第九章~裏切りとピンチは、乗り越えてこそ面白い~
【一輝さん、あんた本当に何してるんだ?何も罪のない彼女たちを捕まえて、俺は今まであなたを頼ってたから、今回の危険な行動に巻き込ませないようみんなを託したのに、何故こんなことを?】
恭一郎の悲痛な叫びに、一輝はこう答えた。
【ふん、恭一郎さんよ、最初に会った頃からあんたの偽善者ぶった姿は全く気に入らなくてな、今まであんたの前にいた俺は全てフェイク、本当の俺は大和さんの忠実な僕なんだよ。
そして今回のこの密談を大和さんに流してただけじゃなく、その前に恭也さんが事務所に来て相談したこと、光咲キ誇レのデビュー前の情報、それらを全て大和社長に流したのも俺。
更に、秋穂があのレッスンスタジオで個人レッスンを受けていたことも、遅刻に対して朱音がキレたことも、全て大和社長に垂れ流したのさ、そのおかげでグループの絆が深まっちまったのは誤算だったが、ほぼ俺と大和社長の計算のうちだったよ。】
【なるほどね、だからあの場所で騒ぎを起こすことも出来たわけだ、でも一輝さん、あんたと大和社長との関係はなんなんだ?そもそもあんたはなぜ大和社長の僕になった?】
恭一郎からの質問に対し、一輝はなぜ大和のことを知ったのか、なぜ光咲キ誇レのデビューに関わるようなことをしたのか、事細かく語り始めた。
大和と最初に出会ったのは5年前、まだ19歳だった一輝は、高校までろくな人生を送っておらず、大学にも行くことをせず、ぐうたらな生活を送っていた、そこに支援を出したのが、当時まだ芸能界で駆け出しではあったが、急激にその名を広めていた大和だった。
大和は、今の状態を抜け出したいなら、俺の言うことを聞いて指示に従え、その分の報酬はたんまり出すと一輝に諭し、そこから大和の工作員として活動を始めた、そしてplusαの社長として、光咲キ誇レに関わることになったときも、大和に全て伝え、一輝が指示通りにことを運んでいった。
そこで最終手段として、今回の2マンをやることを泳がせといて、CASIOPEAと光咲キ誇レ、両グループのメンバーとスタッフを拉致し、2マン対バンを大失敗に終わらせる、例え監禁場所がバレたとしても、そこで次の作戦に移れるようにする、大和の目論見通り動き成功するように、恭一郎たちよりも二手三手先を読み行動していた。
だが、恭一郎の表情は逆に晴れやかだった。そして大和と一輝にこう言い放った。
【なるほど、そう言うことだったのか、それなら全て納得行くわ、恭也さんも俺も陵介も、所詮はあんたらの手の平で踊らされてたってことか、でもな、ここまで全てが成功だったとしても、最後の最後に大どんでん返しがあれば、全てが失敗に終わる、そしてその失敗は既に始まってんだ。】
この言葉を聞いても、大和と一輝は全く理解せず嘲笑っていたが、次の恭一郎の言葉で、全てを悟ることとなった。
【俺が何の策も無く、ただ無闇に突っ込んできたと思っているのか?だったら何故今この場所を特定できたと思う?俺のとなりに居る光さんがとある情報を手に入れてここまで来た、それにこの場所とあんたらの事は全て涼平さんがさっきのやり取りの最中警察に連絡させてもらったのさ、一輝さんが裏切るとは思ってもいなかったが、裏切りやピンチは乗り越えてこそ面白いって言うだろ。】
その直後、パトカーが現場に到着し、大和と一輝の身柄を抑えようとした、だが暴走した大和は一輝からナイフを奪い、恭也の右脇腹を刺したのだ。
その瞬間、女性たちからの悲鳴が上がった。直ぐに大和、一輝、数人の男たちは身柄を確保されたが、刺された恭也は重傷で、辛うじて喋ることが出来るほどだった、恭一郎は恭也に駆け寄り、強い口調で語りかけた。
【恭也さん、あんたはこんなところで死んではいけない、あんたの夢はどうなる?救急車ももうすぐ駆け付ける、絶対助かるから大丈夫だって。】
恭也は息を潜めながら、恭一郎に思いを語った。
【頼む...この2マンを成功させてくれ、そして俺の代わりにこの子達をしっかり守ってあげてほしい、数日前に会ったばかりなのに、恭一郎さんに、こんなことを頼むなんておかしいと思うのにな...】
その直後に救急車が到着し、恭也は病院へ運ばれた。そしてその場で泣いていた全員に対して、恭一郎はこう語った。
【この2マンを絶対成功させよう、大和の事とかは関係ない、恭也さんのため、そして待ってくれてるファンのために、最高のライブを届けること、それが今のお前たちにやるべき事だ。
もう時間はない、今こそみんなの力で、アイドルの本気を見せ付けてやるんだ!!ピンチは乗り越えてこそ面白さがあるんだ。この最大の山場、乗り越えてやろうじゃねえか!!】
この一言で全員の闘志に火が灯った、いよいよ全てを懸けた2マンがスタートする。
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