四景

雨が降っている。


大吾の部屋。相変わらず汚い。


景が座っている。お腹が膨らんでいる。


大吾がやってくる。


大吾戻ろうとする。



景 大吾っ。


大吾 なんです。


景 ごめんなさい。


大吾 何を謝っているんです。


景 私、疫病神よね。


大吾 自覚しているなら、もう謝らないでください。


景 わかっていたのよ。最初から。


大吾 それがどうしたというんです。僕に話して何になるというんです。


景 一人じゃ耐え切れないの。


大吾 母や友人にでも話してください。僕は聴きたいとは微塵も思わない。厄介ごとはごめんだ。


景 やさしくないわね。


大吾 僕は最初からそうですよ。人に興味なく、勝手にすればって思ってる。自分自身にも。


景 私、どうすればいいの。教えて大吾。


大吾 あんなクソ野郎の男なんておろせばいいでしょう。それができないなら産んで、一生かけて面倒を見ていく。それ以外に何ができるというのです。



景、泣く。



大吾 泣いてもどうにもなりませんよ。


景 私、いったいどうすれば。



やよい、やってくる。


やよい戻ろうとする。



大吾 やよい。


やよい なによ。


大吾 俺たちはどうしてこうもうまく行かないんだろうな。


やよい 私はうまくいってますんでお二人で考えてください。では。



やよい、退場



大吾 お姉さん、ここは僕の部屋なんです。出ていってくれませんか。


景 もう少し此処にいさせて。


大吾 好きにしてください。


景 結局、私は自身に甘いの。どうしても必死に幸福になろうと生き尽くせない。なのに、幸福を求めてしまってだらしない姿を魅せてしまうの。ふしだらな姉でごめんなさい。私、どうしてもあの人を憎めないの。今お腹の中で動き回っているこの子に罪をなすりつけられないの。


大吾 お姉さんの人生だ。お好きにどうぞ。


景 貴方はまだ小説を書いているのね。


大吾 それ以外にできることはありませんから。


景 成功する見込みはあるの。


大吾 そんなの僕が決めることじゃありませんよ。世間が決めることです。


景 そんないつまでもこれだけってわけにはいきませんでしょう。


大吾 未来のことなんてわかりません。お父さんもいつまでも無事かもわかりませんですし。こんな未来を予測していなかったようにこれからも僕たちがどのように生きていくかなんてわかりませんでしょ。そんなことに頭使っていても無駄だなって最近思ってるし、今までもクソに生きてきたから、これからもクソだとしてもクソまみれになってもあぁ、クソだなぁってクソに囲まれながら青空を眺められるならそれは幸せな人生なんだろうなってそんな想像はしますけどね。


景 私たちどうなるんでしょう。


大吾 姉さんは本当に愚かな女ですね。子供の名前とか決めているんですか。


景 まだ何も。


大吾 僕に決めさせてくださいよ。人の名前、付けたくてたまらないんです。


景 もちろん構わないけれど。いい名前にしてね。


大吾 もちろん。


暗転

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