3-4 余談(3)
私には王子様がいる。
あの日私を見つけて声をかけてくれた時から、ずっとずっとその王子様を見てた。
その王子様は私と同じ中学に通っていた。運命だと思った。
何度も助けてくれた。気のせいじゃない。
王子様もきっと私だから助けてくれるんだ。
王子様は恥ずかしがり屋だから毎回初対面みたいに会話はなく助けてくれたら去っていってしまうけど、私には分かる。王子様にとっても私がお姫様なんだって。だって困っている時に絶対助けてくれるもの。
王子様の方が1つ年上だから先に高等部に上がってしまった。敷地は離れてるけどうちの学校は中高一貫だから会えなくなる心配はしていなかった。
なのに、おかしい。
王子様は、いつも私を探してくれていて、だから私のピンチを助けてくれていたのに。
何でだろう、あれから1回も王子様が会いに来てくれない。
何かあったのかな?いつもそばにいるあの軽薄そうな男が邪魔するのかな?
もしかしてだけど、中高一貫と言えど高校に上がるためには試験があるから、私の受験の邪魔しないようにって思ってるのかな?
きっとそう。今もきっと、私に会いたくて会いたくて仕方がないはずなんだ。
待っててね、すぐに私も高等部に行くからね。
王子様の応援もあって無事についに新年度が始まった。やっとまた気軽に会えるって思って、女の子から動くのはちょっと恥ずかしかったけど放課後すぐに王子様の元へ行った。
すると王子様は新任教師に迷惑をかけられていた。その教師も王子様と昔から知り合いだとかで随分馴れ馴れしくて見ていられなかった。
しかも後をつけると、あろうことか、邪魔な男女を4名も王子様の周りに集めていた。その4人のせいで王子様は私に会いに来ることが出来ないみたいだった。
可哀想な王子様。姫とこうして引き裂かれてきっと王子様も悲しいよね?
だから王子様が私に声をかけやすいように、王子様の家を出る時間に合わせてそこら辺にいたおじさんに声をかけて準備をした。
予想通りやっぱり王子様は来てくれた。私の声だってすぐ分かったみたい。愛のなせる技だよね。
王子様に相応しい人になりたくて、キャラ変を目論んでいた私は色々あるキャラの中で、会えなくて寂しかったって気持ちを含んでツンデレと言われるキャラを選んで演じてみることにした。
私の口調がいつもと違うことに戸惑った様子を見せる王子様は可愛かった。
本当はいっぱい喋りたかったけど、邪魔者がいた。足元のおじさんだけ見てればいいのに、ずっと私のこと睨んでるの。
ああ、やっぱり。こうやって周りにいる誰かがいつも王子様の行動を制限してたんだね。
大丈夫、中学の時とは逆に、今度からは私が会いに行くね。
教室に会いに行った私に一瞬で気付いた王子様。すごい、どうして分かったんだろってちょっとびっくりしちゃった。
どうしてって、当然だよね。王子様も私が会いに来るの今か今かってずっと待っててくれたんだよね?だからずっと扉に意識を向けていてくれたんでしょう?
…でも何でまだ初対面みたいに話しかけるんだろう。そう考えて私はハッとした。あの初日、後をつけて聞いていた教師から王子様が言われていた「メインヒロイン候補を見つけろ」なんて無茶振り。
私っていう運命の相手がいるのに何言ってるんだろうって思ったけど、王子様の計画が分かっちゃった。
私を、その見つけたヒロインにするつもりなんだ。だから皆の前で初対面を演じているんでしょ?
そんなことを考えていて私は手に持っていた本を取り落としてしまう。それを見て、王子様は「元のままの私が可愛い」って言ってくれた。元のまま、つまり中学の頃のままの私が好き。
自分は忘れてないよ、これは初対面の演技だよって言う事なんだってすぐ分かった。
合図しなくても王子様の言いたいことくらい分かるよ。安心してね?
なのに、おかしい。
せっかく愛を育める環境にいるのに、ほかの女共と同じように私とも距離をとる。なんで?誰かに脅されてる?
ありえないことが起こった。
王子様が、私との初めの出会いを覚えてないって言う。あの高校での再会が初めてだっていう。今は2人きりなのに。ほかの4人は別々のペアで散策をしてるから、本音で話していいのに。
ありえない。うそだ。
なにかの冗談かと焦った私は、本当は男の子からして欲しいけど、私もちゃんと好きですよって伝えるために告白した。
告白したのに、振られた?
嘘だ。
嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘うそうそうそうそウソウソウソウソ嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!
感情は大混乱なのに、頭だけは氷のように冷えていた私は
持ってきていたスタンガンを迷わず王子様…
私のハル様に当てていた。
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