猫の手
「月の魔法少女ルナ」
俺は月の魔法少女ルナと戦ったことがある。キラがルナと姉妹の関係なら、キラが人造人間増田先輩を睨んでいた理由が分かった。
ルナは人造人間増田先輩が辱めた魔法少女の一人だ。トラウマも克服することも無く、トラウマを力に変えることもなかった一人でもある。人造人間増田先輩に負けたあと、トラウマを抱えて変身ができなくなったと聞いていた。
それが今、俺たちの前に立って、堂々と変身している。しかもだ、前に戦った時は、背中から生えた雷の翼とか、姿もこうごうしくなかった。
え〜と、
ルナが俺ら雑魚敵たちを見渡す。すると、身体がピリピリと痺れて動けなくなる。俺の視界に入っている雑魚敵たちも、身体から紫色の雷が這い出ていて、ピクリとも動かなくなった。
たぶん俺もハタから見たら同じようになっているだろうことは想像が着いた。
ルナはこの場にいる敵、全員を生きて返さないという意思を感じる。
「グへへへへ、お前も触手の餌食にしてやるぜ!」
俺の視界に入っていた人造人間増田先輩のベージュのスーツが破け、人の形をしていたスライムが人の形を崩し、地面に撒き散らしていた無色化していたスライムを吸収しながら巨大化する。
この人造人間増田という怪人は基本的にエロいことしか考えていない。
人造人間増田先輩は戦いの勝敗は関係なく、魔法少女にエロいことを出来ればいいと、悪の組織では珍しい考え方の持ち主だ。
今日は魔法少女にエロいことをした。それだけの戦果で満足するような怪人だ。
そんな人造人間増田先輩が奥の手である巨大化をしているということは、人造人間増田先輩の本体はもうこの場にはいない。
それはもちろん雑魚敵の俺たちは知っている。そして俺は雑魚敵連中が思っていることも分かる。俺も同じことを思っているからだ。
『あぁまたアイツ逃げやがったな』と。
人造人間増田先輩が逃げたということは、バイトの俺たちも迅速にこの場から逃げなければいけない
でもビリビリ、ビリビリ、と、河川敷の周りを紫色の雷が囲んていて、雷のフィールドが出来上がってる。フィールドに阻まれて、歩きではまず逃げられないだろう。
ずっと手に持っていた転移石を起動されたら、俺だけはすぐに更衣室へ帰れる。
俺は俺自身が逃げることよりも、キラに倒されていた雑魚敵連中が心配だ。魔法少女の服が溶けるシーンを見たさに、血を吐いてまで居残る馬鹿どもだが、コイツらも俺と一緒に命を懸けてきた仕事仲間だ。助けれるなら助けたい。
助けるにしても、俺の身体の動きを妨げている痺れを何とかしないと、馬鹿どもを助けたくても、助けることができない。このままでは馬鹿どもがルナに殺されるのをただ見ていることしかできない。
でもどうすればいいんだ。俺は怪人になりはしたけど、俺の身体能力はほとんど上がってない。筋肉に力を入れて、痺れを弾く! とか、化け物じみたこともできない。
完全に万事休すだ。コイツらを見捨てて、俺だけ生き残るのか。
俺も馬鹿の一人として思うが、それはなんか嫌だな。
「にゃ〜」
左肩に微かな重みと、間の抜けた猫の声が聞こえた。
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