第4話最強の男

 闇夜に包まれる小屋の中、目を赤く腫らしたベータがシワのついたベッドに腰掛けていた。一方、メアリは窓の外に見える星空を眺めている。


「もう落ち着いた?」

「うん。でも、疲労困憊」

「なら寝なさい。見張りは私がしておくから」


 眠そうに目を擦るベータに、メアリは優しく微笑みかけた。その言葉には、どこか母親のような安心感が感じられ、自然と心が安らいだ。ベータは毛布を被って寝転がるとこう言った。


「メアリは本当に優しい」

「ん、何よいきなり」

「誰かのために厳しいことを言うのはすごく勇気が必要。でも、メアリは言ってくれた」

「私は私にできることをしただけよ。あの根っからのお人好しは、きっと言うのを躊躇うから」

「ふーん……そのお人好しを眠らせたのも?」

「一応医者志望だからね。あいつの魔力が枯渇しかけてるのは見てすぐに分かった。でも、寝なさいって言っても寝ないだろうから、簡易催眠魔法スリープをかけさせてもらったわ。周囲を警戒してる召喚獣への魔力供給も肩代わりしてあげてる」


 そんな事をつらつらと話すメアリを見て、ベータはクスリと笑った。メアリはそれを見て、どうしたのかと首を傾げた。


「メアリって、本当にアルトのことが好きなんだね」

「は、はぁ!?何言ってんのよいきなり!」

「だって、そうでなきゃこんな厄介ごとに首突っ込まない。あと、その反応で好きじゃないっていうの、無理がある」

「言いがかりをつけられたら誰だってこう言うわよ!」

「顔、赤いよ?」

「ふぇ?」


 指摘をされたメアリは、近くの鏡で自分の顔の様子を見た。耳まで真っ赤になっており、ここまで分かりやすい反応をしている自分が恥ずかしくなった。


「ここまでわかりやすい人初めて。麓の学校の子供でももう少しうまく隠す」

「……でも、アルトは気付かないのよ」

「それは、お気の毒」


 メアリはガッカリと肩を落とした。自分の顔を見てよく分かったが、あそこまでわかりやすい顔をしているのに、どうしてアルトは気付かないのかと思った。彼は察しの悪い奴じゃない。むしろ、ベータの真意を見抜くくらいの鋭さがある。


 そんな彼女にベータが手招きをすると、メアリはその通りにし、ベッドの近くにあった椅子に座った。ベータは毛布から顔を出して、メアリの顔を見た。


「さっき医者志望って言ってたけど、メアリはどうして医者になりたいの?」

「話すと少し長いわよ」

「夜更かしは三年間ずっとやってきた」

「もう、悪い子ね。……私の家、バーラス家は魔法医学の研究で上流階級まで成り上がった家系なの。でも、今の世の中は毎年どこかで戦争が起こる、弱肉強食の世界。私の家みたいに魔法という「力」で成り上がったのなら尚更ね。バーラス家は祖父の代から他勢力の台頭で、少しずつ力を失い始めたの。それに焦った父さんと母さんは、私の世話を従者に任せて研究に打ち込んだ」

「寂しくなかったの?」

「そりゃ、寂しかったわよ」


 ベータは親がいない寂しさをよく知っていた。だからこそ、その話を吹っ切れた笑顔で赤裸々に語るメアリが不思議だった。


「まだ幼かった私は、まったく構ってくれない親がすごく嫌いだった。拗ねちゃったってわけ。それでその不満を、私の世話をしてた従者のおばあさんにぶちまけたの。その時、そのおばあさんにこう言われたの。これも全部あなたのためなんです、ってね。その時は意味がわからなかったけど、世界について知って、研究をしてる親のあの一生懸命な顔を見て、あの言葉の意味がわかったの。父さんと母さんがバーラス家の力を取り戻そうとしてるのは、金や名声のためじゃなくて、私を守るためなんだって」

「いい親なんだね……で、それが医者になることと何の関係が?」

「私が医者になりたいのは、父さんと母さんの代わりにバーラス家に再び繁栄をもたらすためよ。未だ治療法が確立していない死の病「熱血病ねっけつびょう」を治す魔法を作ってね」

「熱血病って、あの?」


 熱血病とは、ベータのような田舎娘でも知っているほど有名な病気で、その症状は血液の温度が少しずつ上がっていき、最終的にはその熱で体が燃えて火だるまになるというものだ。


 二十五年前起こった、大陸西部全土を巻き込んだ「西国大戦」の際中に「ライオンハート皇国」で発見され、戦場で猛威を振るった。その影響力は、この病気が原因で戦争の終結が早まったとさえ言われるほどだ。


 現在は感染者数は落ち着いてきているが、致死率は八十パーセントを超えており、脅威は未だ健在だ。


「そう。熱血病の治療法を確立すれば多くの人が助けられるし、バーラス家の地位も確固たるものになる。そして、それを成し遂げた暁には……」

「成し遂げたら?」

「父さんと母さんと目一杯遊ぶ!」


 溜めに溜めてから、堂々とそう宣言したメアリを見て、ベータは思わず吹き出してしまった。彼女の目標は実に荒唐無稽であるが、メアリの無垢な少女のような眩しい笑顔を見ると、嘘ではないのだと分かる。


「そんなのでいいなんて謙虚。もっと贅沢してもいいのに」

「今の世の中、あんたみたいに親を亡くした子供なんていくらでもいる。人並みの幸せだって十分贅沢品よ」

「幸せ……」


 三年前、ベータは全てを失った。彼女はメアリの話を聞いて、自分には人並みの幸せも手に入らないのだろうかと、そんな寂しい事を考えた。それを察したのか、メアリはそっとベータの手を握ってこう言った。


「その時は、友達のあなたも一緒よ」


 手の温かみがじんわりと体中に広がる。彼女の向ける柔らかな笑みは、ベータの心に安らぎを与えた。

 この時、ベータは彼女の優しさと芯の強さの理由を理解した。彼女には、少年が正義のヒーローを目指すように、少女がお姫様を夢見るように、理想をただひたすら真っ直ぐ見つめる純粋な心があるのだ。その心は美しく、決して折れることは無い。そんな眩いほどの輝きを持つ彼女だからこそ、誰よりもまっすぐに、誰よりも優しくあることができるのだ。


「ほんと、メアリは呆れるくらいにお人好し」

「何回目よ、それ」


 ベータが安心して眠りにつこうとしたその時、メアリとアルトが飛び起きた。先程のまでの静けさは姿を消し、二人は険しい顔をして外に目を向けた。ベータはその様子を見てベッドから起き上がった。


「何かあったの?」

「チータが憲兵が近づいているのを見つけた。人数は四人、完全にこっちに気がついてるみたいだ」

「まさかこんなに早く見つかるなんて。アルト、これからどうする?」


 アルトは少し考えた後、ベータにこう言った。


「選択肢は三つだ。一つ目、ここから急いで逃げる。これは逃げた後どうするかが問題だ。二つ目、戦って撃退する。これは撃退できたところでまだまだ増援が来ることが問題だ。三つ目、説得する。これは事情を説明したところで、相手にされるかどうかが問題だ。ベータ、君が決めるんだ」


 ベータは示された三つの選択肢を聞き、最初は冷や汗をかいて震えていた。しかし、何かを決心したようにグッと手を握りしめると、真っ直ぐアルトの目を見つめてこう言った。


「憲兵の人達を説得する」

「それはまた突然だね。今までずっと逃げ続けてきたのに」

「私はやり直すって決めた。もう間違い続けるのはやめたの。父さんと母さんが本当に望んでることは、私が罪人になってまで家族に固執することじゃない。きっと、進む事を望んでる。だから私は生きたい、生きて幸せになりたいの」

「うん、いい返事だ」


 決意をした顔をしているベータを見て、アルトは満足気に頷いた。彼はベータに隠れているよう告げると、メアリの方に歩いて行った。


「メアリ、ベータに死者蘇生は不可能だって伝えたんだね」

「あんたは気を遣って言えないでしょ」

「この子について行こうって言い出したのは僕なのに、辛い役目をさせちゃってごめん」

「私が勝手について来たんだから気にしなくていいの。お互い、できる事をやりましょう」

「ありがとう。それじゃあ、作戦を伝えるね」


 アルトの考えた作戦は、メアリがネズミ(チータ)が感知した増援の位置を知らせ、アルトが外で憲兵と戦い、拘束する。これは、憲兵が悪魔契約者を問答無用で殺す可能性があるからだ。多少手荒ではあるが、ベータの安全を考えるならこれが一番だ。


「さっそく北の方から五人追加。憲兵は連携の取れた集団だからどんどん集まってくるはずよ」

「分かった。……召喚サモン


 アルトがそう唱えると、色とりどりの召喚獣が魔法陣からは現れた。彼は屈んで召喚獣たちと目を合わせた。そして、悲しげな表情で優しくこう言った。


「みんなには、戦いなんてして欲しくなかった。だけど、今はそうも言ってられないんだ。僕のわがままに付き合わせてしまって、本当にごめん」


 すると、召喚獣達の中からミーニャが飛び出して来て、大丈夫だよというように優しい声で鳴いた。それを皮切りに、他の召喚獣達も鳴きはじめた。それは、心配をかけさせまいとしているように見えた。


「……ありがとう。それじゃあ、力を解放するね」


 彼が手をかざすと、魔法陣がさらに強く輝きはじめた。その輝きは遠くからでも視認できるほど強く、当然憲兵達にも届いていた。何の光だと思ったその次の瞬間、憲兵達の目にはとんでもないものが映った。


 『ウゥオオォォォォォォォォォォォォ!』


 この世ならざるものの声が、山中に響いた。その声の主は、山から遥か遠くに離れた場所にいても見ることができた。月を背に巨大な影を作る美しい白い毛並みの狐が、天に向かって吼えていた。

 それとは別に、天を駆ける羊と山羊、星のように美しく儚い光を放つ虎、七色の羽毛を持つ鳥などなどの巨大な獣達が現れ、普段は殺風景な山に御伽噺のような光景を作り出した。


「殺さず、できるだけ怪我させずにお願い」


 アルトがそう呟くと、召喚獣達は一斉に頷き、憲兵のある場所へ走り出した。


「くっ!!こいつら数が多い上に強い!」

「これも悪魔契約者の力なのか!?なっ、うわぁぁ!」

「やばいぞ!増援がいくら来ても足りない!」


 召喚獣の派手な登場で、他の憲兵達も続々と参戦して来たが、アルトの強力な召喚獣になすすべなく捕えられている。このままいけば怪我人なしで話し合いに持ち込めるか、そう思考した瞬間、天を駆ける羊を何者かが地に叩き落とした。


 その瞬間、アルトの体にビリッと電気が流れたような感覚がした。アルトはその異様な感覚に驚き、自分の震える手のひらを見つめた。さっきのは一体何だったのか、羊を落としたのは何者なのか、冷静に頭の中を整理する。


「あの電気が流れたような感覚……回路がショート?デロスへの魔力供給もできなくなってる。さっきのでやられ……いや違う。かき消されたんだ。まさか……あの男は!?」


 デロスを倒した敵の正体に気が付いたアルトは、その男がいる方向へ走り出した。


 地に落ちた羊のデロスが地を揺らす。その衝撃は小屋まで届いていた。メアリとベータは揺れに耐えられず床に転がった。立ち上がった二人は何事かと窓から外を見た。そして、その瞬間を二人は捉えた。


 一人の人間が天高く飛び上がり、残っていた山羊に拳を振るう。その拳が山羊に当たった瞬間、ボンとその人間の何百倍も大きいであろう山羊が弾けて飛んだ。そして山羊は、砂のように跡形もなくなった。


「嘘でしょ!?アルトの召喚獣を一撃で!?」

「ただ殴り倒しただけならあの消え方は不可解」

「多分、召喚獣を構成する魔力が無くなったことで形を保てなくなったんだわ。崩壊現象っていう……」

「まさか!?」

「うわぁ!なによいきなり!」


 メアリが山羊が何をされたか考えようとした時、隣にいたベータが大声を上げた。メアリは耳元で叫ばれたため、反射的に驚きの声を上げた。一体どうしたのだろうかとベータの顔を見ると、その顔は暗い夜でも青ざめていることが確信できるほど、恐怖と絶望に包まれていた。


「あいつの正体がわかったの?」

「うん……あいつは、パイス王国憲兵団団長兼国防軍総帥、王国、ひいては世界最強とまで言われる、バルバトス・タイラーだ……!」


 体を震わせながら、絞り出すような声でベータはそう言った。


「タイラーって、まさか学園に捜査に来てたあの男?なんでそんな偉い奴が一人の悪魔契約者のために出て来てんのよ」

「その口ぶり、メアリはタイラーをあまり知らないんだね……」

「私はブランチ王国の出身だから、そこまで詳しくはないの」

「だったら教えてあげる。タイラーは、あいつは悪魔契約者の抹殺に執着してるんだ。何が奴をそこまで駆り立てるのかわからないけど、そこに悪魔契約者がいるなら問答無用で殺す。しかも、奴の持つ神器、魔神竜イブリース革手袋ピーゴーカフには魔力を完全に打ち消す力がある。それで……」

「……ベータ?」


 ベータの言葉が絶える。どうしたのかとメアリが肩に触れると、その体は小刻みに震えていた。


「あれ……?これ、どうすればいいの?あんな化け物、私たちでどうにかするなんて不可能……待ってよ、私、ようやく進もうって決めたのに、こんなのどうしようもない……これが罰……?」


 ベータはタイラーという規格外の怪物を目の前に絶望してしまった。パイス王国の近くに住んでいる彼女は、タイラーという男をよく知っていたのだ。


 彼の上げた凄まじい戦果と、最強と言われるまでの噂話。そして、実際に目の前で戦っている姿、村に逃げ込んだ悪魔契約者を白昼堂々、周りに子どもがいるのにも拘らず、そいつを問答無用で血祭りにあげたのを見たことがあったのだ。


 その悪魔契約者がどれだけ情けなく命乞いをしても、タイラーは全く躊躇わなかった。戦う意思もなく、全く言葉になっていないなにかを喚き散らす罪人が文字通り捻り潰されるのを見て、当時のベータは怖いと思った。そして今、その対象が自分となった。あんな事をされるのも、メアリとアルトがあんな化け物に蹂躙されるのも、どちらも受け入れらなかった。


 だんだんと目に見えて深い絶望に落ちていくベータを、メアリは優しく抱きしめた。その温かさと安心感は、まるで母親のようで、ほんの少し恐怖が和らいだ。


「……どう?落ち着いた?」

「えっと……うん」

「そいつが馬鹿みたいに強くて、悪魔契約者を殺すことに執着してるのは分かったわ。正直、絶望的な状況よ。でも、そんな時こそ冷静になりなさい」

「うん、理解した」


 メアリはパッと手を離した。何とか思考停止は回避したが、恐怖はまだ続いていた。まだ震えて立ち上がれないベータに、メアリはこう言った。


「話し合いの場は私たちが絶対に用意する。だから、あなたは今のあなたのできる事をしなさい」


 メアリのその言葉を聞くと、自然と震えが止まった。そのどこまでも頼りになる言葉で、まだ自分にできる事があると思い直した。状況は何一つ好転していないが、それでもまだ希望はある。


 暗い森の中、タイラーは駆け回って召喚獣と戦っていた。ひとつ、またひとつ召喚獣を屠っていく中、彼は違和感を覚えていた。


(この召喚獣、とてつもなく強力だ。この魔神竜の革手袋がなければ、一体の処理にそれなりの時間を要すだろう。だからこそ不自然だ。今回のホシは、一度他の奴らに深手を負わされている。こんな力があるならそんな事にはならない。どこか俺たちの手が届かない場所に逃げることも、自分を見つけた憲兵を亡き者にすることもできたはずだ。なら、他に仲間がいるのか。人質を取るだけでなく、強力な魔法使いの仲間がいるとは、直ちに抹殺する必要があるな)


 グッと拳を握りしめ、目の前の青い虎を消し去った。タイラーが現れて十分程度、百を超えるアルトの召喚獣は、すでに半分以下まで減っていた。


 タイラーが他の憲兵と合流し、これからの行動を話し合っていた時、その場にアルトが現れた。息も絶え絶えな彼を保護しようと、一人の憲兵が駆け寄るのをタイラーが大声を出して止めた。ビクリとして立ち止まった憲兵を後ろに下げて、タイラーがゆっくりと前に出た。それを待っていたかのように、アルトは膝についていた手を離し、曲がっていた腰を上げてタイラーの目を見た。


「アルト・メルラン……だな?」

「その通りです、バルバトス・タイラーさん。僕はあなたとお話がしたくて来ました」

「そのための歓迎がこれか?だとしたら、君は人との話し方を学んだほうがいい」

「そっくりそのままお返ししますよ。悪魔契約者を何の話も聞かずに抹殺する「悪魔殺し」さん」

「……言ってくれるじゃないか」

「ちょっ、ちょっとタイラーさん!さっきから何の話ししてるんですか!?」


 一色触発の雰囲気の二人の間に、さっきアルトを保護しようとした憲兵が割って入った。


「マイク、まだわからないのか。こいつがさっきから俺たちを捕らえている召喚獣どもの主人だ」

「えぇ?ちょっと待ってくださいよ。確かにあの子は召喚魔法が得意だってデータを学園から貰いましたけど、こんな強力な召喚獣を使役できるほどじゃないですよ」

「そんなもの信用するな。現場で、自分の目で見たものだけを信じろ。俺にはわかる。こいつは一国の軍隊に匹敵するレベルの魔法使いだってな」

「……僕があの子たちを召喚しました。やっぱり、あなた相手だと隠し事はできませんね」


 アルトは観念したように両手を上げた。タイラーはアルトの発言に呆気にとられているマイクを後ろに下げて、少しずつ歩いて近づいてくる。


「それで、話とは何だ」

「単刀直入に言います。あの子を、ベータを許してあげてくれませんか」


 その瞬間、タイラーの歩みが止まった。少し俯いて、周囲も暗いため表情が見えない彼は、動物の唸りような低い声でこう言った。


「言ってる意味がわからないな」

「ベータは何も悪い事をしてません。殺人も、強盗も、なにも。あの子はただ殺された両親を生き返らせたかっただけなんです」

「だからあの悪魔契約者を許せと」

「そうです。何か間違った事を言っていますか」

「あぁ、悪魔契約者は殺さなければならない」

「っ!?それが何の罪もない少女だとしてもですか!?」

「何の罪もない?寝言は寝て言え女顔。悪魔契約者は存在することそのものが罪だ」


 タイラーがドッと足を深く踏み込んで、瞬きをする間にアルトの目の前にまで接近した。そのまま高速接近してきた拳がアルトの腹を抉る。アルトはそのままぶっ飛んで木に激突した。


「そして、そいつに味方する貴様も排除する」

「……どうやら、僕の対応は正解だったみたいだ」


 アルトは腹を抱えてよろよろと立ち上がった。内臓の位置がめちゃくちゃになったかのような痛みが体に残っている。意識が朦朧とする中、それでも彼はベータを助けることを諦めていなかった。

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