No.5 ゴミ、頑張ります!
そうして、<ゴミ>と呼ばれるスキルを持つ俺のダンジョンライフが始まった。
もう1回ステータスを見てみよう。
------------------
ステータス
真柄 綾
Lv.1
体力:2
筋力:3
耐久:1
速度:5
幸運:3
スキルポイント:0
------------------
固有スキル:ゴミ
------------------
「なるほど…家にひきこもっていたせいか、ほとんどの能力値が平均を下回っているな…。」
そう。俺は速度以外の能力値が平均を下回っていた。さすがゴミだなとしかいいようがない。
スレで得た情報に照らしてみると、それぞれの平均が5と言うだけで、5以下の能力値を持つ人もそう少なくないという。
噂では社会的地位が能力値やスキルに関係してるとかしてないとか。それだったら俺のこのステータスも頷ける。
大体のスレ民は最低でも戦える程度のスキルを得ているようだった。
俺ってそこまでゴミなのかよ…w
なんか妙に笑えてきた。
そんなことは置いといて能力値の話に戻るが、調べた限りだと、大体の人が三つの能力値で5を上回っているらしい。
「はぁぁ…。どん底からのスタートだな…。」
いや、欠点ばかり見つめてはダメだ。
そ、そうだ。速度は言うほど悪くないじゃないか。
じゃないか…。
「まあそんなことはいいんだ。頑張って上がっていけばいいんだ。」
綾の瞳はまっすぐだった。それは絶望を知っているからだ。こんな程度で気持ちが揺るぐ器じゃない。
「とりあえず<ゴミ>の詳細見とくか。」
------------------
固有スキル:ゴミ
自分がゴミであると自負できる。
魔力消費:なし
ゴミが扱えるスキルはだいたい使える。
<使用可能スキル> なし
------------------
「まあ、そんなもんだよな…。にしてもなんだよ。自負できるって。」
まあ色々とツッコミたくなるところがあるが、予想はしていたから、あまりショックは受けていない。
「………帰るか。」
綾はダンジョンに寂しげな背を向け、家に帰った。
「おかえり!綾、大丈夫だった?」
「あ、ああ。母さん。特になんもなかったよ。」
「そう。良かったわ。」
相変わらず優しい母だ。
俺はこの時迷っていた。今日起きたことを両親に話そうかどうか。言えば両親は酷く悲しむだろうが、俺に道筋も立ててくれるだろう。
考えてみると両親に相談なんかしたことがなかった。俺は大抵の事は抱え込む体質だ。
俺が1人で立ち止まっていると母さんが心配の目を向けてきた。
「どうかしたの?綾。」
「あ…いや。」
そうじゃない。言うんだ。親を頼るんだ。
親にとってもそれが本望だろう。
「母さん…相談があるんだ…。」
俺がそう言うと、優しい目で
「うん。言ってごらん。」
と言ってくれた。
そうして俺は今日のことを話した。そんなつもりは毛頭なかったが、俺は泣きじゃくりながら母に話した。
「そう…だったのね。辛かったね。でも安心なさい。例え誰が綾をゴミと蔑もうと、お母さんとお父さんだけはあなたの味方よ。いくらでも頼りなさい。そのための親だもの。」
「母さん…」
涙が止まらなかった。
「それにしても…!綾をゴミだなんて!ちょっと許せないわ!ねぇお父さん!」
「ん…?綾がゴミ?なんだそりゃあぁぁぁぁぁあぁぁ!」
俺のために怒ってくれている。
そんな両親を俺は誇りに思う。そして心から尊敬する。
「うぁぁあぁあぁぁあ!俺の息子になんたる愚行!」
「まあまあ!この問題は俺が自分で解決する。ありがとう。父さん、母さん。」
「「あやぁ!」」
この後3人で抱きしめあったことは、内緒でお願いする。
引きこもりとはいえ俺は高校三年生だ。一応。…多分。…恐らく。
誰にも、言うなよ…?
彼がスキル<ゴミ>の本当の真価に気づくのはちょっと先のおはなし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます