2-2 馬鹿な…!情報伝達が早すぎる…!
授業中は特に何事もなくすぎた。
…何事もなくというのは微妙に語弊があるかもだけど。板書のミスをひとつ残らず見つけて指摘する九条くんが強すぎたって話なんだけど…国語の授業では先生の記述の模範解答を「美しくない」と一蹴し、自分の解答を解説し始めたんだけど、あまりの出来の良さに先生含めてクラス満場一致で九条くんの勝ちというジャッジが下されたのだった。
…噂で8組の授業にて九条くんが原因で先生が泣いたとか、とある先生が弟子入りしたとか聞いたけど…マジだったのかぁ、と今更ながら思う。
そんなこんなで九条くん無双が明けて、休み時間。
嵐、再び。
「九条先輩ずるい!」
「九条ずるいぞ!」
河合ちゃんと陸前くんが謎の席替えを強行した九条くんの噂をききつけて教室までやってきてしまった。
まーた視線集まっちゃうからぁ!
ちなみに朝の騒動の時もそうだが、こういうタイミングで上手いことクラスメイトに溶け込むように僕の傍から離れるのが晋太という男である。友達やめようかな。
「陸前先輩はまだいいじゃないですかぁ!萌なんて学年も違うから中々会いにも来られないんですよ?フェアじゃないです!」
「フェアとかないわよ?それを言うなら前々から春くんと知り合いだったという一点において、もう河合さんが一番フェアじゃないわ。逆の意味でね?」
「浅木先輩に話してないですー!」
当然のように浅木さんも増えてしまうね。かわいい女の子たちが言い争いをしているのは見ていてどうしたらいいか分からなくなってしまいチキンな僕は視線をさ迷わせながら休み時間が過ぎるのを待つことにする。
陸前くんは九条くんに
「俺も席替え頼む!」
と拝んでいるけど
「俺に何のメリットもない」
などとにべもなく断られている。僕もこれ以上教室の人がなんの罪もなく島流しに遭うのは避けたいので、陸前くんには何卒隣のクラスで頑張って欲しい。
そんな男子2人の会話を聞いている間にも河合ちゃんたちの話も進んでいたようで急に「はるちゃん先輩!」と声をかけられて思わず「はいっ」なんて返事をしてしまう。上級生の威厳なんてなかったんや…。
「もうこうなったらはるちゃん先輩が留年して萌と同じ学年になるしかないですっ!留年してくださいっ!」
「いやぁそれは無理かな!」
その予定はないのでしっかり断る。そもそもうちはそこまで裕福じゃないのだ。余計な金はかからないに限る。
そこに浅木さんたちの訳の分からない追撃も入る。
「もしそうなったところで私も留年するから何も問題ないのだけどね?」
「俺も主君の傍を離れるわけにいかないしなぁ。喜んでもう1年ご一緒するよ」
「1年2年の留年など国宝を隣で見る権利と比べれば些事だ。当然、俺も残る」
え?僕1人にこんな人数の行く末がかかってんの?怖い。いや留年する気は更々ないけども?怖いものは怖い。
「…というか意外ね河合さん。あなたは春くんの家を知っているのだろうし登下校に付き纏うんじゃないかって心配してたんだけど、杞憂だったようで安心したわ」
…チラッと陸前くんを見る。グッドスマイルを向けてくる。違う、そうじゃない。
「俺のは付き纏いじゃなくて護衛だから」…そんな声が聞こえるようだ。
浅木さんの言葉を聞いて一瞬動きが止まった河合ちゃんは少し嫌そうな顔をしてため息をついた。
「はるちゃん先輩の家には天敵がいるんですぅ…あの子さえいなきゃいくらでも突撃するのに…」
そう、何故か河合ちゃんは妹の鳴海と死ぬほど反りが合わないらしい。しかも妹の方が強いらしく昔は毎回半泣きで「覚えてなさいっ」などと言って帰っていったものだ。
妹もマイペースな子だし河合ちゃんもいい子なのに、不思議なこともあるんだなぁという気持ち。
「ところで春色」
「ん?」
ふいに陸前くんに声をかけられ、
「あれ、昨日の女子生徒じゃね?」
指さされた教室の入口を見ると、
「あっ、」
「!!」
バッチリ目が合う。向こうの子の方が相当びっくりした顔をしていた。
確かにそこには昨日の下校中助けた、あの女の子が立っていた。
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