善哉

「供える役はお前がやりなさい」

姉に、なみなみと餡子の入った器が手渡された。

うちでは勝負事の前に、必ず善哉(ぜんざい)を神棚に供えなくてはならない。明日は姉のテニスの試合だった。

「馬鹿みたい」

現実主義の姉はふいと台所を出た。善哉は、結局私が供えた。


翌日姉は不戦勝した。

相手が試合中に倒れたからだ。

医師曰く、脳が煮えた餡の様に溶けていたという。

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