第9話 院長さんとビジネスを
院長室は、とても豪華だった。
それでは、執務が出来そうもないだろうと思える椅子に座った初老の男が、化粧の濃い秘書をキャバクラの女よろしく膝の上に乗せている。
腰巾着の医者らしい者が1人。ここには、似つかわしくない柄の悪そうな男が、もうひとりいた。
「君は、この病院に入院していた、狸山先生と百合さんに接触しているね。しかも2人共に死ぬ直前だ」
院長なのに、この男もう少し言い方がないのか?
「どういう理由だったのかね」
どうやら2人共に秘密を守ってくれたらしい。
「残念ながら守秘義務があるので、言えません」
すると柄の悪い男でなく、白衣の腰巾着が、詰め寄ってきた。
「院長がじきじきに尋ねているのだぞ。答えろ」
胸ぐらを掴んできたので、小指を捻って外そうとした。
ポキッと良い音がして、折れてしまった。
もちろん折る気は無かった。悪い事をしたと思い、掴んだ彼の右手を引き寄せ机の上に置き、テーブルにあったガラスの灰皿で、右手を砕いた。
彼が外科医なら、2度とメスは、握れないだろう。
白衣の彼は、ギャーギャーと五月蝿かったので、ガラスの灰皿で、顔を潰した。
「すぐに治療すれば、死にはしない」
あまり自信は無いが、言ってみた。彼らは医者なので、釈迦に説法かも知れない。
柄の悪そうな男が、拳銃を出したので、灰皿を投げつけた。何とかまともに当たる事を避けた。
凄い運動神経だ。
灰皿には、青い炎を乗せておいた。
霊道にある炎だ。
かすめた灰皿から炎が、男に移動して、彼を包み込んだ。
男の魂が、無条件に、自身の犯してきた罪を彼の脳内で、リプレイしだした。
人は、自分自身の犯してきた罪に連続してさらされると耐えきれなくなる。
彼の拳銃は、彼の手を離れて2度と彼の手に握られる事は無かった。
院長に向き直る前に、秘書が襲ってきた。
長い足で、鋭い蹴りを入れてきたが、今の僕には、スローモーションにしか見えない。
軽くかわすと、平手のバックハンドで殴った。壁までフッ飛んだ彼女も青い炎に包まれる。
「院長、僕に対する落とし前は、どうつける気でしょうか?女性にまで乱暴な事をさせて、大病院の院長とは、思えませんね。何ならここで廃人になりますか?」
院長は、土下座をして、助けてくれと言った。
「まあ、座りましょう。僕は、ビジネスの話をしにきました。警察ではないのだから、院長さんが政治家にどんな理由で、優遇されようが、入手先の言えない臓器移植をしようが、僕には、どうでもいい事です」
「それをどうして」
院長は、自ら告白してしまった。僕は、ICレコーダーを取り出して、院長に見せた。
「すみませんね。スイッチ切り忘れてました。今の会話全て録音してしまいました」
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