第3話 重装妖精

アメリカ軍参謀会議


「全く、ジャップどもめ!サイパンはまだしもハワイまで占領するとは!」

「本当に我々を怒らせたいのかね?奴らはただ我々の指示に従えば良いのだよ。まぁ、こうなったら最新鋭の重装妖精隊を向かわせて奴らの艦隊を潰してやる。」

「それは愉快ですな。所詮日本など海軍が潰せればただの猿同然!今後は日本艦隊の殲滅に尽力しませんか!」

「そうですな。では今後は日本艦隊殲滅に全てを注ぐということで。」

「了解した。」「了解です。」「了解しました。」こうしてアメリカ軍参謀会議は

日本艦隊殲滅の方向性で終了した。


太平洋 ミッドウェー沖


大日本帝国海軍第1機動艦隊。その旗艦である原子力空母 加賀にピクシー隊は乗艦していた。第1機動艦隊はミッドウェー沖に展開しているアメリカ機動艦隊を攻撃しつつ、ミッドウェー島も攻略しようとしていた。

「・・・・・・であるからして、貴官らピクシー隊は我が艦隊の空中掩護をしてもらう。我々の同盟国のドイツ軍の高速飛翔型偵察機の撮った写真では敵の新型の妖精が多数

編隊を組んでこちらに近づいているらしい。その要撃、頼めるか?」

「了解です。ところで話は変わりますが

噂に聞く新兵器とは何でしょうか?」

「あぁ、それなんだがなー、調整がうまくいっていないらしいそうだ。とりあえずそれは貴官が使っても使わなくてもいいぞ?何せ

あれは・・・いや、何でもない。」

「?そうですか。ではピクシー隊、空中掩護の任につきます!」

「艦隊長!レーダーに感あり!敵妖精25機、全部例の新型です!」

「何!?こんなに進行が早いとは・・・。

第1機動艦隊総員に通達、急ぎ戦闘配備!」

「了解!発、艦隊旗艦 加賀

宛 大日本帝国海軍第1機動艦隊全部隊、

我敵影ヲ確認セリ。速ヤカニ戦闘配備。」

「よし!ピクシー隊、出るぞ!」

「了解!」

加賀の甲板上には既にピクシー隊、全10機の

95式が発艦可能となっていた。

その装備は35式95ミリガトリング砲と

7式200ミリ超長距離無反動ライフル、

そして0式機関銃対空仕様の重装形態としている。更に95式自体も改造し空中で高速機動戦を展開できるようスラスター出力の大幅強化をしている。

「機体状況よし!装備よし!燃料よし!

ピクシー1発艦準備完了!いつでも行ける!

他の機体も同じ!」

「こちらコントロール加賀、ピクシー隊、

発艦開始してください。

タイミングを霧島隊長に譲渡します。」

「了解、ピクシー隊、出る!」

その合図とともに全機が同時に空高く上がった。

「ピクシーは出たな?よし、対空戦闘開始!味方に当てるなよ!」

加賀以下第1機動艦隊は対空砲火を敵機に

向けた。

「まもなくジャップの艦隊だ。各機、攻撃隊系に移行しろ。ん?うわぁ!」

その隊長機は油断して対空砲火の海に溶けていった。

「隊長ぉ!クソッタレ!副隊長より各機!

pull down! pull down!このA-10の力を見せつけるぞ!」

一糸乱れぬ連携でA-10隊は急降下する。

「ピクシー1、全機、奴らを逃すな。」

ピクシー隊も急降下する。

その頃、艦隊でも他の妖精部隊が次々と発艦して空は磐石の体制となった。

更に敵艦隊攻撃機も護衛機と共に準備している。勝敗は決した。誰もがそう思っていた。

しかしA-10隊は一切諦めていなかった。

「全機!グングニール、発射準備!

発射準備・・・完了!うてぇぇぇ!」

バシュゥゥゥ!噴進音を立てA-10の腰から

何かが発射された。

「ん?何だあれは?各機はそのまま敵妖精を迎撃!俺は一旦艦隊に戻る。」

グングニールとは何か?

それはアメリカが開発した対艦兵器である。

「いけぇ!グングニール!奴らの喉を食い破れ!」

その威力は・・・

「艦隊長、飛翔体接近!対空砲火では防げません!」

「何!くっ!どこの艦がやられた!」

グングニールは加賀の後部を掠めながらその後ろの戦艦に直撃した。

「何だ?何もないじゃないか。」

そう思った直後、戦艦が真っ二つに割れ、

大きな火柱を上げて爆沈した。

「ふふ、ふふぁ!ざまぁみやがれ、クソ猿!一撃必殺のグングニール、後100本以上受け止めれるか?」

『・・・その夢はさっさと捨てたほうがいいぞ』霧島は新兵器を乗せた強襲揚陸艦の甲板に立っていた。その手にはパイポッドを地面に食い込ませた大型の狙撃銃が握られていた。新兵器は何か。それは


100式51サンチ超超長距離対妖精

亜高速電磁式レール・ガン・ライフル


であった。今回のマガジンには弾頭が広範囲に炸裂する3式徹甲榴散弾を入れていた。

「確かにこいつは訳ありだな。大きな反動に機体にも多少ダメージがある。おまけに僅差情報が少ないし、砲身制御が砲身に残った熱の排出がうまく出来ないから追いつかないし、課題山積みだな!」

そしてまた引き金を引く。

「どぅぁぁぁ!まただ!また1機やられた。

おまけに敵妖精が壁を作って俺たちを

対空砲弾の地点に誘導してやがる!くそ!

こうなったら俺の命と引き換えにぃ!」

副隊長のA-10が包囲の輪を抜けた。

『隊長。そっちに1機行きました。対処できますか?』

「ふん、当たり前だろ!そっちは残ったやつをなるべく鹵獲しろ。」

『了解』

霧島機がスコープを覗く。

そして頭部メインカメラは

火器管制総合バイザーII型に覆われる。

ピピッ!電子音がコックピットに鳴り響く。

「うぉぉぉ!仲間の仇だぁぁ!グングニール全本射出ぅ!目標は大型空母とその周りの艦だ!死ねぇぇぇ!」

グングニールが艦隊目掛けて放たれた。

その直後、副隊長は榴散弾をモロに受け、

その機体を空中に四散させた。

「くそ!あいつ最後の最後で撃ちやがった!

何とかしなきゃな。艦隊も回避し始めたけど間に合わんだろ。」

艦隊は対空陣形をとっていたため密集していた。パニックになっているのか各艦バラバラに動いていた。

霧島も必死に榴散弾を撃ち込む。

しかし、砲身が悲鳴を上げ破裂した。

「なっ!砲身がやられた!ガトリングしか無いぞぉ!おいメカマンども、さっさと2本目持ってこい!」

間に合うわけないと思いつつそう下知した。

「間に合わんぞー!総員、対ショック姿勢をとりつつ迎撃!手持ち銃でも何でもいい!

あれを撃ち落とせ!」

対空砲火がどんどん厚くなる。

何基かグングニールを落とした。それでも

全ては落としきれない。命中コース次第では

艦隊が存続すらできないレベルだ。

「ダメだ!ガトリングが弾切れ寸前だ!

51センチライフルはまだか!?

俺の手持ちのライフルは対妖精用なんだよ!せめて対空マガジンがあれば・・・」

そしてグングニールは全てを落としきれず

加賀以下第1機動艦隊の艦艇に深々と

突き刺さった。そして・・・

その全ては爆炎に変わり、刺さったほとんどの艦艇を火の海に変えさせた。

加賀は奇跡的にもその爆炎の中にいたが

沈みはしなかった。しかし、格納庫が炎上、甲板上はとても着艦できる状態ではなく、

艦首と右舷の一部が欠損した。

「うぐぅ、艦隊長より通達、被害状況も

知らせろ!旗艦を加賀から瑞鶴に移す。」

「艦隊長、被害報告です。本艦は航行可能ですが本土への帰還は不可能、サイパンあたりが限界かと。そして他艦の被害報告をします。

敵飛翔体により、重巡3隻、駆逐9隻、

フリゲート艦と水雷艇合わせて23隻です。」

「そうか・・・。艦隊長より総員に通達。

作戦は攻撃隊は第1次攻撃の敢行後速やかに

帰投せよ。それを持って作戦を終了する。

なお、中破以上の艦艇は各自行けるとこまで遠くへ帰還せよ。以上!」

その通達を煌々と照りつける太陽の下、

甲板上で霧島は聞いた。

「くそ!あと少し持ってくれれば、

あと少しさえ持ってくれればまた・・・。」

『隊長、そう自分を責めるな。貴官はよくやってくれた。』

「艦隊長・・・。」

『今から旗艦の移設作業を行う。その後

サイパンで一杯やろう。勿論私の奢りだ。』

「・・・はい!」

敵艦隊への攻撃は見事に第1波での全滅といった記録的な勝利を収めた。

しかしその代償は重く日本はそのツケを

のちに払うこととなったのだ。




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