負けヒロインと借金とオタと

第6話 借金返済弁当

この事が発生したのは2時限目の終わり。

丁度、俺と佐藤が共に当番だった為にボールの後片付けをしている時だった。

体育倉庫に入ってから奥に行った時。

俺は佐藤に呼び止められた。

いきなりの事で驚愕する。


「アンタさ。何か、さとちんを1年坊から救ったんだって?」


「.....は、はい?.....まあ確かにそうだが.....」


「.....さとちんが何か話していたから。.....目立つ事をするのは得意だったっけ?アンタ」


「.....別に得意じゃないが.....」


「.....まぐれって感じ?.....でもさとちんを救ったのは事実だからね。.....アンタ、さとちんが好きなの?」


何を勘違いしているのか知らないが違う。

俺は否定しながら首を振る。

それから盛大に溜息を吐いてから佐藤を見る。

佐藤は俺をジト目で見ながら、あっそ。じゃあ何で救ったの、と向いてくる。

その姿に俺は顎に手を添える。


「簡単に言っちまうと救わなかったから胸糞悪いからな」


「.....見て見ぬふりは出来ないって感じ?.....あっそ。.....アンタ正義深いんだね。.....キモオタの癖に」


「キモオタはキモオタだが.....まあ良いや.....」


そこまで話してから。

いきなりドアが閉まったのだ。

それから俺達は驚愕してドアを開けようとしたが。


先生が鍵でも掛けたのか開かなかった。

それで今に至る。

20分経った今に、だ。



「.....どうしたもんかね.....」


扉に手を掛けてまた座る俺。

俺は額に手を添えながら佐藤を見る。

佐藤はモジモジしていた。

見るからに、だ。

もう我慢の限界が近いのだろう。


「.....そこら辺でするか」


「馬鹿なの?アンタ。出来る訳ないでしょ!!!!!」


そんなにキレなくても良いじゃねーか。

俺はお前に興味は無いんだから。

見ても何も思わない。


俺は思いながら激昂している佐藤を見つつ。

そのまま盛大に溜息を吐いた。

そして俺は.....周りを見渡す。

何か良い手段はねーか、と思った.....のだが?


「.....お。これ.....携帯じゃねーか」


埃被った誰かの部活動のバッグ。

その中に携帯が入っていた。

所謂.....折畳式だが.....駄目か。

古いようで充電が無い。

役に立たないか.....と思ったのだが。


「.....お?充電ケーブルもあるじゃねーか」


俺は、丁度良いや、と思いながら周りを見渡す。

丁度コンセントも有るじゃねーか。

そうなったら佐藤に協力を仰ごうか。


充電が完了してから、だ。

しかし佐藤は.....かなりヤバい感じだった。

モジモジしているしな。


「.....オイ佐藤。.....手を貸してくれ」


「.....は?何でアンタなんかに.....」


「俺はボッチで自宅の電話しか知らん。学校に電話しても良いがお前の緊急性を考えると.....お前なら誰かに連絡ぐらい取れるだろこの携帯で」


「.....成程.....ってか直ぐに充電出来んの?それ。.....わ、私、ヤバいんだけど」


涙目になる佐藤。

こんな佐藤の姿なんぞ初めて見たな。

俺は何だか気分が良いが取り敢えずこの後の事と俺の予後を考えると佐藤を救わないといけないだろう。

俺は思いながら、あと5分待てるか、と向く。

すると佐藤は、ま。まあそれぐらいなら、と頷く。


「だけど早めた方が良いなら別の方法を取るが?」


「.....そう.....ってかまあ.....うん。.....早めの方が良いかも」


「.....だとするなら網戸を壊すしかねぇ」


俺は思いつつ.....マットレスを並べる。

それから.....上に有る網戸を見る。

網戸は丁度.....外に繋がっている.....ので。


取り敢えずはアレを破壊しつつ。

携帯を充電しよう。

壊れてない事を祈りたい。

これしか方法が無いしな.....。


「よし。やるか」


そして俺は網戸まで向かう。

それからマットレスに乗っかって蹴飛ばした。

まあ当然ながらそんな簡単に壊れる訳が無いが。

非常事態だってのにな。

畜生めが。


「でも壊したらアンタに責任行くじゃん。それって私相当に胸糞悪いんだけど」


「.....そう言ってられないんだろ。お前は。.....じゃあ今直ぐに壊すしかない。例え後々がヤバくてもな」


「.....」


俺は嫌だしな。

思っていると佐藤は黙って座った。

それを確認してから俺はまた勢い良く蹴飛ばす。


すると、ガンッ!、と衝撃で網戸が外れた。

俺は、!、と思いながらそのまま外に出ようとする。

取り敢えず出れそうだ。

体だけがとりま太って無い事が幸いした.....。


(ポーン)


「.....お。充電の合図だ」


「.....マジ?」


「.....マジ。多分その音だ。.....電話してみろ。取り敢えずは.....お前は動けないと思うから俺は外に急いで救助を求めてくる」


「.....ね、ねえ」


何だ、と思いながら佐藤を見る。

佐藤は俺に対して、アンタ見直したよ、と言う。

根性無しの最悪のキモオタって思ってたしね、と言いながら。

俺は佐藤を見ながら目を丸くする。

そうかい、と思いながら。


「.....取り敢えず急ぐわ」


「.....うん.....」


そして取り敢えず。

佐藤は先生達に助けてもらってトイレにも行った様だ。

俺は網戸をぶっ壊した件で怒られたが。


書類送検とかにはならなかった。

つまり.....反省文とか、だ。

非常事態だったしな。



「酷い目にあった」


「しかしどこ行ってたの?さとちゃんと」


「.....何処にも。.....体育倉庫に閉じ込められていた。それが真実」


「.....そうなんだ.....」


昼飯時の中庭。

俺はお弁当を渡された。

誰かといえばアイツである。

里見だ。

ソイツが借金の返済の目的で作ってきたのだ。


「今日は色々作ったから。.....食べて」


「蟹とか入っているんだが......豪華すぎやしないか」


「早く返したいしね。借金全部」


「.....そうか」


そんな会話をしながらお弁当を食べる。

不安だったのだが十分に美味い。

上手な味付けとか、だ。

俺は思いながら.....里見を見る。

里見は、ねえ、と聞いてきた。


「.....君は何処の部活に入っているんだっけ」


「.....え?俺は読書部だが」


「.....そこに私も見学しに行って良い?どうせ.....あの野郎は.....」


「.....」


グシャッと何かが潰れた。

ゴゴゴ、と凄まじい炎が上がる。

黒い真っ黒な炎が、だ。


俺は苦笑いでそれを見つめる。

すると里見は、実は5000円の品物は幼馴染が喜ぶかと思ったの。

とガックリと肩を落として泣き始める。

無駄な出費だった.....、と言いながら、である。


「好きだったのに.....大好きだった.....アイツの事が」


「.....」


ポロポロと大粒の涙を流す。

どうでも良い事だが。

取り敢えずは相談に乗ってやるか。


こんな姿では放って置けないしな.....クソッタレだが。

俺は思いながら.....これも貸しだぞ、と思いつつ里見に向く。

なあ里見。お前さ.....、とそこまで言い掛けると.....里見が突然立ち上がった。

あのクソ野郎!、と言いながら。

へ?


「絶対に許せない!!!!!」


「.....お、おう」


「だから見返す!絶対に!私はアオハルしてやる!!!!!」


「.....お、おう.....」


面倒臭いな.....。

心配して損した.....。

思いつつ俺は業火に煮え滾る里見を見つつ。


盛大に溜息を吐いた。

もう良いや.....面倒臭い。

そう思いつつ間も無く7月になる風を感じた.....。


本日の残高 −4100円

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