第2話 同窓会で近況を聞き合う

 うなぎ屋での一件以来、両親から結婚相談所に行く話を時々されるようになった。ちょっと気が早いよとなだめつつ、内心では鬱陶しくて仕方なかった。とは言え、自分も結婚願望は一応あるので、何か動いた方がいいのではという気持ちもあった。


 何から始めようかと思っていた矢先、高校の部活の同窓会に誘われた。数えてみると、最後に会ったのはもう10年も前だ。高校を卒業してからはほとんど誰とも会っていない。同級生も自分と同じ27歳になっていると思うと、一度姿を見たくなったと同時に、少し恐怖も感じた。ていうか結婚してる人もいるのだろうか。


 独身ならみんな結婚適齢期な訳で、多分そういう話題も多少は出るだろう。同級生が結婚についてどう考えてるのか聞いてみたくもなった。まさか酒の勢いに任せて、「実は当時好きだった」なんて告白をする奴も出るんだろうか。ていうかとどのつまり、合コンに近いなこれ。


 10年ぶりに会いに行くと言って歓迎されるかは分からないけれど、同世代の女の子と酒を飲む機会も無くなっていたので、練習だと思って同窓会へ行くことにした。男の割合が高いメーカー勤務の自分にとって、こういう機会は貴重だ。とは言え、この機会に誰かと仲良くなる期待はしないでおこう。期待しないぞ。



 同窓会は、自分の家からも近い居酒屋チェーン店でやることになった。言い出しっぺで幹事をやっているのは女の子だという。現地へは自転車で行き、集合時間の10分前くらいに着いた。店員に幹事の名前を言うと、個室の場所を案内された。


 個室に近づくと、女の子同士の会話が聞こえた。男はまだ誰も来ていないらしい。まずい、絶対に上手く話せないと感じて、とりあえずトイレに行った。集合の3分前くらいになって個室にもう一度近づくと、男が一人会話に加わっていた。助かった。この人を間に挟んで席に座ろう。やがて遅刻ぎりぎりくらいの時間に、他の男グループも来て席に着いた。来たのは全員で10人。当時の部員の半分もいない。


 とりあえずビールで乾杯した後、今日来ていない人も含めて近況を聞き合った。高校の卒業以来会っていないので、大学の時点でどこに行ったか分からない人も多い。そのうちみんな何の仕事をしてるのかという話になった。あまり話したくなさそうな男もいるのを尻目に、女の子たちは一応遠慮がちに、けれども確実にみんなの職業を聞き出していった。


 自分は高校では冴えなかったけど、この時ばかりは真面目にやってきて良かったと思った。自分がメーカーで設計っぽいことをしていると言うと、一部の女の子の目が変わったのが分かった。一方で男グループを見ると、あからさまに不満そうにしている人がいた。そんなに露骨な反応して良いのかよ。


 またそのうち、ついに結婚はどうするという話になった。今度は男の方で、来年くらいに結婚予定だという人が出た。特に予定がない人は、「前はこういう人と会ってたんだけど」とか「この年で別れると辛いよね」なんて話をして盛り上がっていた。そういう話になると、今度は自分がちょっと蚊帳の外だ。というか下戸の自分は、だんだん話すらまともに聞けなくなっている。


 しかし、普段は結婚と縁遠いので特に気にしてなかったけど、人によってはそろそろ最後の出会いとかを考えていたのが衝撃的だった。ロクに誰とも付き合ったことのない自分は結構ヤバいんだろうか。今日来てない人の中には、既に結婚したから来なかった人もいると聞いた。


 同窓会で会話は一応できたものの、そのうちラストオーダーが来てお開きになった。店の外でもしばらく話したりはしたけれど、二次会に行くかという話はまとまらず、帰りだす人もいた。自分としても10年ぶりに会って、更に二次会へ行く動機が薄かったので、今日は一旦帰ろうと思った。


 店の外で集まっているみんなから距離を置いて、別れの挨拶を言った。流石に10年ぶりだと、改めて距離を縮めるのは難しいと思った。家までの自転車を漕ぎ始めると、なんだか急に寂しくなった。でも、また誘われたらどうしよう。



<つづく>

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