第七章 ~語られた真実 彼女たちの心変わり~




いよいよ、セブンスターと、plusαによる密談が行われようとしていた。









plusα側の参加メンバーは、恭一郎、陵介、一輝、和奏、美樹、誡南、夕凪、この7人のスタッフに加え、光咲キ誇レのゆめ果、朱音、柊葉、美音、秋穂、計12人が参加することとなる。









プロデューサーのRYUICHIにも参加してもらえないかと訪ねてみたものの、RYUICHI本人は、大和の動きを察知するため、この会談には参加しなかった。








一方セブンスター側のメンバーも、恭也の他にCASIOPEAのまつり、さと美、ひなた、汐里、さき音に加え、スタッフの髙岡あずさ、 濱田光、松田涼平、佐藤紫音、大下優花の計11人が参加することになった。










午後6時半、用意したレンタカーで店の前に着き、車を駐車場に止めに行ってる間に、plusα側のメンバーがそのまま入店した、その15分後、セブンスター側のメンバーも到着、スナックはそこから貸し切りの看板が掛けられ、いよいよ会談がスタートする。








まず1時間は互いのメンバーの自己紹介と、雑談のタイムを作り、コミュニケーションを取っていく、和やかな雰囲気を作れたところで、この密談の仕掛人でもある恭也の口から、今まで体験してきた真実と、自らを地獄に追いやった大和社長のやり方を語ることになった。











【みなさん改めまして、今日はこの会談にお集まりいただきありがとうございます。またこの会談を内密に進めてくれた明石さん、大和社長に悟られないように心掛けてくれた、光咲キ誇レのプロデューサーRYUICHIさんにも感謝申し上げます。


さてこれより、今まで誰にも語ることが無かったあの日のこと、そしてその出来事に大和社長が関わっていたこと、今回の2マン対バン開催の目的を話していきたいと思います。


そちらの美音さん、柊葉さんにとっては恐怖を与えてしまうことになるかと思われますが、その覚悟は出来てるとお聞きいたしましたので、今回話させていただくこととなりました。


私は5年前、ある別グループのマネージャーとして活動しておりました、私が配属されてから3ヶ月ほどは何事もなく活動できておりましたし、ファンも増えていき何もかも上手くいくことばかりでした、しかしある日、私の人生を変える、あの出来事が起きてしまうのです。】










恭也が語った5年前の出来事とはなんだったのか。









とある日のこと、マネージャーをやっていたグループのメンバーの1人に男性とのスキャンダルがあったことがSNSで流れてきた、もちろんそのメンバーはスキャンダルに関して事実無根で、彼女自身もこの件には関わっていないと必死に訴えかけたが、恭也を始めとしたメンバーとスタッフは信じることが出来ず、そのメンバーを解雇させる。








その解雇が発表されて以来、当時うなぎ登りだった人気も、付いてくれてたファンも失い、徐々に世間や業界仲間の信頼度も失っていった。









更にその後、ストーカー被害に遭わされたり、ライブ後の物販で音も葉も無い誹謗中傷を掛けられたりで、メンバーのメンタルもチームの信頼も崩壊していきグループは1ヶ月もしないうちに解散、恭也も責任を取って事務所を辞めることになった。










当時このグループに所属していたまつりと秋穂も恭也の後を追おうとしたが、彼女たちはまだアイドルとして輝くことができる、去るのは俺1人で充分と他の事務所に話をつけ、移籍させることとなった。









事務所のスタッフを辞めて、恭也は別の会社への就活をしながら、単発バイトを入れ生計を経てていた。








3ヶ月経ったある日のバイト終わり、恭也のスマホに知らない番号の着信が入っており、調べたところ、とある探偵の事務所からかけられたものだとわかったのだ、その探偵は元々恭也とは別の芸能事務所でスタッフとして働いていたが、この一件と同様に、とあるアイドルのスキャンダルが原因でグループは解散してしまった。









この一件に納得いかず、芸能から足を洗った後探偵事務所をオープンし、この解散にはなにか裏があると睨んだ探偵が色々調べていたところ、恭也のグループの解散の出来事を知り、それが自らの境遇に似ていることから、恭也に電話をかけたのだ。










そして彼に一度事務所へ足を運んでもらい、色々と話を伺おうと思っていたとのことだった。










【乾さん初めまして、突然のお電話を差し上げたことに関して改めて謝罪いたします、実は私、元々芸能事務所でスタッフをやっておりましたが、スキャンダルが原因でグループを解散しなければならないところまで進んでしまいました、その後なんやかんやありまして今はこうして探偵として活動させていただいております。】










【それは大変でしたね、私も3ヶ月前に同じようなことが起きました、元々芸能事務所で働いておりましたが、メンバーのスキャンダルで解雇させた後、他のメンバーにストーカーや誹謗中傷が後を絶たず、結局解散という結論にたどり着きました。】











彼の話を聞いた探偵は、その後彼にこう言い放った。











【なるほど、今のあなたの話を聞いて確信を持てました、実は今日あなたにこの事務所におこしいただいた理由なんですが、今でも芸能関係のニュースを情報として受け取っており、あなたのグループの解散についても、極秘裏に調査させていただいてます。


そしてあなたのグループの解散に繋がるスキャンダルは全てでっち上げだったことが判明した訳なのですよ。】











【それ、本当ですか?もしそうだとしたら、俺取り返しのつかないことをしてしまった。くそっ、そこで気付けて上げれば、あいつの解雇を止めることが出来たのに。】












【驚くのはまだ早いです、その後のストーカー被害や、度重なる誹謗中傷などもその後ある人物から話を聞き調べてました、そして分かったことは、それらは全て、ある男が仕組み、協力役を使って実行させ、自らの利益にしようとしたと言うことでした。】










【ある男、それは誰ですか?】











【大和忠正ですよ。】












【大和忠正?もしかしてつい先日、暴力団に金銭の流用が発覚して、事務所を解雇されたって言う。】











大和はその当時から、業界内でも悪名高い人物として徹底的にマークされていた人物でもあった、事実無根の噂を流す、知り合いのヤクザに金を渡し、そのグループのメンバーに襲いかかる等、様々な悪事を働き、自ら儲けるためならどんな手段でも選ばない、極悪非道ぶりを知らしめていた。











【もしあなたで良ければ、私に協力してはもらえませんか?上手くいけば、今度こそ大和を追い込むことが出来るかもしれません。


私と弟の方で色々と準備をします、その間にあなたには別の芸能事務所で働いていただきます、色々と情報を収集しているうちに、数週間後大和があなたが働こうとしている事務所に入って来て事務所の社長にのしあがるでしょう、ただあなたには大和に従事するふりをしていただきたいのです、そして時が経ったらあなたが大和の悪事を広め、大和を失墜させて頂きたいのです。


その間あなたには色々と苦労を掛けることになると思われますが、大和と同じ極悪非道を演じながら、その裏でメンバーに対し、本来のあなたの接し方でコミュニケーションを取っていただきたいのです。】












【でももしそれで、大和にこの作戦がバレたとしたら、どうするつもりですか?】












【そのことも計算済みです、おそらくやつの事ですから、催眠術を用いてあなたを支配するでしょう、でもそれも芝居を取って、あたかもあなたが操られていることを、偽装していただく必要があります、今からその催眠術に対する、特殊な暗示を掛けます。そして大和からの指示は聞きながら、私の方に流してください。


そのための携帯をお渡しいたします。期間は長くて5年と言うところでしょうか、大和に対抗できる分子が見つかるまでですね。】












【分かりました、あなたのその考えに乗らせていただきます。】










そこから恭也は直ぐ、立ち上げたばかりとされるセブンスターに入社、その直後に恭也の話を聞いたまつりもセブンスターに入社、だが2人の入社から1か月後に大和が突如セブンスターを乗っ取り、経営に乗り出した、全てその探偵の読んだ通りの結果となった。









その事は探偵にも伝えられ、その探偵の指示のもと、そのまま催眠術に引っ掛かったふりをして、表で極悪非道を演じながら、裏でメンバーとスタッフのサポートをしていった。











RYUICHIが恭也に紹介されたのはその半年後だ、当時音楽業界で駆け出しだったRYUICHIに兄はこの事実を伝え、そのまま会ってもらう約束になっていた、RYUICHIと恭也はその場で仲良くなり、互いに連絡を取り合っては、状況を伝え合い次にどう動くかを話す、そんな間柄となった。











その後和奏が入社し、恭也は表ではサポートせずに、裏でサポートを行い、和奏を育てていった。その後CASIOPEAが結成され、まつり、さと美、汐里の3人でデビュー、その1年後に、メンバーとしてさき音、スタッフとして光、涼平、紫音が入社、更にその半年後、ひなた、あずさ、優花が入社した。










そして恭也が入社して3年半が経ったある日、ゆめ果と朱音が研究生として事務所に入ってくる、ゆめ果はセブンスターに入った当時から、抜群の才能と努力で、みるみる内に成長、朱音も隣で見ていて、その努力に衝撃を覚えたと言う。









そして恭也は、ゆめ果と朱音を裏で支え、彼女たちがどんなに酷い仕打ちされても、裏でしっかり彼女たちの活動を支えるようにしていた。









だが入社してから1年経った定期ライブ、大和に新メンバーとして迎え入れてもらえないかと頼み込むも、大和はこれを拒否し、更に酷い仕打ちで彼女たちを追い込んだ。












その後光咲キ誇レとしてデビューしたことも、恭也はRYUICHIから話を聞いていた、そして1ヶ月程経って、ようやく恭一郎と会って話をする機会を得た。









そして今日の密談、ついに恭也からこの2マン対バンの真の狙いを聞くことになる。












【今話したことが私が今まで経験してきたことです、俺とまつりと秋穂さんの悔しい出来事、セブンスターの立ち上げ直後の乗っ取り、RYUICHIさんのお兄さんの夢を奪ったこと、それらは全て、あの大和による計画によるものだったんです。


お兄さんの探偵の依頼を受けていたことで、RYUICHIさんとの出会いがあり、ゆめ果と朱音が光咲キ誇レとして活躍できていることもRYUICHIさんから聞いてました、それらを踏まえた上で今度行われる2マンの真の狙いを話させていただきます。


今回の2マンの真の狙い、それはその場で大和の悪事を全面に暴き、今までまつりと秋穂さんが味わった悔しさを出し切れる環境を作ること、そしてこのライブを持って1つのけじめをつけることです。


おそらくこの密談も、大和の手によって情報が流れる可能性はありますし、俺が味わった経験を今度は皆さんが味わうことになりかねませんし、この出来事がきっかけで、アイドルを辞めてしまうかもしれない、ファンも失い、世間の信頼も失い、俺の二の舞を食らうことも考えられます。


だから相当の覚悟がないと、この2マンは成功しないと思います、命懸けの2マン、もし賛同頂けるのであれば宜しくお願いします。】











その直後、秋穂が恭也にこう質問した。










【今の話を聞いて思ったんですが、実はわたし、光咲キ誇レとしてデビューする前に、このスナックの真向かいのスタジオで個人レッスンを受けてました、その時わたしの元ファンが押し掛け、スタジオを荒らし、レッスン仲間やトレーナーに重傷を負わせた出来事がありました。


その時は恭一郎さんが助けてくれましたが、その指示はあなたからのものだと後日聞きました、でもその指示は、大和社長からですよね?答えていただけますか?】










それを聞いた恭也は、秋穂に対しこう答えた。










【俺もその事を聞いたのは実は後に涼平からだったんだ、最近とあるスタジオに狼藉者が殴り込んでスタジオ中がめちゃくちゃになったって言うのを俺が指示したと聞いてな、俺もそれは全く知らなかったから大和に事実確認しようとしたんだ。


でもしらばっくれたから、仕方なくRYUICHIのお兄さんに聞いたんだよ、すると答えはYESで、その殴り込みの指示を俺にさせることで、社内や業界の他の事務所問わず、大和への批判を交わそうとしていたらしい。


もとは社長からの画策だったとは言え、結局俺の指示でスタジオを荒らし、レッスン仲間とトレーナーに怪我を負わせ、君を追い出すことになってしまった。


だから今日みんなを集めて、この真実を語ることにしたんだ。本当に今まですまなかった、許されることでは無いけど、許してほしい。】









その瞬間、恭也のほほが赤くなった、秋穂に一発ビンタを喰らったからだ、その後秋穂がその場にいた全員に対し、所信表明を行った。










【これで全てチャラにしましょう、知らなかったで済まされることではありませんが、これがきっかけで恭一郎さんのグループに対する熱意と、メンバーに対する思いを理解できました。


何より今の話を聞いて、あの時の解散は大和社長が裏で暗躍していたことや、恭也さんがそれ以上にグループのことを思い続けてくれたこと、今度の2マンの真の狙いを聞いて、わたしも決意できました。恭也さんの考えに私も乗りましょう。


そしてこの2マンを通して、光咲キ誇レが大きなグループに成長していくために、私自身が次のステップに踏み出していくために、成功させて自信に繋げさせたいのです。】







その言葉を聞いてこの日の密談は終了した。










恭也たちは、そのままレンタカーで事務所に戻っていき、2マンへの準備を始めた。











一方恭一郎たちもその日は解散し、翌日改めて秋穂以外の考えを聞くことにした、しかし全員気持ちは2マンに向けて走り始めていた。心配された柊葉、美音も、恭也の話を聞いて気持ちを引き締めたようだ。










いよいよ2マンに向け、互いの事務所が走り始めた。この後に起こる出来事が待っているとも知らずに。





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