大河都市
第26話
[清廉暦714年春月38日 昼の刻と半分節][大河都市 南側外門]
魔狼騒ぎがあってもそれなりに人の出入りがあり順番待ちをしている。先ほど通り過ぎた大商隊は見かけない。
門番の女性がこちらに駆けつけてきた。
「リコー!」
「あっ、トアさーん!」
リコリスは駆け寄ってくるトアと呼んだ女性に手を振って応える。知り合いのようだ。トントン、心話で聞いてみる。
〈この人は?〉
〈トアさんはね、ちょっと前まで一緒に拠点の宿舎で暮らしてたんだよ〉
〈魔狼討伐に参加して
〈紹介は良いんだね。うん、わかった〉
「デギランさん、どうもです!」
「おう、元気そうだな。しかし何故門番をしてるんだ?」
「私兵の殆どを魔狼討伐に回したいみたいですよ。そんで外から呼んだアタシ等は都市内で雑用ですよ~」
腰まで伸びた黒髪と黒目で、快活な印象をもつ女性だ。
「来た人みんなが討伐隊に入るってわけじゃなかったんだ」
「うちんとこはエースのジェイルさんだけ引き抜かれて、他は見回りとかやってたはずだよ。せっかく来てやったってのにさー」
「参加資格はジェイルだけという事か。他の、ダイナーやソルスタッドはどこに居る?」
「北側で見回りとかだったかな。部署が違うんで最近会ってないです」
別の門番が声をあげる。
「トアッ! 何をしている!」
「うわっ! すいません! リコー! 夕の刻には仕事終わるからー!」
怒鳴られて持ち場に戻るトア。私達は静かに入場の順番を待ち、門をくぐった。
私は予め決めておいた通過作戦で臨む。
布で身体を巻き、身体を動かさずぐったりした状態でリコリスに掲げられて通る。門兵は首をかしげる。
「それは、生きているのか? 素材じゃなくて?」
「はい。従魔です。魔物が近くに居ると葉っぱを揺らして教えてくれます」
「害はないぞ。それは俺が認める」
「ああ、デギランさんの連れってことは新人か。それならまあ良いか。通って良いぞ」
おとなしい植物型と思われるよう偽装はしてみたけど、デギランの名で木製の仮従魔証を受け取り通過できた。
デギランに知られ、従魔となった事であちこちで私の姿を晒す事になったな。こうなると出来る限り早めに
「まずはハンター事務所に寄ってリコリスの本登録を済ませたいが、それで良いか?」
「はい。でも先に騎士団駐屯地へ行ったほうが良いんじゃないですか?」
「駐屯地に何時まで滞在する事になるか分からん。宿を取るにも正式なハンター証と従魔証があるほうが良いだろう」
「あ、そうですね。それじゃあ先にお願いします!」
ハンター事務所は南側外門をくぐってすぐ右手側にある役所の中にあった。
役所の受付は混み合っているけど、ハンター管理事務出張所と書かれた受付ではのんびりと茶を啜る受付女性が一人居るだけで順番待ちの列はない。
デギランとリコリスは受付でハンター証を提示する。
「デギラン様、お久しぶりですね。そちらは新人さんかしら。はじめまして受付のクノセです」
「見習いハンターのリコリスです。本登録をお願いします!」
「リコリスの本登録を頼みたい。証人はハンター狩猟拠点管理職員デギランだ。それと従魔の登録も頼む。リコリス、みせてやれ」
「あ、はい! この子です! タルテって名前です!」
そのあと本登録において名前の変更は無いか、調教士の資格はあるか等の質問を受ける。
調教士の資格は取引や育種に関わるので牧場主や御者が持つことが多い。
ハンターなら従魔オークションを利用する際に必要になる。
魔獣使いのハンターとして活動するのなら有資格者のほうが魔獣使いとして信用度は高い。
「それじゃあ、ちょっとそこの椅子に座って待っててね。今は混んでないからすぐ済むわよ」
受付のクノセさんは木製のハンター証と仮従魔証を持って奥の扉の先へ。ガチャンガチャンと何度か音を鳴らすと戻ってきた。
「これが新しいハンター証と従魔証、これは従魔用ネームタグね。どちらも再発行には費用がかかるから、無くさないようにね」
「はい! ありがとうございます!」
リコリスは自分の名前が打ち込まれた鉄製のハンター証と従魔証、ネームタグを受け取る。
鉄製のハンター証は見習いからの昇格を象徴する。
ハンター証には表に名前『リコリス』と識別番号、裏に発行された都市名と日付。
従魔証も表に名前『リコリス』と識別番号、裏に私の情報『植物型従魔:タルテ』。
ネームタグは表に『タルテ』、裏に『主:リコリス』と打ち込まれている。
リコリスは正式なハンターとなり、私は公式にリコリスの従魔となった。
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