学園からの依頼
第5話
「あら、ユウちゃん。今日も暑いわね。」
「ミヤハさん。こんにちは、すっかり夏になりましたね。」
ミヤハは魔法学園の寮母さんで、今日は花壇の手入れをしていた。
木々は緑色の葉をつけ色も深くなってきた。カラッと暑い夏がヴェルアの特徴で風は弱いが止むことはない。
「今日の授業は終わったの?」
「はい、今日も無事終わりましたー。」
「少し前まで生徒だったのに、もうすっかり先生ね。」
「そんなことないですよー。」
寮生にとって母親代わりであるミヤハはいつもニコニコしていて話しやすい。
少し世間話をしていると、ナミとカガがやってきた。
「こんにちは。」
「こんちはー。お久しぶりです!」
「あらあら、ナミちゃんカガちゃん久しぶりねぇ!元気にしてた?」
ナミとカガが学園に来るのは卒業以来なのでもう五年経つ。
「ふたりの話はユウちゃんからたまに聞くわよ。ナミちゃんはお役所でも評判いいみたいね。」
「はい、おかげさまで。」
めずらしくナミは少し照れているようだった。
「ふたりとも今回の件は頼んだわよ。寮生みんな怖がってて。」
ユウを含めて三人はキョトンとしていた。ユウはウルシイからふたりに依頼をしたいから呼んでほしいと言われていただけだった。
「マージ先生から推薦されたんじゃないのかい?」
ミヤハは首をかしげる。
「あーいたいた。久しぶり。」
ウルシイが学校の入り口で手を振りながら声をかけてきた。
「お久しぶりです。」「せんせー。おひさー!」
「なんだミヤハさんと話してたのか。中々来ないから心配したよ。」
ウルシイはユウたちの学生時代、三年生の時の担任の先生だった。
綺麗な金髪で顔立ちもよく、優しい雰囲気で特に女子生徒から人気がある。
ウルシイに案内されて応接間で詳しい話を聞くことになった。
「もう五年ぶりくらい?元気していた?」
「元気してるよー。」
「ぼちぼちですかね。」
たわいのない世間話を四人で少しした後「本題に入っていいいかな?」
とウルシイは声を落とした。
事の始まりは約一カ月前
夜寝つけなかった生徒が寮をうろうろしていた。
中庭に差し掛かった時に後ろから荒い息遣いが聞こえた。
驚いて振り返ると黒い影が右腕に噛みついてきた。
黒い影はすぐに消えてしまったが右腕には噛まれた跡が残った。
それ以降今日までに生徒がふたり、同じように黒い影に噛みつかれて怪我をしている。
他に怪我をした生徒はいないが裾を噛まれたとか、狼の影を見たとか色々な話が出ている。
単なる噂なのか、実際なのか分からないような話もある。
これ以上被害が出ないように魔獣関係ならナミに、狼などの魔動物系なら人狼族のカガに対応してもらいたいとのことだった
「そういうことなんだけど、お願いできなかな?」
ウルシイは顔の前で『お願い』と手を合わせる。
「ぼくはいいよー。」
「私もいいですよ。そういえばマージ先生は不在ですか?」
マージは魔獣神獣学を担当している先生で、卒業後はユウ達と時々飲みに行く仲だ。
「あー。それが二カ月位前に神獣が出る時期だからって出かけたきり帰ってきてなくて。
連絡したんだけど、ナミちゃんとカガちゃんに連絡とってみたらって言われてさ、困ったもんだよ。」
とウルシイは苦笑いした。
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