第4話

ユウは片付けを終わらせ、お酒を飲んでつぶれた2人に毛布をかけてナミ達のもとに戻った。

食事会の後はいつも雑魚寝して次の日の朝帰っている。

ソファーに寄りかかって寝ているナミにもそっと毛布を掛けた。

「あら、ナミがもう寝てるなんて珍しい。」

ワインを片手にリリナがキッチンから戻ってきて、少し不満そうに小声でつぶやいた。

「まだ話途中だったのに。」

「しょうがないよ。1ヶ月の予定が2ヶ月になったわけだし。」

「どうせいつもみたいに馬鹿な真似してんんでしょ?先月の食事会も来なかったし」

リリナは少し怒った様子でワインをあおった。

「ナミさんついでの依頼よく受けるからね。ほっとけないんじゃないかな。」

「まったく。お人よしなんだから。」

リリナは大分酔いが回ているようで、頬は赤くなってる。


見ると先ほど開けたワインはもう半分ほど空になっていた。

「ねー、リリナさん。血っておいしいの?」

ふと、前から疑問に思っていることを聞いてみた。

血液パックから飲んでいるのを見たことはあったが、直接人に噛みつくのも見たことはないし、街でそういった話が出たこともこれまでなかった。

「んー。美味しいけど、あなたたちが飲むお酒みたいな感じよ。飲まなきゃ死ぬようなものじゃないわよ、私はね。」

『私はね』の言葉が気になりユウは首をかしげる。


「本当は吸血鬼にとって血は生きてくのに必要なものなの。でも、私は血を飲めない期間が長すぎたのよ。

それで運よく体が適応したのよ。

私の種族には昔から家系の第一子はキバを抜くっていう風習があるのよ。キバがあると吸血欲が強すぎて人との均衡を崩していしまう可能性があるからってね。ほら。」

とリリナは唇を少しめくって見せた。他の吸血鬼の歯を見たことはないが、キバがないのは明らかだった。

「だから親は子供を何人か産んで第一子には兄弟が血を分け与えるの。でも私には兄弟が出来る前に種族は崩壊した。理由は何だったかよく覚えてないけど、炎が街全体を覆ってたのは覚えている。そこから何とか逃げ出して気づいたらここに来ていたのよ。」

『吸血鬼は危険だから消滅させるべき。』という考え方の過激派のせいだろう。

ユウは何も言えずに黙っていた。リリナの過去を想像するとなんと言葉をかけていいのかよく分からなかった。


リリナはそんな様子を見てか「しゃべりすぎたわね」とソファーから立ち上がった。

「あなたも早く寝なさい。子供は寝る時間よ。」

「リリナさんは?」

「あら、私は夜行性よ?仕事は夜の方がはかどるわ。」

と奥の部屋に消えていった。

ユウは暖炉に木を足してから毛布をかぶって眠りについた。

そうして今年のクリスマスもゆっくり過ぎていった。


後日リリナの話をナミに聞くと「その話信じたの?リリナは小説家だよ?」と笑っていた。

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