まととまり

まと、と言う子がいました

まり、と言う子がいました


よく似ている二人でしたが

きょうだい、ではありません

他人のそら似でした


「鏡のようで面白いね」

そう大人に言われた日から

二人は一緒にいることにしました


何年も何年も

十年以上経った日

二人は同じ人を好きになりました

はじめて、ケンカをしました


でも、好きな人は

「両方とは、ダメ?」という人で

まりとまとは怒り、ケンカは治まりました


二人は世の中を嘆き

好きなように生きよう、と決意します

途中、もしかして似ている二人だから

好きな人が同じになるのでは、と

考えつきました

だったら、まとが好きになる人をまりは好きなる

まりが好きになる人をまとは好きになる


けれども、その人は世界で、たった一人です

二人で分け合えばいいと思いましたが、

二人して嫉妬してしまうので、やめました


そのうち、どっちに嫉妬しているんだろう、と

まりはまとに言いました

まともまりの言葉を聞いて首を傾げます


まりを取られちゃうから?

まとを取られちゃうから?

好きな人を取られちゃうから?


一緒がいい

それが答えでした

いつかいつか

二人で分け合いながら一緒に居られる人がいるかもしれない

だったら、それまで二人で生きよう、と

決意しました


それから何年も何年も経ちましたが、

まりが好きになった人をまとは好きにならず

まとが好きになった人をまりは好きにならず

年月が過ぎていき、過ぎていき


やっと、二人は二人が好きなことに気づきました

別に二人でいる必要はなかったのだと、気づいたのです

あの「鏡のようね」は魔法の言葉でした

自然とそうなって、自然と年月を過ごし、

自然と一緒に居るのが当たり前で、

恋人やら、なんやらは、どうでもよかったのです


いまさらながら、まととまりは理解して

手を繋ぎます

もう、年老いた手だけれど

二人は役所に赴いて紙切れに名前を書いて提出しました

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