第17話 エリザベスの進化形態、ダークエルフたちとの出会い
「…………霞?」
「おぉ主よ、目が覚めたか」
「キキ」
「……少し休むつもりが、結構寝てしまったか」
アトラの上は寝心地が良すぎて寝すぎてしまったようだ。
エリザベスが進化したあと、霞たちに奥の様子を見に行ってもらったが、どうだったか。
もしあられもない状態だったら、俺が行くのは色々とマズイからな。
それにしても、まさかエリザベスの進化があんな風になるとはな。
一言で言えば、蜂人間だ。いや、蜂の擬人化か?
高校生ほどのサイズまで大きくなり、体は女のような形に変化。
顔は口から上が蜂のお面を被ったような姿で、目元は昆虫のような赤い目、口元は人間のものが露出していた。
だが人の言葉は話せないようだ。後頭部部分には金色のショートヘアーが見えるので、余計に人間のコスプレみたいに見えるな……。
体は人間のように変化しているが、腕は四本あった。後ろの腰の付け根に部分にも、蜂のあのお尻部分が残っているので、これらは蜂の頃の名残か。
背中にはしっかり羽が残っているので、飛行能力は失ってはいないのだろう。
配色も実にミツバチらしく、蜂のお尻部分や、膝上までのロングブーツのような装甲靴は黄色と黒の警告色で、太もも部分は肌色が露出している。
下半身は黒いスパッツ、上半身は黒い袖なしのタートルネック、四本の腕にも肘上まである黒いロング手袋が装着されているが、そのどれもが布ではなく、堅い装甲だった。昆虫だからだろうか。
タートルネックのネック部分にはファーのようにモフモフの毛がついているので、ちょっとしたオシャレみたいで、ここは可愛らしい部分だな。
まさかあの昆虫だった蜂から、人型に進化するなんてな……。
霞も見たことがないと驚いていたが、多分俺のなんらかのスキルの影響かもしれない……。
結構可愛らしいミツバチの姿が気に入っていたから、少し残念ではあるが、これはこれで……まぁいいだろう。
しかし、アトラは蜘蛛の進化で、エリザベスは人型に進化したのは何故だ?
…………解らん。今考えても仕方ないな、後回しだ。
なんにせよ、魔物が人型に進化する可能性を知れたのはプラス……か?
まぁゴブリンやコボルトも、人型とはいえば人型に近いし、そこまで珍しくは……いや、あの蜂からコレだからな……。
やはり異世界か。謎が多い。
「……それで、どうだった?」
「ああ、奥に囚われていた者たちがいたから連れてきたぞ」
――で、周囲から物凄い視線が……助けた女たちか。
獣耳に獣尻尾。獣顔や人の顔をした獣人族の娘か。
あとは……褐色の肌に尖った耳、あれはダークエルフか?
衣服がボロボロな子もいるな……命が無事だっただけ儲けものと考えるか、否か。
「さてと……あの人たちがダークエルフで合ってるか?」
褐色肌の銀髪と黒髪の女性たちを見る。三人ともスタイルがよく美人だ。
ダークエルフやエルフは、基本的に美男美女が多いという認識だが、ここでも間違ってはいなさそうだな。
着衣に乱れはない。無事だったようだ。間に合ったようで良かった。
ツインテールウンディーネの条件もクリアしたし、万々歳だ。
「あぁ、合っているぞ」
「それじゃ挨拶に行くか」
彼女たちの住む場所に行くために、良好な関係を作る必要がある。まず挨拶からだ。
「あー、こんにち――は?」
三人が……いや、全員膝をついて頭を垂れている……? なんだ? どういうことだ……?
「……霞、寝ている間に何があった?」
「特に何もないぞ。なぁ?」
「クェ」
エリザベスとアルが頷いているが……本当に何もしてないのか?
じゃあこの異常な光景はなんだ……? なんだか気持ち悪いぞ……。
「あー……なんだ、俺は頭を下げられるような覚えはないし、そんな身分でもない。ただの人間だ。だからみんな頭をあげてくれないか……?」
みんな顔を見合わせてるな……もしかして、霞やアトラたちに怯えているのか?
「大丈夫だ、みんなの安全はとりあえず保障する。具体的には、ダークエルフたちの住む場所に着くまでは、護っていければと思っている。そのあとは各自自由にしてくれ」
流石にここにこのまま放置ってわけにもいかないし、連れていくしかないよな……。
「――あ、そこの黒髪のダークエルフのお姉さん、俺たちはあなた達ダークエルフがいる場所を目指してるんだが、向かっても大丈夫か? それと、周りの女の子たちも同行させたい。そして案内も頼みたい」
そう言えばまだ目的を話していなかったな――あ、名前すら名乗ってないぞ。
それに勝手に連れていくと言ってしまった……混乱して手順を間違えたな。
「はっ! 問題ありません。村までの案内はお任せください!」
なんでこんな軍人みたいな態度なんだ?
……ん? 霞が満足に頷いている? やっぱり霞が何かやったのか?
「そう言えば……名乗りがまだだったな。俺は京太郎・運河。異世界からどっかの国に召喚されてこの森に棄てられたテイマーだ」
「異世界人!?」
「なんで!?」
「どこの国が!?」
一気にざわついたな。異世界人であることは早めにバラしちゃってもいいだろう。その方が俺という人間を知ってもらいやすいはずだ。
いや……もし異世界人がこの世界の住人にあだ名す存在だったら、俺は敵と認定されてしまっていたかもしれないか……?
仮に何があってもアトラや霞がいるから大丈夫だろうと考えていたが、軽率だったかもしれないな……次からやっぱり控えておこう。
「――という訳で、俺は偉くも何でもないただの人間だ。そんな畏まられると正直――やりづらい。普通に接してくれないか?」
気持ち悪いって言うのは流石に酷いか……ナメられるのも癪だが、だからといって跪かれるのもなんかな……。
「……それではキョータロー様」
お、黒髪のダークエルフが立ち上がってくれたか。だが――
「様もいらない。上下なく対等でいこう」
「し、しかし……」
……かなり顔色が悪いな。何か理由があるのか? 理由が気になるが……。
まさか本当に霞やアトラたちに恐怖しているのか……?
俺はその恐怖の対象の主だからな……俺の命令一つで命が消し飛ぶ――そう思っているなら、この態度も分からなくはないが……。
なんであれ、俺の価値感を押し付けるのは、今度は相手を苦しめてしまう、か。
とりあえず今は無理強いをせず、相手のやりたいようにやらせておこう。
「すまなかった。俺としては対等の立場で話したかったんだが、辛いようならやりやすいようにしてもらって構わない」
「……感謝します、キョータロー様」
かなり顔色がよくなったな。ヤケに緊張しているようだが……もしかして人間である俺が嫌い、か?
いや、霞は特にそんなことは言っていなかったはずだ。じゃあ何故?
……解らん。
とにかく今はダークエルフの住処を目指そう。
いや待てよ……? 何か忘れている気が……。
「そういえば主、レイジングボアの肉のこと、忘れてはいないか?」
「あっ」
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