一つだけ違うもの

双葉 草

#1

「「「成華(なるか)・頼(らい)、誕生日おめでと~」」」

「ありがと」

「みんなありがとねー!」


 今日は私とクラスメイトの頼ちゃんの誕生日。

 朝のホームルーム前の時間を使って、クラスの友達がお祝いをしてくれている。


「相変わらず頼はつれないねぇ。ほれ、プレゼントのアルフォートやぞ~」

「むぐむぐ。分かった、分かったから!」


 ほっぺにお菓子の袋をぐいぐい押し付けられ、ぶっきらぼうに受け取る頼ちゃん。  

 とてもうれしそうだ。


「はい、成華にも。そーんなにいいものでもないけど」

「そんなことないよ!」

「私からも、はい」

「ありがと!」


 集まってくれたみんなから次々とプレゼントを手渡され、二人とも両手がいっぱいになった。


「いやーそれにしても誕生日まで一緒とは。ますます双子みたいよね」

「そうかなぁ?」

「全然似てないから」

「えー?でもこの間だって、同じ傘使ってたじゃん」

「あれは成がマネして……!先に使ってたのは私」

「違うよ、たまたまだよっ」

「二人とも文系科目が得意よね」

「逆。理数が苦手なだけ」

「覚えるだけなら一晩でできるからね!」

「好きなお菓子は?」

「「アルフォート」」

「ほらね」


 くすくすと、教室に複数の笑いが起こる。


「やれやれ、この分だとそのうち大変なことになるぞ?」

「大変なこと?」


 いたずらな笑みを浮かべる友達。なんだろ?


「ここまで好みが似てると、好きになる人も被りそうだなって話」

「好きになる人……」


 考えたこともなかった。頼ちゃんはどうだろ。


「それはない」

「ほほう、即答ですか。さては頼、すでに好きな男がいるな?」

「まじ⁈」

「それもない!」


 詰め寄る友達の顔を押しのけて否定する頼ちゃん。その指には二枚の絆創膏が貼られていた。

 私は同じ絆創膏が貼られた手にグッと力を込めて、頼ちゃんと一緒に彼女に迫る友達を押し返した。

 まさか、こんなとこまで同じなんてね。


「そうだよ。好きな男子はいないし、絶対被らない!」

「成華まで⁈」

「ひひ」

「あはは」


 私たちは、大げさなリアクションをとる友達をよそに二人で笑い合った。

『大好きな人の名前』が入った手作りの誕生日プレゼント。

 それを渡すのは、もう少し静かになってからにしよう。







                                   おわり

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一つだけ違うもの 双葉 草 @ki_mi_egg

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