暴風と炎
「お前のせいでオラも甘い考えに当てられたわ。でもな……こっちだって退けん理由があるんやで」
「キラが手伝うって言っても、その退けない理由は消えてくれないの?」
ダルマジロンは寂しそうな目をキラに向けた。
「……そうやな」
「そう」
キラの短い言葉に、ダルマジロンは、ジリッと、両足に力を溜める。
キラもキラを起点に光の道がダルマジロンに向かって伸びる。
ブレイレッドは左手の人差し指のリングに闘志を込める。するとリングが大剣に姿を変えた。
「ちょっとお喋りが過ぎたわ」
全員が構え終わると。
「行くで」
ダルマジロンはそう言うと、目の前に向かって正拳突きを放った。
その意味無い光景を見て、次はこっちの番だと、キラはダルマジロンの懐へ飛び込もうとしていた。
その時、ブレイレッドとキラが暴風に煽られながら視界を奪われる。
「クッ!」
「なにこれ!?」
衝撃波による風の刃がブレイレッドとキラを襲う。
ブレイレッドとキラは風の刃で傷を負いながら、暴風で後ろに飛ばされないように、その場でとどまっているだけで精一杯な状況だ。
暴風が止むと、キラの目の前からダルマジロンが消えていた。
どこに消えたと、キラは周囲を確認する。
「上だ!」
そんな中、ブレイレッドがダルマジロンの居場所を言い当てる。
ダルマジロンはすで振りかぶっていた拳を空中で放った。
上からの衝撃波と暴風に為す術なく、キラとブレイレッドは膝をつく。
ダルマジロンの巨体は、相当な威力の正拳突きの余波で落ちては来ない。それを利用して再度ダルマジロンは拳を振りかぶる。
「このままじゃ」
地面は衝撃波に押し込まれて軋みをあげている。この衝撃波の範囲内ではキラの光速の足も使い物にならなかった。
ピン、ピン、ピンと、キラの隣から聞き馴染みのない音が聴こえてきた。視線をブレイレッドの方に向ける。その音はブレイレッドが持っている大剣から発せられていた。
「僕もパワー勝負なら負けないよ」
ブレイレッドは身体から溢れた闘志を大剣に送ると、大剣は一定の間隔でピン、と音が鳴り、大剣の備え付けてあるメーターのカウントが溜まっていく。
ボウッ、と大剣の刀身から炎が灯るように現れた。
「オォォォォオオオ!!!」
ブレイレッドは大剣に現れた炎を確認して、暴風と衝撃波の中、雄叫びを上げながら立ち上がる。そしてダルマジロンを視界に捉えながら大剣を上段に構えた。
「少しはやるようやな」
ダルマジロンはそんなブレイレッドに感心して、再度放つ拳に力を溜める。
「灯火の炎は大きく、大きく、さらに大きく!」
大剣のメーターが最大になると、ピンピンピンピンッ! と音の鳴る間隔が早くなる。
「己が正義の心を炎として、この場に顕現させる! 燃え上がれぇ!!!」
ブォンとブレイレッドがいる所を起点に、円状に、炎が燃え広がった。
キンッ! と、大剣の音が止まる。
『
上段から一直線に振り下ろした大剣。斬撃は、半円の炎になり、そこから炎は龍の形に姿を変え、暴風を物ともせず、ダルマジロンへ斬撃と共に切り進む。
ブレイレッドが暴風を攻略したが、ダルマジロンに動揺は無い。すぐにダルマジロンは正拳突きを放つ。だが、ガンッ! と、何も無いはずの空中で、正拳突きが止まる。
「これを使わんと、オラもやられそうやな」
正拳突きが止まった所から、ピキピキと亀裂が入った。さらに拳を振りかぶり、亀裂に向かって殴る。
『
パリンと亀裂が割れて、正拳突きが貫通すると、視認出来るほどの濃い空気の渦が巨大な拳となり出現した。
巨大な拳と炎の龍が激突する。
必殺技と必殺技のぶつかり合いで、放射線状に衝撃波が飛び交い散っていく。
「オラァァァァアアア!!!」
ブレイレッドがさらに大きく雄叫びを上げる。
「なんやとッ!?」
巨大な拳をぶち破り、炎の龍はダルマジロンに迫る。
腕を顔の前に持ってきて、守りの体勢に入ったダルマジロン。だが、炎の龍も力を出し切ったのか、暖かい風になり、ダルマジロンを通り過ぎていく。
「びっくりさせんなや」
ダルマジロンは腕をどかして、守りの体勢を解いた。そしてすぐ近くにいたキラと目が合う。
キラは上から叩き潰すように拳を構えていた。
「マジかよ」
『フラッシュ・いんぱくと!』
ピカッ! と輝いたキラの拳は誰にも反応できない。観覧車すら見下ろせる空中にいたダルマジロンは、キラの拳が頬に当たった瞬間に、地面に、叩き落とされていた。
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