CHAPTER.2 イヴ・ヨッドギメル A計画途中報告
§ 2―1 メルとの買い物 ①
西暦2030年7月。日本・東京。
単位は足りていたが、去年、うっかり寝坊したせいで落としてしまった一限の必修科目の医薬品評価科学のテストが無事終わった。胸を
「遅れてもかまいませんよ。気をつけておいでくださいね」
とメルは言っていたが、こっちの都合に付き合わせるのに、これ以上、迷惑をかけるのも申し訳ない。とはいえ、梅雨の合間の晴れ日は30℃を超える暑さだ。さらに、一応、
額に汗を滲ませながら駅前のファミレスにようやくたどり着く。息を整えてからドアを開き店内に入る。
「いらっしゃいませー。お客様、お一人様ですか?」
「いえ、待ち合わせでして、先に来てるはずなんですが」
「そうでしたか。わかりました」
店員のお姉さんがカウンターの奥にスタスタと姿を消したところで、落ち着いて店内を見回してみる。お昼どきだからか、店内は
「ごめん、メル。やっぱりちょっと遅れちゃったよ」
「お疲れ様です、アキト様。お気になさらないでください。遅れることは聞いておりましたので」
「そうだけど、買い物に付き合わせるのはこっちだからね。……あと、メルさん。外では、その『様』って言うのはやめてほしいんだけど」
「そういうわけにはいきません」
と笑顔で返す。何度言ってもやめるつもりはないようだが、かわいい笑顔で言われるので、つい許してしまう。その顔はどこか、薫先輩に面影がある。左耳の赤いイヤリングが揺れている。
「はぁー。いつも笑って
机の上を見ると、お冷とドリンクバーのアイスティーが置かれている。
「では、お言葉に甘えて、こちらのパンケーキをお願いしてよいでしょうか?」
机の端のタブレット端末に、パンケーキフェアと表示されているのを指している。
「おぉ! えらい、えらい。今日は断らなかったね」
「何度もアキト様に言われれば、こちらとしてもそれ相応の対応はいたしますよ」
「じゃぁ、その『様』も直してもらいたいんだけどな」
「そちらは
とまた笑顔で言う。『様』と『イエス、マスター』だけは、もう諦めた。
「じゃぁ、おれはカルボナーラとドリンクバーで」
「以前もカルボナーラを頼んでいましたよね」
「カルボナーラ大好きだから、何度食べても飽きないんだよ」
「では、私も次はカルボナーラをいただくとします」
「うんうん、食べて、食べて。きっと、メルも気に入るからさ」
「わかりました」
と言い終わると、端末を手に取り、カルボナーラとドリンクバー、そして『いちごたっぷり!
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