§ 1―12 消える大陸



「セルクイユ、起動!」


 ユッドの声を聞き取ったのか、近くにある湖から普通自動車程度の大きさの小型船が飛び出してきた。そして、高速で飛行し、ユッドの上空に停止し、ゆっくり降りてくる。


「イリス様、これに乗ります。少し揺れますが辛抱しんぼうしてください」


 なんとか小型船は地面に着陸し、船の上部がスライドする。素早く乗り込み、レバーを操作すると空中に徐々に浮いていく。イリスは目をつぶり力の限りしがみついているが、そのままアニスのいる中央宮殿へ向かう。


 大気すら揺れている中、飛行し、中央宮殿があった場所に辿り着くが、上空からでは見分けることができないほど、その一帯は崩壊しており、降りることなどできるわけもなかった。


 アニスの言葉を思い出す。


(ユッド……。お願いがあるんだ……。イリスを助けてもらえないかい? きみにしか頼めないんだ)


「イエス、マスター……。あなたの言うことに従います……」


 流れるはずのない涙。しかし、確かに感じる。




 大陸全土は崩壊し、沈没していく。そんな中、1筋の光が流れていく。



「私はまた、マスターを守ることができなかった……」


 ユッドは胸が熱くなるのを感じた。そんなことはあり得ないはずなのに胸に確かに熱を感じていた。


「必ずイリス様は守ります。……マスター、イヴ様。お許しください」



 そして、その失意色の光は大陸から北に流れていった。


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