第10話 田中=田中っち=タッチ

やれやれ。

そう思いながら俺は顎に手を添えながら里見を見る。

里見は読書部で静先輩の説明を受けていた。

側にはツツジ先輩と浪川も居る。

俺はその姿を見ながら窓から外を見渡す。


そうしていると。

ねえねえ凛花、と呼んできた。

その呼び方は止めろとあれ程言っているのにな。


いや割とマジに呼ぶなってそれで。

ツツジ先輩とかがビックリしているだろ。

そのままでは誤解されるのだが。


「凛花はどんな本を読んでいるの?」


「.....あのな。里見。.....俺が好いている本より先ず名前を呼ぶなっての」


「.....えー。良いじゃない。呼んでも」


「.....嫌だ。俺が嫌だ」


「もう。固いなー」


そんな会話をしていると。

なーちゃんもそう思うよね?、と向いた。

浪川は、そ。そうだね、と曖昧な返事。

お前な.....曖昧にするな。

俺は思いつつ浪川をジト目で見る。


「さとちゃん。.....もしかして好きなの?.....その.....田中くんの事」


「.....そんな訳無いじゃん!!!!?.....ご、誤解だよ!!!!!それ無いは.....」


「.....噛んだな.....」


「噛んだね。怪しい」


そんな感じでツツジ先輩と静先輩はニヤッとする。

俺はどうせ演技だろ、と思いつつ盛大にまた溜息を吐きながら。

で。結局部活はどうすんだ、と里見に聞く。

里見は、あ。えっとね。入ろうかな、とニコッとする。

マジかコイツは.....。


「うわー!有難う。.....凄いね。タッチ。君の力!」


「先輩。変わってますから。俺の名前はタッチでは無いです」


「.....でも本当に有難うな。凛花。.....感謝する」


「俺は何もして無いっすよ。マジに」


それからこの部活に里見が入部する事になった。

俺はその事に、まあこれで守れるか、と思いつつ。

外をまた見ていると。


そう言えば部活のメンバーだし.....名前で呼び合おうか、と静先輩が.....は?

俺は驚愕しながら静先輩を見る。

何言ってんだYO!

俺は愕然とする。


「そ、それ良いですね。私は燐って呼んでほしいです」


「.....私も.....里見未玖だから未玖で」


「ほら。タッチ。君も」


「先輩。タッチって何すか。田中=タッチって事っすか」


「田=た、田中っち=っち、でタッチ」


何かのアニソンのタイトルみたいに言わないで下さい。

俺は思いながらも、分かりました、じゃあ未玖と名前を呼ぶ。

親睦を深める為ならもうヤケクソだ。

面倒臭いしな断っても。

すると.....未玖は何だか赤くなっていった。


「.....は、恥ずかしいね」


「.....そんな反応されると俺も恥ずいんだが」


「アハハ。.....でも未玖って響き良いね。やっと凛花が名前で呼んでくれた」


「.....あのな.....」


じゃあ次私です。

とニコニコ笑顔で見上げてくる浪川。

俺は顎に手を添えながら、浪川、と呼ぶ。

すると背後からぶっ叩かれた。

静先輩に、だ。


「タッチ。それはない」


「悲しんでいるぞ。タッチ」


「ちょっとツツジ先輩まで何を言っているんですか!勘弁して下さい!.....ああもう!.....じゃあ燐!」


「はい♡」


何で俺はこんな辱めを受けているのだろうか。

俺は考えながら額に手を添える。

するとドアがバァンと開いた.....ウェ!?

うわ!?


「貴様.....今度は活動記録を誤魔化したな.....」


「おー。嫁子。.....活動記録は誤魔化してはないよ?私」


「じゃあ何だこれは!小説を書いている!?本当だな!お前は嘘ばかり吐くからな!絶対の絶対に本当だな!」


「ほ、本当だって.....」


嫁子先輩はかなり怒りながら活動記録を押し付けてくる。

俺達は眉を顰める。

ちょっと待て小説ってなんだ。

俺.....達が書くのか?

そんなアホな。


「.....じゃあ活動を見せてもらうぞ」


「.....え?今から.....まあ良いけど」


「そうか。.....じゃあ見せてもらおう」


「.....パソコンにあるから。.....丁度、後輩の凛花が書いたものが」


オイ。

今とんでもない事を言わなかったか。

何で俺の書いた小説があるんだ。


書いた覚えがないぞ、と思っていると威圧してきた。

静先輩が目線で、だ。

オイ.....どういう事だ.....。

俺は思いながらも怖かったので、そうですね、と笑顔を浮かべた。


「.....ほう。君は有名な田中くんだったかな」


「.....誰が有名ですか。.....どういう有名ですか?めっちゃ気になります」


「.....有名というのはそこの5本指に入る美少女を口説き落としたとされているからな」


「.....」


俺この学校で居場所あるんだろうか。

思いながら俺は顔を思いっきり引き攣らせた。

そんな馬鹿な、と思うのだが。


困るんだが.....。

考えながら俺は溜息を吐く。

この事は未玖も困ると思うんだが.....。


「.....」


「.....嫌だよな。未玖」


「.....そ、そんな事ない.....」


「.....???」


何でこんな反応しているのだ?

俺は考えながら.....顎に手を添えるが。

駄目だな答えが浮かばない。

思いつつ.....嫁子先輩を見る。

嫁子先輩は、まあ良い、と言いながら改めて静先輩を睨む。


「.....とにかく、だ。まともな資料を書け。お前は」


「.....そ、そうだな。うん」


「.....全く。.....それでは失礼するが.....ラノベを読むなよ。今はとにかく。廃部にするぞ」


「.....まあうん」


静先輩は、面倒臭い、という感じで首を振る。

それから.....バタンとドアが閉まった。

俺はそれを見ながら静先輩を見る。


静先輩は、困ったもんだな、と苦笑いを浮かべる。

それはこっちのセリフだ。

何勝手に人の情報使っているんですか。

文才とか無いのにどうする気なのだ。


「.....とにかく。タッチに命ずる」


「.....何でしょうか」


「小説書いて♡」


「ば、無理ですって.....静先輩.....」


幾らの頼みでも無理だ。

何で俺にしたんだよ。

曖昧な感じにする為なのか?

無理だからな絶対に.....。

そもそも現文の成績.....中の下だしな.....。


「ま、まあそう言わず書いて.....タッチ」


「そうだね。確かにねタッチ」


「タッチ」


タッチタッチウルセェな!!!!!

俺はタッチじゃねぇ!!!!!

野球部員じゃねーんだから!

思いながら頭に手を添えてから.....部にあるパソコンを見てそして盛大に息を吐く。

もうマジ卍なんだが.....。


本日の残高 −3700円

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