第十章~光、今満開に咲き誇れ~





セブンスターとplusαの誘拐事件から2週間が経過し、彼女たちの身の回りも多少ながら落ち着いてきた、 今回の計画の中心でもあった恭也は、大和に脇腹を刺され病院に搬送、一命は食い止めたが、まだ病院からの退院許可が出ていない。









今のままでは2マンをやることが出来ず、事務所を畳むしか方法がない、それでは大和と一輝の思惑通りになってしまう、しかも未だにグループに対しての誹謗中傷も消えておらず、ライブに出た時点で、彼女たちを危険に晒すことになる。









このままライブも行わず、事務所を畳んでしまって、また1から自らの人生をやり直そう、そう思っていた恭一郎に、病床の恭也から励ましのメッセージが送られた。










【お疲れ様です、色々心配をおかけしてしまい申し訳ございません、CASIOPEAのメンバーも光咲キ誇レのメンバーも、恭一郎さん含めてのスタッフの皆さんも、今一番苦しんでる時期だと思います、私も脇腹の怪我を治して、早くみんなの2マンを観たいのですが、どうしても病院側の許可がおりません。


本当に悔しいです、泣いてる日も多く自分が情けなく思うときもあります、そんな自分にCASIOPEAのメンバーは【私たちは大丈夫、最初は不安はあったけど、今は2マンを成功させることが乾さんに向けてのエールになるのかなと思いながら、毎日練習に明け暮れています。ですから心配をせず、私たちを信じて見守ってください。】とこんなメッセージが送られてきたこともあります。


最初は社長を失墜させる目的だった2マンでしたが、今は彼女たちの夢を叶え、次のステップに進ませるための2マンだと思っております、どうか、彼女たちの夢を諦めさせてしまうような行動だけは取らないでほしいです。会場と日にちは私の方で取らせていただきました。恭一郎さんは当日の指揮をお任せします、よろしくお願いします。】










このメッセージを読んだ恭一郎は、(恭也さんとCASIOPEA、光咲キ誇レは逃げることすらしなかったのに、逃げようとばかり考えるようになった俺ってなんて情けないんだ、だったら当日最後までやりきって、光を満開に咲き誇ってやろうじゃねえか、このライブ終わりにどうなろうと知ったことじゃねえ、やらずに後悔すらやって後悔してやるよ!!)と思いながら、ライブ当日までの日々を過ごした。








ついに運命の2マン当日、万が一に備え警備員を配置してもらった、CASIOPEA側は前日までに恭也のメール指示のもと、5人のスタッフの配置を行い、光咲キ誇レ側も恭一郎と陵介の指示のもと、4人のスタッフの配置を行った、このライブにはRYUICHI本人と兄も来ていた。








ライブ本番30分前、ファンの入場が開始された、光咲キ誇レのデビューライブでメイン現場を鞍替えしたりょーいちと進藤、その後の配信や個人でのライブで推してくれた人、CASIOPEAのヲタク、何度もお世話になったスナックのママ、メンバーの親御さんや友達、その他にもライブ情報を聞き付け駆け付けてくれた人、全て合わせるとざっと250人、更に誡南からの提案でこのライブをSHOWWITHで配信することを決め、その配信には150人の視聴者がいて、そのうちの1人に恭也もいた。










ライブ本番10分前、恭一郎が両グループのスタッフとメンバーを集め、一言声をかけた。










【いよいよライブ本番が近付いてきた、このライブには俺たちだけじゃなく、ファンや周りの人たちの思いも背負っていることを忘れずに、しっかりやりきって最後まで突っ走ろう、正直みんなには迷惑をかけっぱなしなマネージャーで本当に済まなかった。でも付いてきてくれたこと、本当に感謝してもしきれない、ありがとうな。


だから俺からの最後の一言、悔いなくこのライブを楽しんできてくれ、さあ行ってこい!!】










メンバーを送り出した恭一郎には、その後にサプライズとしてある発表をしなければならなかった、下手をすればこの場にいる全員から非難を浴びることにも繋がりかねない、だがこの発表は恭也の最後に託す願いでもあった、だから失敗するわけには行かない。








ついに運命の2マン対バンが始まった、ライブ自体は順調に進んでいき、最高なボルテージで終盤に差し掛かっていた、そして最後のMCで、互いのリーダーから今回の2マンをやる経緯と、謝罪の言葉を述べた。








まずはCASIOPEAのまつりからだ。










【まず始めに、先日からの騒動に関しまして改めてお詫びを申し上げます。今回私たちCASIOPEAに関しましては、事務所の社長でもある大和忠正が、光咲キ誇レのメンバーに対する誤った情報、事務所に対する誹謗中傷の指示をさせておりました。


私たちの事務所で起きた今回の不祥事の責任は私たちで取らなければなりませんが、まずこの場をお借りして、お詫びをさせてください。光咲キ誇レに関わる全ての皆さん、本当に申し訳ございませんでした。


そしてもう1つ、5年前に私が当時所属していたグループでのスキャンダルと誹謗中傷、これらは全て、社長の指示だったと聞かされました、今回の2マンライブは大和社長の不祥事をMCで告白し、彼を失墜させることが目的でした。


しかしこの2マン前にマネージャーの乾恭也さんが、監禁されてた私たちを助けた代わりに、に脇腹を刺され救急搬送されました、一命は食い止められましたが、この2マンを見届けることが出来ず、今日は病床から配信を通して見ていると聞いております。


乾さんには社長から私たちがパワハラを受けていて、表では助けるそぶりをしなかったけど、裏で私たちをサポートし、今回のこの2マンに向けて、向こうのマネージャーにも私たちの過去を告白し、色々サポートしてくれました。本当にありがとうございました。】










続いてゆめ果も言葉を述べる。










【私の方から、今回の光咲キ誇レの不祥事は向こうの大和さんの計画ではありましたが、その情報を裏で流出させていたのは、私たちの事務所の社長でもある高森一輝でした。


更に向こうのマネージャーでもある乾さんが脇腹を刺された件、凶器のナイフは私たちを監禁するときに、社長が脅しとして使っていたものでした、私たちが逃げる直前に大和さんが社長からナイフを奪い、そのまま乾さんの脇腹を刺したのです。


今回の不祥事、私たちの管理不足が起こしたものであり、もう少し調べてから信用するかどうかを見極めれば良かったと後悔しております。本当に申し訳ございませんでした。


そして私からも告白したいことがございます、私を見たことがある方が多いと思われますが、私とメンバーの朱音は元々CASIOPEAの研究生として、皆さんの前で歌ったり踊ったりしておりました。


だが以前の定期ライブ終わりに社長から【お前をCASIOPEAに昇格する気は無い、便利なスタッフとして雇っていただけだ。】と言われ、今までの努力を無駄にされる一言を言われました。


そんな私を救ってくれたのが、今のマネージャーでもある明石恭一郎さんと生駒陵介さんでした。その定期ライブでの出来事を隣で見ていたマネージャーの藤崎さんが明石さんに事細かに話してくれて、それで私たちをマネージメントすると仰ってくれました。そこに生駒さんや他のスタッフも乗ってくださり、柊葉、美音、秋穂も加わって、光咲キ誇レがスタートしました。


それから幾多のトラブルが起きても、恭一郎さんが主導となり、みんなを支えてきました。私がリーダーとして活動できているのも、全て恭一郎さんのお陰です。


そんな恭一郎さんから、皆さんに大切なお知らせがあると言うことなので、この場にお呼びしたいと思います。】










このゆめ果の言葉を舞台袖で聞いていた恭一郎の目には涙が溢れていたが、大切な発表をしなければならないため、その涙を拭いステージに登場した。










【皆さんこんばんは、先ほどゆめ果の方からご紹介に預かりました、plusαagentのマネージャーをしております、明石恭一郎と申します、今日は2マン対バンに足をお運びいただきありがとうございます。そして今回の一連の不祥事に関しまして、改めまして私の方からもお詫びをさせていただきます、本当に申し訳ございませんでした。】










不祥事に対しての土下座でのお詫びをした後、恭也から当日託された願いを、集まったファンに告げた。










【今回の不祥事は全て、我々スタッフの意識の低さが起こしたものであり、責任はちゃんと取らさせていただきます、つきましては、今回の不祥事の首謀者でもある大和忠正、高森一輝の2人に対し本日付を持って、社長職の解任、及び両事務所からの解雇通告、乾恭也はマネージャー職から手を引き、セブンスターエージェントは解散となります。


また我々、plusαagentもこの度をもちまして、事務所を畳むことになりました、そして新たに、この2つの事務所を合併し、新たな事務所として再出発を切ることとなります。これは乾さんからの願いでもあり、CASIOPEAのメンバーにもこの事を話し、了承してくれたと言うことです。


もちろん、私のこの発表に納得行かない人が多いと思いますし、ショックで立ち直れない人の方が多いと思います、でも責任を取り新たなスタートを切ることで、今までのグループを更に上へ引き上げていくことも可能なんじゃないかと思います、どうか彼女たちのこの再出発を見届けてあげてください。これからもよろしくお願いいたします。】










この恭一郎の一言の後、割れんばかりの拍手が会場から起き、SHOWWITHにも称賛を称えるコメントが殺到した。こうして、運命をかけた2マン対バンの本編が終わり、物販に移った、予想以上にファンが詰めかけ、1時間で終わる予定だった物販を急遽2時間に伸ばし対応に当たった。








こうして全ての予定が終わり、帰路に付こうとしていたメンバーとスタッフたちに、ファンから花束が贈られ、CASIOPEA、光咲キ誇レ、両グループのメンバー全員には、溢れるばかりの涙がこぼれていた。










これで再出発に向けて新たなスタートを切ることが出来る、光は今、満開に咲き誇りつつあった。









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