反の章

いる?

子供を幼稚園に迎えに行くと、息子の隣に知らない子がいた。

わたしは初めて見たが、息子は特に気にしていないようだった。

「いつも仲良くしてくれてありがとうね」

幼稚園生を相手に社交辞令をしておく。

息子と仲が良いのか、実際の所は分からないけど。


「これ、いる?」


車に乗ってさあ帰ろう、と思ったら、例の子供が話しかけてきた。

こちらに差し出してきた手は、何かを強く握っている。

面倒くさいので無視しようと思ったが、流石に可哀想と感じて受け取った。


何回か折りたたまれた小さな紙。不思議に思い子供の方を見る。

でも、そこにはもう誰もいなかった。忽然とどこかへ消えたよう。



一体何が書かれているんだろう、と気になったので徐に中身を開けた。



[あなたのこどもにいじめれています]



とても気味が悪く、背筋に鳥肌が立つ。

急いで紙をくしゃくしゃに丸め、ポケットに仕舞うと車のエンジンをかけた。

それにしても最近の幼稚園児は趣味の悪い悪戯をするものなんだな……。


もしかしたら、本当にいじめているんだろうか?


いいや、それはあり得ない。だって私に息子はいないのだから。




『最近、親御のふりをした児童誘拐事件が多発しています。

周りの保護者、先生は幼稚園内にいる知らない人を――

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