11 3人でデート実習
あのあと、何がどうなったのかもう私は覚えていないというか思い出したくないというか、記憶から消そうとしているのですけども、気づいたら3人でデートをすることになりました。5千円札を手に持った司が店を飛び出して、しばらくしてしょんぼり帰ってきたところまでは覚えてるんですけど……。
私たちはレストランを出て、三井さんの運転する車の助手席に私が座って、後部座席に司が乗り込みました。ちなみに司は私の真後ろの席です。
「3人デートに協力いただき感謝する」
寝ぼけたことを言う司に、私はすかさず訂正を入れました。
「3人でデートじゃないでしょ、私たちのデートを見学にきたんでしょ」
婚活のアドバイスを欲しいという話が、見て覚えるっていうことになったんだっけ? 元夫、もうわけがわからないよ……。
「しっかり見て、学んでください」
三井さんは笑っています。なんだが恥ずかしいっ。
「これからネモフィラを見にいくんですけど、理絵さんは見たことありますか」
「ないです。噂には聞いたことありますよ。青い花が絨毯みたいで綺麗だって」
「実物を見るのは俺も初めてだ」
「ネモフィラを見た後はイチゴ狩りに行くんですよね。私、そちらも楽しみなんですよ」
「予約は2人でしてますから3人に変更できないかお願いしてみましょう」
「イチゴ狩りも初めてだ」
二人であれこれ話していると、司も会話に入ってくるのが謎です。
「見学者は会話に参加しないでください」
「あはは、まあ、いいじゃないですか。司さんはたいしたことは言ってないしスルーしましょう」
「三井さんがいいなら良いんですけど……」
というか、なんか毒舌になってません!?
「あの、もし俺に黙ってほしいんだったら、何か音楽かラジオを流してもらえないだろうか」
あ、そっか、そうだった。すっかり忘れてた。三井さんが怪訝そうな顔をしたので、私が解説しました。
「えっと、司は乗り物酔いするんですよ。でも喋ってたり、音楽を聴いてたりしたら平気らしいんです」
「ああ、なるほど。それで会話に入ってきてたんですね。てっきり人の恋路を邪魔する趣味でもある方なのかと邪推してしまいました」
さらっと毒をはきつつ三井さんがカーオーディオを入れると、聞いたことのない曲が流れてきて、司は後部座席の背もたれに深く身を預けました。これでゲロをはく心配がなくなったので安心したのかもしれません。
<つづく>
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