第12話
「少しぼーっとすると思うけど、僕の知ってる限りのことを話すね。」
とコノハはグレーと三人について話し始めた。
グレーは三年前期の初めに寮の中庭にいた子犬で三人が雨の日に見つけて世話をしていた。
その頃は学園の結界も緩めで野生動物の出入りもあったので、そのうちの一匹だったのだろう。
毛の色が灰色だったのでそのままグレーと名付けた。
たった一か月で大きく成長したので『魔法動物なのではないか』、『危険そうだから生徒と引き離した方がいいのでは?』
という意見も出ていたが、「生徒には沢山のことに触れて成長してもらいたい。」という学園長が責任を持つという形でそのまま飼うことを許可された。
寮生みんなに懐いていたが、世話をしていたユウ達、その中でも相性が良かったのかナミには特に懐いていた。
でも、ある日中庭で無残に殺されていた。最初に見つけたのはナミでその後合流したユウとカガが見つけた。
明らかに殺された様子だったが犯人は分からずじまい。
三人とも落ち込み、授業に身が入っていなかったが先生方も気を使って注意せず見守ることになった。
ところが二、三週間が経ったころ三人いつも通りになっていた。
まるで、グレーのことがなかったかのように。
先生方はみんな不思議に思ったが、グレーのことを聞いてまた落ち込ませるのも可哀想だとそのまま様子を見ることにした。
「この時、気が付ければ良かったんだけど、君達にこの話を振るのはタブーになってたんだ。」
一通り話が終わると二時間後に起こすからゆっくり寝て。
と、コノハは部屋を暗くして出て行った。
お茶の効果だろう、瞼を閉じるとすぐに眠りについた。
ユウは寝ている間に夢を見た。暗い空間でどこかわからない。暖かい毛並みが足元にすり寄ってくる。
姿は見えないが懐かしいようなそんな気がした。
ユウは自分を呼ぶ声で目が覚める。
コノハがみんなを起こしに来たようだ。
「気分はどう?」
「大丈夫です。なんか夢を見てました。」
「よかった。机にミヤハさんからもらったお弁当あるから食べて。」
ベッドから出るとあたりはもう暗くなっていた。
「おはよー。」
カガは既に弁当を食べ始めていた。
コノハは「はいどうぞ。」とお茶を入れてくれた。
「あれ、ナミさんは?」
「ナミちゃん、よくない夢見たみたいでシャワー浴びに行ってるよ。」
「ユウはなんか夢みた?」
「足元にこうなんかすり寄ってきてる感じの夢。カガさんは?」
「ぼくは寮の中庭で三人でお昼寝してた夢だったよ。頭に柔らかい感じがあって、黒っぽいしっぽがパタパタしてるのが見えたの。起きてからも色々思い出してきたからふたりも思い出すんじゃないかなぁ。」
カガが思い出したことを聞いていると、なんだかそういうことがあったような気がしてくる。
しばらく話しているとナミがシャワー室から戻ってきた。
「おはよう。ふたりとも」
ナミの顔色はあまりよくなかった。
「ナミさん大丈夫?」
「うん、まぁ。」とベッドに腰かける。
「食欲なかったらこれでも食べて。」
コノハはナミにお茶といくつか飴玉を渡した。
「あー!僕も欲しい!」
「はいはい。ふたりで分けてね。」
と笑いながら机の上に飴玉を置いて植物園に戻っていった。
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