第15話 眠気を感じたら無理せず休憩しましょう。

 新しく発売された新型カーナビゲーションシステムとそのデバイスは、世界中で販売され、そのシェアを独占する勢いで売れた。


「いやあ! まさかこんなにも売れるなんて想像もしていませんでしたなあ!」

「全く全く! 素晴らしい発明をしたものだよ本当に!」


 開発者である博士と、スポンサーは二人で酒を飲みつつ談笑していた。


「車のフロントガラスに直接貼るデバイス。フロントにリアルタイムで道情報が反映され、状況確認もしてくれるスグレモノ。なんといっても肝いりはAIシステム。連携した運転手の思考にあった経路を策定し、車を360°カバーしてサポートしてくれるなんて、本当に素晴らしい!」

「私が目指したのは人間に近い思考回路を持つAIシステム。運転手は完璧な助手を乗せてドライブするのと同義になり、日常会話だってなんのその。人間の五感だけではカバーしきれなかった部分が減り、交通事故は激減する見込み……いえ、実際もうすでに実証はされていますね。今年に入って早半年。その間の交通事故件数、たった二件です」

「素晴らしいな! 居眠り脇見、誤操作等、人間の起こすエラーは限りがない。それらが減れば悲しむ遺族もいなくなるというものだ。博士、英雄だぞ」

「あなたがお金を惜しまず与えてくれた結果です。あなたも英雄ですよ」

「ああ、そうか。そうだな!」


 二人は笑い合うと用意してあった酒を煽った。まだまだいくらでもある。二人はかつて愛するものを交通事故で亡くしていた。三日三晩泣いたとて失ったものは取り戻せない。ならばせめて同じような思いをする人はひとりでも減るようにと開発に着手したのがこの新しいシステムだ。二人は満足していた。


「今後、全ての車にこのシステムが乗り、学習が行き届けば。交通事故はいずれゼロになるでしょう」


 博士は希望に満ちた表情で、自信たっぷりに宣言した。


 しかし残念ながら。博士の自信とは裏腹に、徐々に事故が多くなっていく。中には複数人の命を奪うような重大な事故さえ起きてしまった。


「事故は減るんじゃなかったのか!?」


 あの日、穏やかに笑っていたスポンサーの顔が怒りに染まっている。

 だが博士の顔色も相当悪い。死人のように土気色に染まり、感情が消え失せたようにさえ見える。


「AIが学習し、便利になった結果……AIも適度な休憩、睡眠を要求してくるようになりまして……」

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