第7話

「おまたせー。」

ナミが大きめの紙袋をもって戻ってきた。

「ミヤハさんにサンドイッチ貰ったよ。」

「たべるー!!」

カガは勢いよく起きるとナミに駆け寄って紙袋を取ろうと手を伸ばす。

「まぁまぁ。」とナミはカガを制す。

「寮にはもう行った?」

「まだ行っていないよ。」

「じゃぁ、寮の中庭でお昼を食べよう。」


ユウは魔法学校の臨時講師だが寮には用事がない為、ここに来るのは久々だ。

寮の中庭は寮と校舎をつなぐ廊下の側面に面していて、廊下の長いすに座ると中庭全体が見渡せる構造になっている。

廊下から中庭へもそのまま出れるので、外にテーブルを並べてみんなで食事をしたりクリスマスやハロウィンのパーティーもしていた。

庭の奥側には木が十本ほど楓の木が植えられていて、その奥は『夜の森』へと続いている。

夜の森へ行ってはいけないと規則があるのだが、毎年肝試しに行く生徒がいて度々問題になっている。


三人は廊下の長いすに座ってサンドイッチをほおばる。トマトの甘酸っぱさとベーコンの塩っ気が口いっぱいに広がった。

あっという間に一つ目を食べ終わり、二つ目のたまごサンドに手を伸ばす。

聞き込みに夢中でお昼を食べていないことを忘れていた。

たまごサンドはふわふわに焼いてあり卵は少し甘くしてあり、これはこれでとてもおいしい。

「ナミのたまごサンド貰っていい?」

「んー。」

ナミがリストに夢中になっているのをいいことに、カガはしれっと三つ目のサンドイッチにかぶりついている。

夢中になると食事が二の次になるのはナミの悪い癖だ。

「ねえ、この腕に怪我してない子達もみんな右手なの?」

「そうなんだよね。聞き込みの時も気になってたんだよね。」

逆に言うと共通点はそこしかないように思えた。


「夕方って調理室借りれる?」

「必要なら許可取るけど、何するの?」

「ユウにクッキーでも作ってもらおうかなって。」

「いいけど、なんでクッキー?」

「夜食よ、夜食。」

とナミはサンドイッチの残りを口に放り投げた。

影が出るのは夜なので、見回りをするとなると夜食は確かに欲しいところだ。

メモを取り出して調理科の担当に許可を取る文言を書いて手にはさむ。

蝶になるのイメージすると手の中でメモがぞもぞと動く感覚がある。

パッと手を離すと蝶の形になったメモがふらふらと飛んで行った。

魔法を使うのは苦手だがなかなかの出来だ。

クッキーの材料を持ってこなければいけないかと思ったが、ナミのことだ材料も準備済みだろう。


「寮周辺をもう少し調べてみるかー。」

とナミは伸びをする。

「もう歩くの疲れたー。」

「ここにいるなら寝ててもいいけど。ユウにはついてきてもらわないと。」

「了解。カガさん絶対ここにいてよ、うろうろすると私が怒られるんだから。」

「はいはい。わかったよー。」

カガは手をひらひらと振って、長いすに横になった。

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