決意

◇◇◇◇



 なんで俺のデートに敵として戦った魔法少女がいるんだ? しかも一人消えたし。「ちょっとソフトクリーム買ってくるね!」と言って、急に走り出した魔法少女の片割れ。

 愛華の呼び止める声も無視して、猪かよ。それから少し経ったら「戻らない」だけの簡素なメッセージを律儀に寄越すサプライズも完璧だ。


 そのスマホのメッセージも見て、固まってしまった残された方の魔法少女。それを見かねた愛華は、ちょんちょんと俺の肩を叩き、「今日は、ね?」と、コテンと首を傾げて、柔らかく眉を垂らされれば、俺に断るという選択肢は無くなる。


 俺は「ん」とだけ返し、残された魔法少女ルナも一緒に回っても良いと、そう了承する。すると愛華は「ありがとう」と一言いって、ルナに駆け寄った。


 まぁ俺は愛華が楽しめればそれでいい。愛華はルナと楽しそうに話している。



 それでもデートプランは継続中であんまり体力を使うことはしない。二人でアトラクションでも乗ってこればいいと提案してみたが、拒否された。それは違うらしい。


 数時間と、俺たちは三人で遊園地内の雑貨屋や、土産屋を冷やかして、食事処に寄ったらオススメを一つを選び、分け合って食べた。出店も巡った。


 ルナも最初は気まずい雰囲気があったが、愛華のリードもあり、今では笑顔で楽しんでいらっしゃる。


 設置してある大きな地図を見ると、ここが遊園地の最深部だということが分かる。遊園地に入って随分遠くまで来た。俺も楽しんでいたということか、ここに来るまでの時間は一瞬だと感じるほどに時間を忘れて楽しんでいた。



 半周終わって、あと半分も残っている。まだ楽しめそうだ。と、そう思っていると、急に地面が揺れ、出入口の入場ゲートの方向から特大の爆発音が響いてきた。


 沢山の花火が一度に爆発でもしたような音だった。


 周りの人も入場ゲートの方向に視線を向けている。


 パレードの音かとも思ったが、それにしては物騒な音だった。イベント事じゃ無さそうだ。


「何かあったのかな」


 愛華が心配そうに眉をひそめる。また野良の怪人が暴れているのか? それは大いにあり得る。悪の組織のスケジュールにはこの遊園地を襲う予定なんてなかった。


 ここには身体的に怪人型の客はいない。入場制限があるのだ。こういう怪人と人間を区別する施設は野良の怪人の標的になりやすい。


「勇、アンタは何か知らないの?」


 ルナの言っていることも分かる。バイトのお前なら知っていないとおかしいと、そういう話だ。


「知らないな」


「そう」


 案外物分りは良いらしい。ここで口論したとしてもあまり意味はないんだけどな。


「原因を知りたいなら、この目で見るしかないな」


「それもそうね」


 俺が走り出すと、愛華とルナも付いてきた。



 走り出して数分経つと、悲鳴を上げる人たち、逃げる人たちが見え始めた。


 やっぱり野良の怪人か。


 そう思った、その時に、空を上昇していく怪人の姿が見えた。


 その怪人は大きくて、凄く見覚えがあった。



「ダルマジロン先輩!?」


 観覧車よりも高く、空を浮遊しているダルマジロン先輩。この距離からでも分かる。あの大きな怪人はダルマジロン先輩だ。


 誰かと戦っている? いやそれより。


 ダルマジロン先輩が野良の怪人? 嘘だろ。



「生きてるなら生きてるって言ってくださいよ、馬鹿野郎ッ!」



 しかも野良の怪人やってるって、どういう冗談ですか。これは会った瞬間に顔面パンチだな。


 俺がダルマジロン先輩の目を覚まさしてやる。






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