都合の良い平和
「さっさとこの怪人を片ずけるよ」
仮面を被った瞬の身体が赤のスーツに変わる。すると頭上に赤色の鮮やかな光りが現れて、その光りが渦巻く。その光りの中から肩、胴、手足のプロテクターが放出されて瞬の身体に装着された。
プロテクターを出し終わると、頭上の光は消えて、ピシャンッ! と音が鳴り、変身は完了した。
「真っ赤な情熱の炎は悪に染まらず、誰もが悪に理不尽に傷つかないために力を振るう。この僕が正義の味方であるために!!! 闘志の戦士ブレイレッド!」
口上を言う瞬の周りには、赤色と黄色の綺麗なエフェクトが舞っていた。
瞬が人差し指の指輪に闘志を込めると、ブレイレッドの左右に青、緑、ピンク、黄色の燃え盛る炎が現れる。
「戦隊ヒーローブレイジャーズ!!!」
戦隊の名を言うと、左右に並んでいた燃え盛る炎は光り輝き、ブレイレッドの指輪に吸収された。
グッと握りしめた左手をダルマジロンに向け、口を開く。
「君の悪事は僕が絶対に許さない!」
「瞬さん、戦隊ヒーローだったの!?」
キラは驚きと共に声に出す。
「そうだよ。僕も驚いた、まさかキラちゃんが魔法少女だったなんて」
ブレイレッドとキラの話を邪魔するように、ドンッ! と、空気が震えた。
「殺しをしている怪人から目を離しちゃいかんな」
割れた地面から持ち上げた拳。その拳に付いていた破片がパラパラと落ちる。
「ダルマジロンさん」
「お前らは本気の怪人と戦ったことはないんやろ」
ダルマジロンの言葉を聞いて、ブレイレッドから殺気が溢れる。
「おっ!?」
その殺気に驚いて、ダルマジロンは声を漏らす。
「ブレイレッド、お前は出会ったことがあるんやな。ごっこ遊びじゃない怪人に」
「ッ! 遊びとか、本気とか、そんなの関係ない! 僕が君たちを倒せば、全てが平和に終わる」
「その怪人を倒せば全てが上手く終わるって考えが、この終わりのない
「何を言っている。君たちが平和を乱すから、この人と怪人が殺し合う無駄な争いは無くならない」
「お前らは平和平和言うけどな。お前らの平和は、お前らに都合のいい平和やろうが」
「都合のいい平和でいいじゃないか。今日仲間と一緒に遊園地で遊びたい。そう言う平和の何がいけないんだ!」
ブレイレッドの平和を聞いて、ダルマジロンはうんうんと頷く。
「そうかそうか。何もいかんくない。ただオラも、今日仲間と、家族と一緒に遊園地で遊びたかっただけやで」
「な、何を……」
お互いに考えている平和が一緒なはずなのに、なんでここまですれ違うのか分からなかったブレイレッドは、続く言葉が出なかった。
「今から始めるのはいつものような悪の怪人と正義のヒーローとの戦いじゃない。本当の殺し合いや。
そこには悪と正義なんて関係ない、勝った方が正義の戦いや」
ダルマジロンはため息を一つして、キラに視線を向ける。
「これはオラの我儘や、聞いてくれるか。オラを気遣ってくれた魔法少女のお前を殺したくはない。逃げてくれるとありがたい」
「逃げることは出来ないよ。キラが退いたらここにいる人たちを殺すんでしょ」
「あぁ」
ダルマジロンはキラの問いに真剣に答えた。
「じゃ無理だよ。ダルマジロンさんにも、もう人を殺して欲しくないからね」
キラの言葉にハッとなるダルマジロン。
「やりにくい。あぁまったく。まったくな」
清々しい受け答えにダルマジロンの口角が上がった。
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