜柰「どこに置いてあったんだ?」

水谷「あ、いや、うちの隊長が」

瑠亜柰「チッ……。瑠々……知ってて……」

舌打ちをし、不満げな表情を見せる。


水谷「それと!他の隊員も続々と到着してるっす!」

瑠亜柰「瑠々は?」

そう言い、訪ねる。彼が居るかいないかで戦局が大きく傾くからだ。


水谷「本部で寝てます」

瑠亜柰「……」

その言葉を聞くと無言で立ち上がる。

腰に刀を添えて、とうとう戦闘体勢に入る。

瑠亜柰「まぁいい。私1人で十分だ。」


--原宿 竹下通り

シンタ「あ!いました!あれじゃないですか!」

シンタがそう声をあげる。バイクで走っていた彼らからは遠くからでも分かる程の巨大な人喰いだった。

膨れ上がった顔面はビルとビルの隙間から飛び出しており、人間と呼ぶにはあまりにもかけはなれている物であった。


桜花「ここでいいわ」

そう言いバイクを停める。まだ現場まで数100メートルあるであろう場所でだ。


シンタ「ここでいいんですか?」

住民は避難しているためか、ほとんどいない。一般道路。

人喰いから距離があるため、まだこちらは気づかれてはいない。


桜花「世の中には先手必勝って言葉があってな」

そう言い、得意気に小石を拾う。

耳元に手を当てる。

桜花「咲?聞こえる?」

咲「はいはい」

❮9番隊 オペレーター:三月 咲❯

オペレーターに声をかける。


桜花「敵まで何メートル?」

パソコンの音が部屋に響く。

手慣れた手付きでモニターを見ながらカチャカチャと打っていく

咲「220メートル。街中だしドームはりますね。」

そう言い1つのボタンを押す。


HHAは、街中にドームと呼ばれる装置をおちらこちらにに散りばめて設置してある。

近隣住民、建物の被害を最小限に抑えるための装置。

発動条件は、 HHA公認のパスポート。

パスポートさえあれば、最大数キロのエリアにドームと呼ばれるバリアをはる事が出来る。

内側からは、出られない。外からも入れない。二次被害を抑えるための処置だ。


咲「ドーム展開」

そう言うと、桜花達の地面から緑色のドームがドンドンと広がっていく。

数百メートルの範囲を囲いこむ。


咲「はい!完了!」

咲の完了と言う言葉を聞いた桜花は、ありがとうという言葉と共に、手を耳から離す。

シンタ 「これがドームか」

辺りを見回すと自分が囲われているといる圧迫感がある。


桜花「っしゃ!暴れてやんよ!」


--商店街

瑠亜柰「遥……ドームをはれ……」

耳元に手をやる。


遥「そんな怪我で大丈夫?」

❮3番隊 オペレーター:清水 遥❯

そんな言葉と共に、モニターを眺めながら手元を動かす。


遥「はいっ。ドームはったよ」

瑠亜柰の足元から展開されたドームは、ドンドンと周りを囲い込み、商店街から少し周りを包み込むように広がった。

遥「他の隊員も着いてるし、そこまで広げたよ」

瑠亜柰「ありがとう……遥……」


耳に当てた手を下ろす。

その流れで、左腰の刀に手を置く。右手で支え、鞘から抜く体勢。

瑠亜柰「反撃開始だ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る